映画評「Mr. & Mrs. ウォンテッド」

☆☆(4点/10点満点中)
2023年イギリス映画 監督サヴァス・D・マイケル
ネタバレあり

日本劇場未公開作品。

1970年代の終り頃に二枚目として頭角を出しかけて結局作品に恵まれないうちに妹のジュリア・ロバーツに置いてきぼりをくらったエリック・ロバーツを懐かしむ為に観た。
 というのは殆ど嘘で、五輪対策の為に観たというのが本当。しかし、彼の名前を見なければ109分という長さがネックになって観なかっただろう。

その彼はマフィアとも繋がりのある大富豪の老人で、出来の悪い息子パリス(ローナン・サマーズ)より愛する孫が旅先の英国で殺されたと知り、マフィアの親分に命じて殺し屋を派遣するが、ずっこけで逆に殺されてしまう。親分は面子の為にあらゆるタイプの殺し屋を派遣する。
 片や、勢い余って米国青年を殺してしまったルーク(ダニエル・カルタジオーレ)とローレン(ロイス・ブラビン=プラット)のラヴデイ夫婦は、正当防衛が認められて釈放された後、かくして殺し屋たちに追われることになる。

原題は Hitmen だから殺し屋を主軸に考え、 邦題(を考えた人)は逃げる夫婦を主軸と考える。実際、何処に軸を置いて作劇したか解りにくい内容で、恐らくガイ・リッチー風の作劇を目指したが、脚本も兼ねる監督サヴァス・D・マイケルが考えるほど上手く行かなかったのだと思う。

出だしは悪くなかったが、愛し合う殺し屋夫婦に視点を変えたあたりからクエスチョン・マークが点灯し始めて調子が落ち、やや弛緩した状態で、殺し屋の出入りを眺めておりました。

それでも楽しんだ人はいるようで、英国のナショナル・フィルム・アワードでベスト脚本賞と作品賞にノミネートされたらしい。

夫婦の名前がLoveday(愛の日)であることを考えると、実は夫婦愛を描いてい、夫に男らしさが足りないと感じて離婚を考える妻と、為にうじうじしてしまった夫とが、その談判中に割り込んだのが愉快ならず、若者を殺してしまうという悲劇を、ブラック・コメディーとして作り上げ、最後には復讐の空しさを説くのである。

サヴァス・D・マイケルという人が作ったブラック・コメディー。で思い出すブラック・サバス。ヘヴィー・メタル生みの親の一つだろうが、僕はまだ彼らの音楽がピンと来ない。いまのところ一番最初のローリング・ストーン誌レコードガイドの評価に近い感じ(最新版の評は高い)。最近結構良いと思っているのは、1980年代に人気のあったオルタナティヴ系のエコー&ザ・バニーメンとピクシーズ。なかなか面白い。

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