映画評「ミッション:インポッシブル2」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2000年アメリカ=ドイツ合作映画 監督ジョン・ウー
ネタバレあり
第3作以降は初見時にブログにアップして来た人気シリーズの第2作で、第1作は数年前に再鑑賞して書いているので、これにて公開済み映画は全てアップしたことになる。
偶然にも今夜吹替版放映(TV欄にある「M:I-2」というのはビデオ化に際して行われた改題だと思う)があると知ったので、予定を数日早めて本日アップする。アニメ以外吹替版で洋画を観ないポリシー故、吹替版を観たように思われるのはシャクだからね。
大半の日本人にとって吹替版のほうが理解度がぐっと上がるのは否定のしようがないが、ご本人の声を聞かないのは失礼に過ぎるし、英語故の地口(洒落、冗談の類)が吹替では楽しめないこともままある。吹替版を先に観た人は、原語版も観るべきである。
キメラウィルスという人工強力ウィルスとその治癒薬ベレロフォンを持った製薬会社のベテラン研究員がイーサン・ハント(トム・クルーズ)に護衛を依頼して飛行機に乗るが、護衛したハントは、実はハントの代りを務めたことがあるアンブローズ(ダグリー・スコット)という偽者で、自身は外に飛び出て飛行機を墜落させる。
本物のハントは、上司(アンソニー・ホプキンズ)の指示により、アンブローズの元恋人で女泥棒のナイア(タンディー・ニュートン)を彼と再接近させて随時その情報を得られるように工作する。
その作戦自体は概ね上手く機能して、ウィルスと治療薬を需要と供給の関係にして会社を乗っ取るという敵の狙いを把握することには成功するが、アンブローズの計画も大破綻なく進む。
そこで製薬会社に侵入してウィルスの破壊工作を敢行しようとする。
近年のスパイものは007を含めて個人的なせこい野心をテーマにしたものが多く、本作も同時代の007と似たような趣向という印象を受けて面白味に欠けるが、この製薬会社侵入場面の語り口だけはちょいと興味深い。即ち、
ハント側の作戦とアンブローズ側の作戦推測をカットバックで繋ぎ、途中からハント側の作戦実行と依然続く敵側の推測のカットバックで見せるのである。特にハント側の計画を敵が見破っていることを観客が知ることでサスペンスを生むというアイデアは秀逸と思う。
脚本を書いたのは「チャイナタウン」などのロバート・タウンだが、話の陳腐さは彼ではなく原案者に帰すべきで、逆にこのアイデアにタウンの才能が発揮されていると言って良いのではないか。
ナイアは最後に残ったウィルス注射一本を自らに撃ち自ら死ぬことでアンブローズの計画を破綻させようとするが、ハントが助けたことで、アンブローズは彼女をシドニーで解放することによってウィルスをばらまき、お金儲けというつまらない野心を実現しようとする。
かくして終盤にオートバイ同士のカー(バイク)チェースがあったり、序盤からの女泥棒と協力し合うというアイデアは、最新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」で大々的に焼き直されている。
序盤のラブ・シーンは「007」の二番煎じでしかも冗長気味で少々退屈。第4作以降ラブ・シーンや家庭的な要素はなくなると思う。
また、ご本人も敵も変装名人なのが知らされているので、平均的な勘の働く人なら終盤での冒険映画的趣向が事前に解ってしまいかねない。サスペンスとしては難点である。
ジョン・ウーの香港アクション的演出は当時から既に古臭い感じを覚えた記憶があるが、特に良くないのがスローモーションの多用である。これを無くせば10分くらい短くなって退屈する時間が減ったであろう。
トム・クルーズ主演作は映画館でも例外なく吹替版が上映されるであろうから、彼の本当の声を知らない人もいるかもね。若い人は映画館では実写の吹替版がなかった時代を知らない人が多いだろう。映画館から大分遠ざかっているうち(四半世紀くらい前)にそういうことが始まっていた。アニメ映画(ほぼディズニー映画)は昔から大体吹替であったし、演ずる俳優の実際の声を意識する必要もないので、地口を別にすれば全く問題ない。
2000年アメリカ=ドイツ合作映画 監督ジョン・ウー
ネタバレあり
第3作以降は初見時にブログにアップして来た人気シリーズの第2作で、第1作は数年前に再鑑賞して書いているので、これにて公開済み映画は全てアップしたことになる。
偶然にも今夜吹替版放映(TV欄にある「M:I-2」というのはビデオ化に際して行われた改題だと思う)があると知ったので、予定を数日早めて本日アップする。アニメ以外吹替版で洋画を観ないポリシー故、吹替版を観たように思われるのはシャクだからね。
大半の日本人にとって吹替版のほうが理解度がぐっと上がるのは否定のしようがないが、ご本人の声を聞かないのは失礼に過ぎるし、英語故の地口(洒落、冗談の類)が吹替では楽しめないこともままある。吹替版を先に観た人は、原語版も観るべきである。
キメラウィルスという人工強力ウィルスとその治癒薬ベレロフォンを持った製薬会社のベテラン研究員がイーサン・ハント(トム・クルーズ)に護衛を依頼して飛行機に乗るが、護衛したハントは、実はハントの代りを務めたことがあるアンブローズ(ダグリー・スコット)という偽者で、自身は外に飛び出て飛行機を墜落させる。
本物のハントは、上司(アンソニー・ホプキンズ)の指示により、アンブローズの元恋人で女泥棒のナイア(タンディー・ニュートン)を彼と再接近させて随時その情報を得られるように工作する。
その作戦自体は概ね上手く機能して、ウィルスと治療薬を需要と供給の関係にして会社を乗っ取るという敵の狙いを把握することには成功するが、アンブローズの計画も大破綻なく進む。
そこで製薬会社に侵入してウィルスの破壊工作を敢行しようとする。
近年のスパイものは007を含めて個人的なせこい野心をテーマにしたものが多く、本作も同時代の007と似たような趣向という印象を受けて面白味に欠けるが、この製薬会社侵入場面の語り口だけはちょいと興味深い。即ち、
ハント側の作戦とアンブローズ側の作戦推測をカットバックで繋ぎ、途中からハント側の作戦実行と依然続く敵側の推測のカットバックで見せるのである。特にハント側の計画を敵が見破っていることを観客が知ることでサスペンスを生むというアイデアは秀逸と思う。
脚本を書いたのは「チャイナタウン」などのロバート・タウンだが、話の陳腐さは彼ではなく原案者に帰すべきで、逆にこのアイデアにタウンの才能が発揮されていると言って良いのではないか。
ナイアは最後に残ったウィルス注射一本を自らに撃ち自ら死ぬことでアンブローズの計画を破綻させようとするが、ハントが助けたことで、アンブローズは彼女をシドニーで解放することによってウィルスをばらまき、お金儲けというつまらない野心を実現しようとする。
かくして終盤にオートバイ同士のカー(バイク)チェースがあったり、序盤からの女泥棒と協力し合うというアイデアは、最新作「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」で大々的に焼き直されている。
序盤のラブ・シーンは「007」の二番煎じでしかも冗長気味で少々退屈。第4作以降ラブ・シーンや家庭的な要素はなくなると思う。
また、ご本人も敵も変装名人なのが知らされているので、平均的な勘の働く人なら終盤での冒険映画的趣向が事前に解ってしまいかねない。サスペンスとしては難点である。
ジョン・ウーの香港アクション的演出は当時から既に古臭い感じを覚えた記憶があるが、特に良くないのがスローモーションの多用である。これを無くせば10分くらい短くなって退屈する時間が減ったであろう。
トム・クルーズ主演作は映画館でも例外なく吹替版が上映されるであろうから、彼の本当の声を知らない人もいるかもね。若い人は映画館では実写の吹替版がなかった時代を知らない人が多いだろう。映画館から大分遠ざかっているうち(四半世紀くらい前)にそういうことが始まっていた。アニメ映画(ほぼディズニー映画)は昔から大体吹替であったし、演ずる俳優の実際の声を意識する必要もないので、地口を別にすれば全く問題ない。
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