映画評「ゴジラ-1.0」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2023年日本映画 監督・山崎貴
ネタバレあり

やたらに作られているように感じられるゴジラだが、「シン・ゴジラ」から7年経っての製作だから僕が感じているほど頻繁ではない。尤も、アメリカ製を含めると2年に1度くらい出て来ているので、一時のマーヴェル・コミックスのように多すぎるという印象は否めない。

題名はどう読むのか解らなかったが、 ハイフンのようなものはマイナスで、 “マイナス・ワン”と読むらしい。

1945年太平洋戦争末期、小笠原諸島大戸島の臨時飛行場に、故障と称して特攻兵・神木隆之介が着陸する。が、整備のトップ青木崇高は故障を発見することが出来ず、その逃避行動に気付く。そこへ大戸島伝説のゴジラが登場するが、神木君が乗ってきたゼロ戦での掃討を恐怖の為に果たせず、彼と青木以外の整備兵は死んでしまう。
 終戦後、焼け野原になった東京の実家へ戻った彼は両親が死んだことを知らされた後、闇市で自分の子でない乳児を連れた妙齢美人・浜辺美波と知り合い、成行きで彼の家で疑似家族の関係となる。
 彼は、海中に残された機雷除去の仕事に就くうち、1947年アメリカの核実験でさらに巨大化したゴジラが東京に出現、甚大な損害を与えて去っていく。そして、仕事仲間でもある科学者・吉岡秀隆、船長・佐々木蔵之介と船員・山田裕貴と共にゴジラを迎え撃つために駆り出されるがまるで歯が立たないことを知らされるのみ。
 やがて、ソ連との関係の為に米軍に頼れない日本は民間チームを設立、吉岡が発案した水圧増減作戦でゴジラを仕留めることになり、いざという時の為に神木は今度こそ特攻精神を発揮すべく壊れていた戦闘機震電に乗り込む。

特攻から逃げ、整備兵を失う原因となった過失に負い目を感じる主人公が、ゴジラによって内妻もどきの美波ちゃんを失うことで奮い立ち、捲土重来を期す、というのが主題。主人公の再生もしくは成長物語として一通り楽しめる。

大型化し、よりいかつい風貌になったゴジラは、1954年の第1作同様に愚かな人々に対して怒れる神という捉え方をしても良いのだろうが、戦争そのものの権化であるように感じられ、それに対し弱い人々が一致協力して立ち向かっていく、というところに反戦映画としての立場を見出すことが出来る。

台詞で体制批判の図式を露骨に示しているところは含みがなく気に入らないが、日本国が軍隊を持たず、ソ連を意識してアメリカも協力できないという当時の国際関係情勢に則る、国に頼らずに民間ベースで国土を防衛するという設定はなかなか興味深い。国土を守ると言っても、この映画で主人公たちが守ろうとしたのは観念的な国ではなく、それぞれ自分の愛する人々であろう。

本場アカデミー賞視覚効果賞を受賞した画面については大満足。「ALWAYS 三丁目の夕日」以来、山崎貴監督の作品のVFXには同時代的に常に満足している。

明治天皇の血をひくとされる御仁が作った歴史教科書が認可されたと一部マスメディアが沙汰している。学徒動員を志願としたり(これは当初の文系の動員比率と理系のそれを見比べればインチキな論説であることが明白)、 特攻を “散華” と美化しているらしい。非常に怖いものがある。当時そういう言葉が使われたというのなら良いが、現在客観的表現として使うのは誠に良くない。民主主義国家では、国民の前提が国家などではなく、国家の前提が民衆なのだよ。この人、一時もてはやされてクイズ番組などにも出ていたが、その差別主義が裁判で確定してからはさすがに一般のTV番組で見ることはなくなった。

この記事へのコメント

2024年05月18日 18:26
>主人公の再生もしくは成長物語

そうです、うまくいっていると思いました、元整備兵も共闘しましたし

>民間ベースで国土を防衛するという設定

そう、これがね。うるさ型なら批評の対象にするかなって。
ドラマでは主人公たちが家族をはじめとにかく日本を守ろうとしてるので、むしろ感動を呼びますが、映画の舞台になってる時代と現代はつながっているので、日本の安全保障のあり方を再考することにつながっていく気配はありました。
アメリカにはもう頼れない、みたいな。
オカピー
2024年05月18日 21:42
nesskoさん、こんにちは。

>うるさ型なら批評の対象にするかなって。
>日本の安全保障のあり方を再考することにつながっていく気配

保守を自認していそうな方々がアメリカ天皇主義になっているのが気に入らない。
ある人が、トランプが大統領になった方が、日米安保を始め日本を変えることに繋がるかもしれない、と仰っていたのを、非常に興味深く聞きました。
僕はトランプが大統領が再選されるのを、日本の問題を含めて懸念していましたが、もしそういう結果が出るとしたら悪い事ばかりではないわけか、とビックリしましたよ。