映画評「クーダ 殺し屋の流儀」

☆☆(4点/10点満点中)
2022年アメリカ映画 監督リチャード・ヒューズ
ネタバレあり

来るオリンピック期間に殆ど映画が観られないことを前提に最近短い作品なら何でも手を出して本数を稼いでいる。鑑賞本数を増やす気はないものの、観ないことには記事が書けない。毎日記事を書くのがブログ開始以来のモットーだ。
 “何でも” と言うのは嘘だが、洋画ならスター俳優が出ていれば見てしまう。僕の基準では日本劇場未公開作品に当たる本作も、アントニオ・バンデラス主演で90分という短尺と知って観ることにした。

裏社会で汚い仕事をしてきて殺しにも手を染める何でも屋?バンデラスが、若いストリート・ファイターのモジーン・エイリアを相棒にかつての有名ボクサーを片付ける。汚い仕事の元締めのようなことをしている風俗店経営の美人ケイト・ボスワースの指令によるものである。
 服役した為に離婚した妻との間にできた15歳の娘に会いに行っても疎まれるバンデラスは、娘と同じ年頃と見た黒人のフーテン娘ゾリー・グリッグズが万引きを咎められている窮地を救い、モーテルに居場所を見つけてやる。
 ところが、このモーテルの経営者が違法風俗業と通じていた為に少女を誘拐する。この地下風俗にはエイリア君が昵懇になった美人アレクシス・レンも無縁ではない。バンデラスは地下風俗店(店という感じではないですな)に乗り込み、捕えられていた少女たちを解放する。エイリアもアレクシスも恨みのある関係者を倒していく。
 重傷を負ったバンデラスは誕生祝いに愛車を娘の通う学校に残して、海辺のヤシの木に凭れる。

悪に手を染めて来ても親子の人情を捨てるほど悪人にはなり切れない初老男の行動をセンチメンタルに綴っていて、それなりにグッと来る。訳あり男とまともな娘(daughter)をめぐるお話の構図が余りにありふれているので、この手の作品を無数に観て来た僕は厳しく見ざるを得ないが、映画経験の少ない人なら趣味さえ合えば悪くない印象を覚えるのではないか。

元妻が勤めている(?)美術館でバンデラスが一枚の絵に注目する辺りのカット割りと感覚が面白い。監督はリチャード・ヒューズなる全く無名の士。しかし、良い本さえ与えれば良い作品を作る素質があると見る。

五輪の商業主義はよく批判されるが、プロのスター選手が出るという意味では歓迎している。しかるに、サッカーと違って伝統的にシーズンを大事にするMLBが1軍のトップ・スターを出さない為IOCが渋って野球を五輪から外した。WBCにはトップ選手が出るようになったが、野球を世界的競技にしようと意気込む割にはシーズン第一主義を一向に改めない。28年のロス五輪には一時的に復活するが、東アジアと中北米以外の開催では施設に問題がある為実施されないことになるだろう。

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