映画評「ピクニック」(1936年)

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1936年フランス映画 監督ジャン・ルノワール
ネタバレあり

ジャン・ルノワールの中編。観たつもりでいたが、どうも観ていなかったようである。

ルノワールの映画を観ると何故か勘の良さ発揮することが多いのだが、本作はモーパッサンの世界であると思って観ていたら、原作はご本人であった。
 他方、勘は働いてもルノワールの作品には、その良さを直観的に理解することができないものが多い。これには忸怩たるものがある。本作などはどちらかと言えば解りやすいほうで、同時に凄味も感じる。

1860年。金物商夫妻、その老母、娘アンリエット(シルヴィア・バタイユ)と婚約者アナトールの5人がピクニックに川べりにやって来る。
 彼女と母親がブランコをしているのをカフェの窓越しに見ていたロドルフとアンリ(ジョルジュ・ダルヌー)の兄弟が、男たちが近くにいるにもかかわらず、たらしこむことを考え出す。紳士の様子を見せ、親父や婚約者を釣りで遠ざけると、早速ボートに連れ込む。
 ロドルフの案に反してアンリエッタと一緒になったのはアンリで、彼はボートの上で積極的な行為に出る間もなく上陸することになると、もっと都合が良いかもしれない森の中で接近する。しかし、この頃になるとアンリの気持ちも半ば真剣なものになり、最初は抵抗したアンリエットも相手の魅力に抗しきれずに接吻をする。涙が一滴。それに呼応するように俄かに天候が荒れ模様になり、それ以上の進展はないまま、彼らのピクニックは終わる。
 パリに帰った後アンリエットは少し魯鈍気味のアナトールと結婚し、3年後に思い出の場所にやって来てアンリと再会するが、一言言葉を交わしただけで別れていく。

二人のどちらにとって切ない体験であったろうか。再会によって完全に失恋を得心したアンリだろうか? しかし、好短編「首飾り」における、見栄(みえ)の為に意味なく青春を棒にふったヒロインの切なさを考えると、モーパッサンの立場では、一見幸福を得たアンリエットの方が切ないような気がしてくる。

本作がルノワールにしてはピンと来るのは、かかる叙情が直接的に伝わって来るからだが、前半ののんびりしたピクニック風景のスケッチにルノワールらしい美を見出すのが本当なのであろう。純粋に圧倒的なのは、兄弟がブランコをこぐ母娘を窓越しに見る場面の、窓枠を生かした構図である。

本作を見ると、モーパッサンが日本人に受けた理由が解るような気がするデス。過去形にしなくてはならない現状が残念ですがね。

この記事へのコメント

モカ
2024年05月30日 13:57
こんにちは。

私の場合、この映画は観たか否かだけではなくて観たら観たで色々と混乱を招くのですよ。
まずはこの母娘はやたらと草の上でご飯を食べたがる。「草の上でお昼にしましょう」って「草上の昼食」という監督晩年の映画と紛らわしいです。
(これは私がルノワールにあまり関心がないからなんですが)

それでもって「草上の昼食」といえば例のマネの有名な絵が思い浮かびまして、それをば印象派の画家達が次々と真似っこに及んだまでは無学なモカも知るところですが、「えっ? ルノワールは描いてないよね? 描いた? 分からん。」となってwikiでにわか勉強したりして、もう一回山田五郎の大人の教養講座を見直さんなあかんわ〜と色々ややこしい事になってしまうのです。
ホンでまぁ、ルノワールは描いてないみたいですが、息子はどうも「うちの親父が描いてたらもっと傑作を物にしたかも」とか残念がって「よっしゃ、俺が映画にしたろ」と一念発起したとか? 色々妄想が…

そうそうブランコといえば父ルノワールにブランコに乗る娘の絵がありましたね。
息子としてはブランコのシーンは重要だから力入ってますか?
山田五郎先生によるとロココの頃からフランス貴族の間でブランコが流行り出して、絵にもなってますけど、秘めたる色事のニュアンスがあるらしいですぞ。(^^)
オカピー
2024年05月30日 21:59
モカさん、こんにちは。

>「草上の昼食」という監督晩年の映画と紛らわしいです。

僕もかの作品を思い出しましたね。
その昔まだワープロで映画評を書いていた時代、題名を「草上の草食」として印刷後に気付いたものの後の祭りとなったことを思い出します^^

>息子はどうも「うちの親父が描いてたらもっと傑作を物にしたかも」
>とか残念がって「よっしゃ、俺が映画にしたろ」と一念発起したとか?
>色々妄想が…

ありそうな気がしますぞ^^

>息子としてはブランコのシーンは重要だから力入ってますか?

入っていましたねえ。

>ロココの頃からフランス貴族の間でブランコが流行り出して、絵にもなって

ロココと言えば、フラゴナールのが有名ですね。ジャポニカ百科事典の美術図鑑で見て憶えました。

>秘めたる色事のニュアンスがあるらしいですぞ。(^^)

そうでございますか^^