映画評「イコライザー THE FINAL」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2023年アメリカ=イタリア合作映画 監督アントワーヌ・フークア
ネタバレあり

邦題は最終作を匂わせるが、原題は違う。最終作という告知でもあったのだろうか?
 デンゼル・ワシントンが凄腕の元CIAエージェントを演ずるサスペンス系アクションの最新作である。

第1作はロシアン・マフィアが敵であったが、今回は本当のマフィア(本場ですな)である。

凄腕ワシントンがブドウ園を拠点にしていた一味を皆殺しにする。大人がいなくなって油断をして少年に撃たれて重傷を負った彼はある海浜地帯の町の医者に治療してもらう。彼を発見した官憲エウジェニア・マストランドレアも医者も彼が銃撃されたことを無視してくれる。
 引退を決意している彼は居心地の良さを感じてここを終の棲家としても良いと思い始める一方、町の開発に勤しむ例のマフィア即ちカモッラが賛同してくれない町民たちを排除しようとやりたい放題。
 それに気づいたマストランドレアは一味に屡々脅迫され、その現場に居合わせたワシントンは遂に親分アンドレア・スカルドゥッツィオの弟とその配下を例によって瞬殺してしまう。
 親分はこれに怒って町民を脅してワシントンを出そうとするが、脅迫するまでもなく彼は登場。町を挙げての総反発に彼らはすごすごと退くしかない。程なくワシントンは親分の家を襲撃する。

その結果は推して知るべしだが、これにCIAの女性エージェント、ダコタ・ファニングを絡めて、大金と薬(麻薬ではない)をめぐる犯罪をめぐって活動するカモッラの実態を焙り出す。
 ドライバーの仕事をしていた主人公は客の年金喪失を探るうちに彼らに行き着いてその奪還のためにブドウ園に赴いたと判明するわけで、話として結構が整っていてなかなか痛快だ。

3作の中で一番印象深いのは第1作だが、お話に不満が少ないのは本作である。今思うに、「96時間」シリーズで新境地を開拓した初老リーアム・ニースンを意識して、世代的に近いワシントンをその手の役柄に駆り出したのではないか。ニースンの場合余りに似たような役ばかり宛がわれて気の毒という気がするが、ワシントンは多様な役を得ているようである。

それはともかく、僕はこれほど強い主人公を見たことがない。本作では油断して子供に怪我を負わされるが、悪党に対峙してこれほど怪我を負わない人間を見たことがない。
 従って、観客は主人公が行動するのを見る時サスペンスではなく、ひたすら爽快さを求めるため、それをどう見せるかが作者側の腕の見せ所となる。シリーズをずっと撮ってきたアントワーヌ・フークアはカメラも進行ぶりも堅実で、その目的をうまく果たしていると思う。

上記の多様な役について。ワシントンが新作でマクベス(オセロではありませんぞ)を演じているという。ワシントンが有名で原作がつとに知られているから害(例えばマクベスは黒人だったという誤解)は少ないと思うが、この手は演劇で許されるからと言って映画では許されないというのが僕の立場だ。どんな荒唐無稽のファンタジーにあっても、舞台の観衆と違って、不特定多数の映画的大衆はそこに現実しか見ないからである。ワシントンは食い詰めている俳優ではないのだから、一種の冒険的起用もしくは野心なのだろうが。

この記事へのコメント

2024年06月08日 07:36
安心して楽しめる必殺仕置き人みたいな映画でしたね。
デンゼル・ワシントンはいいですよ!
イタリアのマフィア(カモッラ)に、シリアの薬物密売がつながっているんですね。このあたり時事を絡めていておはなしづくりもうまいなと思いました。
オカピー
2024年06月08日 21:06
nesskoさん、こんにちは。

>必殺仕置き人みたいな映画

それに尽きますね。
余り説教臭くないのも良い。