映画評「母の聖戦」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2021年ルーマニア=メキシコ=ベルギー合作映画 監督テオドラ・ミハイ
ネタバレあり
メキシコが舞台であるが、ルーマニア出身でベルギーに移民した女性監督テオドラ・ミハイが作劇・監督を担当しているので、ベルギーを中心にしたメキシコ・ルーマニアとの合作映画という扱いにする。
ハイティーンの娘ラウラを送り出した母親シエロ(アルセリア・ラミレス)は、やがて街中で車を止められ、止めた車から出てきた若者=後でプーマという名前と判明=(ダニエル・ガルシア)から身代金を払えと要求される。そこで別居中の夫グスタボ(アルバロ・ゲレーロ)から7割程度の金額を工面して貰うが、結局娘を返して貰えない。
再度プーマは要求しに現れ、再び渡しても何の音沙汰もない。警察が全く頼りにならないので、知人たる棺屋?の大立者ドン・キケ(エリヒオ・メレンデス)の建物から棺を担ぎ出して出発した車を追うなどして一味と思われる構成員の情報を収集、これを軍警察に渡してお互いの利益の為に秘密裏にその基地などを襲い始めるが、結局娘は発見されない。
娘の生存を半ば諦めた彼女はプーマの牧場の近い場所を掘り、そこが事実上の墓場となっていることを突き止め、警察に来てもらう。
かくして捕えられたプーマを刑務所に訪れても何らの情報も反省の言葉も得られない彼女に、やがて、発見された肋骨一本のDNAが娘と一致したという情報がもたらされる。
昨日観た「トリとロキタ」のダルデンヌ兄弟が製作に絡んでいる。ハンディカメラを基本とし(終盤は固定が多かったという印象があるが、錯覚?)、お話の展開のうちに前提となる情報を出して来るようなストーリーテリングぶりなど、兄弟に似ているところがある。たまたまだが、犯罪組織に子供や若者が巻き込まれる社会的図式に切り込んでいる内容も近い。
メキシコは麻薬組織の暗躍で悪名高いが、どうも誘拐ビジネスが成り立っている現実を反映しているようだ。アメリカも年に五桁にも及ぶ行方不明事件があると記憶しているが、どちらかと言えば営利誘拐は少ないであろう。
ヒロインの行動力は韓国映画の女性のような感じだが、韓国大衆映画の登場人物ほど感情的ではなく日本映画のように感情を内に秘めたところがある。娘を交通事故で失った父親が原因を作った店員を追い詰めていく邦画「空白」の男性主人公よりずっと我慢強い感じさえする。
映画の作り方がダルデンヌ兄弟風のセミ・ドキュメンタリー・タッチで、字余り字足らずと感じられるところがないでもないが、母親の行動を軸に展開して見える展開ぶりはなかなか力強い。アルセリア・ラミレスという女優も大力演と言うべし。
幕切れの人影は何なのだろう? DNA一致という情報が間違いで、あるいは娘が生きて戻ったのかもしれない、という解釈を許す一方、余りに観客の想像に任せすぎている。
昨年、埼玉県の一部自民党議員がアメリカよろしく子供の送迎などを義務付けるべく児童虐待条例を改正しようとしたところ、現実離れしていると県民から大反発を喰らって廃案に追い込まれた。誘拐など殆ど起きない日本で、行方不明者が年に五桁も行くアメリカと同じ法律を作るのは余りにばかげている。そういうのを頭でっかちと言う。
2021年ルーマニア=メキシコ=ベルギー合作映画 監督テオドラ・ミハイ
ネタバレあり
メキシコが舞台であるが、ルーマニア出身でベルギーに移民した女性監督テオドラ・ミハイが作劇・監督を担当しているので、ベルギーを中心にしたメキシコ・ルーマニアとの合作映画という扱いにする。
ハイティーンの娘ラウラを送り出した母親シエロ(アルセリア・ラミレス)は、やがて街中で車を止められ、止めた車から出てきた若者=後でプーマという名前と判明=(ダニエル・ガルシア)から身代金を払えと要求される。そこで別居中の夫グスタボ(アルバロ・ゲレーロ)から7割程度の金額を工面して貰うが、結局娘を返して貰えない。
再度プーマは要求しに現れ、再び渡しても何の音沙汰もない。警察が全く頼りにならないので、知人たる棺屋?の大立者ドン・キケ(エリヒオ・メレンデス)の建物から棺を担ぎ出して出発した車を追うなどして一味と思われる構成員の情報を収集、これを軍警察に渡してお互いの利益の為に秘密裏にその基地などを襲い始めるが、結局娘は発見されない。
娘の生存を半ば諦めた彼女はプーマの牧場の近い場所を掘り、そこが事実上の墓場となっていることを突き止め、警察に来てもらう。
かくして捕えられたプーマを刑務所に訪れても何らの情報も反省の言葉も得られない彼女に、やがて、発見された肋骨一本のDNAが娘と一致したという情報がもたらされる。
昨日観た「トリとロキタ」のダルデンヌ兄弟が製作に絡んでいる。ハンディカメラを基本とし(終盤は固定が多かったという印象があるが、錯覚?)、お話の展開のうちに前提となる情報を出して来るようなストーリーテリングぶりなど、兄弟に似ているところがある。たまたまだが、犯罪組織に子供や若者が巻き込まれる社会的図式に切り込んでいる内容も近い。
メキシコは麻薬組織の暗躍で悪名高いが、どうも誘拐ビジネスが成り立っている現実を反映しているようだ。アメリカも年に五桁にも及ぶ行方不明事件があると記憶しているが、どちらかと言えば営利誘拐は少ないであろう。
ヒロインの行動力は韓国映画の女性のような感じだが、韓国大衆映画の登場人物ほど感情的ではなく日本映画のように感情を内に秘めたところがある。娘を交通事故で失った父親が原因を作った店員を追い詰めていく邦画「空白」の男性主人公よりずっと我慢強い感じさえする。
映画の作り方がダルデンヌ兄弟風のセミ・ドキュメンタリー・タッチで、字余り字足らずと感じられるところがないでもないが、母親の行動を軸に展開して見える展開ぶりはなかなか力強い。アルセリア・ラミレスという女優も大力演と言うべし。
幕切れの人影は何なのだろう? DNA一致という情報が間違いで、あるいは娘が生きて戻ったのかもしれない、という解釈を許す一方、余りに観客の想像に任せすぎている。
昨年、埼玉県の一部自民党議員がアメリカよろしく子供の送迎などを義務付けるべく児童虐待条例を改正しようとしたところ、現実離れしていると県民から大反発を喰らって廃案に追い込まれた。誘拐など殆ど起きない日本で、行方不明者が年に五桁も行くアメリカと同じ法律を作るのは余りにばかげている。そういうのを頭でっかちと言う。
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