映画評「バーナデット ママは行方不明」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2019年アメリカ映画 監督リチャード・リンクレイター
ネタバレあり

現在1980年代に流行った日本版AORがシティポップとして海外で人気である。YouTube様々と言うべし。現在世界的に流行音楽がラップ中心でありすぎて一部の人がメロディーを求めているというのも原因であろうかと思う。
 こんな文章から始めたのは、この映画を観ていたら、驚いたことに童謡「ぞうさん」を子供たちが歌うシーンがあったからである。“あれっ、これ日本の歌だったよなあ?” と思って調べたら間違いない。 日本発の童謡が欧米映画で歌われるのは初めて見た(聞いた)。

本作はリチャード・リンクレイターがマリア・センプルのベストセラー小説「バーナデットを探せ!」を映画化した。タッチがリンクレイターっぽいと感じながらも、お得意のドリーバックがないので確信を持てずにいたが、エンド・ロールを見たらやはりそうだった。

天才的な女性建築家バーナデット(ケイト・ブランシェット)は、名誉ある建築賞を受賞したものの、受賞した建物が訳ありで壊されるなどしてすっかり人間嫌いになって20年が過ぎている。
 ITエリートの夫エルジー(ビル・クラダップ)の間に生れた賢い娘ビー(エマ・ネルスン)とは姉妹のように仲が良いが、外出せずにITに頼って、外に出れば必ず隣人でもあり娘の同窓生の母でもあるオードリー(クリステン・ウィーグ)と悶着を起こす。
 セラピストの厳しい指摘だけでなく、米国当局からロシアの陰謀団に騙されていることも知って苦境に立った彼女は、それまで敵対していたオードリーに協力を求めて、自分を置いて夫と娘が出かけることにしていた南極へ単独で向かう。オードリーからバーナデットの行き先を聞いた父娘も後を追う。
 南極での自然や人々との遭遇で彼女は次第に自信を取り戻し、遂には強引に建て直し予定の基地の建物の設計に乗り出す。

原作について、やはり平均的な読者は、緩急の乏しい小難しい作品より波乱万丈で直球メッセージの作品のほうを好むわけで、それも前向きなエンディングと来れば、ベストセラーになるのもむべなる哉(かな)と思わせる。

多かれ少なかれ人は苦悩する。とりわけ他人によって苦しめられているという思いを抱く人が少なくないはずだが、本作のヒロインは極端でかなりコミカル的な性格造型となっている。
 彼女は深刻に描こうと思えばいくらでも深刻に扱える状況にあり、それをリンクレイターは(恐らく原作者マリア・センプルも)最初からコミカルに扱うことで陰鬱な作品になることを避け、場面を呼吸良く繋いで淀みなく展開している。それが一通り楽しめる作品となった所以。

必ずしも新味があるとは思えなかったので☆★はそれほど多くしないが、最後は涙を流していました。

ケイト・ブランシェット主演作としては「TAR/ター」の姉妹編みたい。

この記事へのコメント

モカ
2024年06月22日 09:57
こんにちは。

感想は一言「私も南極に行きたい!」でしたが相方の「めちゃくちゃ寒いで〜」の返しに「へぇ!まぁ確かに…でもペンギンさんに会いたかったなぁ…」と7歳児並みのやり取りで終了しました。
リンクレイター、好きやったのに…

童謡といえば、井上陽水の「傘がない」は北原白秋の「雨がふります 雨がふる 遊びにゆきたし傘はなし」のあれにインスパイアされたのではないかと昨日の朝の雨を眺めていてはたと気付きました。 どうでもいい話ですが。
オカピー
2024年06月22日 22:15
モカさん、こんにちは。

>リンクレイター、好きやったのに…

ありゃりゃ、不満でしたか^^
ちょっと軽薄と言うか、型通りと言うか、メジャー映画的すぎた、と言うか。

>井上陽水の「傘がない」は>北原白秋の「雨がふります 雨がふる 遊びにゆきたし傘はなし」のあれにインスパイアされたのではないかと
>昨日の朝の雨を眺めていてはたと気付きました。

そうかもしれませんなあ。
今、一見それらしく聞こえないけど実はビートルズ的な、井上陽水の初期のアルバム群を別ブログでやっていますけど、童謡なども好きそうですね。
4枚目のアルバムに入っている「旅から旅」は極めて童話的です。