映画評「シャーロック・ホームズ 死の真珠」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1944年アメリカ映画 監督ロイ・ウィリアム・ニール
ネタバレあり

14本あるベイジル・ラスボーンにょるシャーロック・ホームズ・シリーズの第8作。
 最終作「殺しのドレス」(1946年)は4カ月前に観て、画面が若干弱いと思ったものの、役者の面白味で捨てがたい作品になっていた。未鑑賞の作品と比較するのは無粋ながら、戦前のホームズものより良いのではないか。

本作はコナン・ドイルの短編「六つのナポレオン」を土台にしているが、悪役グループは全くの創作で、かなり換骨奪胎した内容である。

悪女ナオミ(イヴリン・アンカーズ)が博物館員から奪ったボルジア家由来の大真珠を老人に扮装したホームズ(ラスボーン)がうまく奪還して博物館に返す。
 やがて博物館で厳重な防犯システムをホームズがチェックしている間隙をついて、ナオミが従っている首謀者コノヴァ―(マイルズ・マンダー)が真珠を奪う。すぐに捕えられるが、真珠は発見されない。
 その直後から人が殺された陶器が粉々に破壊される事件が続け様に起こる。ホームズはここから陶器に紛れて隠されたものがあり、それがナポレオンの胸像であることを掴む。6つあった固まる前のナポレオン像のいずれかに真珠が隠されていたわけで、ホームズは既に次の持ち主をためていた犯人グループの先回りをする。

犯行内容は同じだが、何故ナポレオン像が壊されるかという謎の提示に始まり、それが埋めた真珠を取り出す為と突き止める小説版と違って、映画版は観客が犯人の目的が半ば解ってい、それをホームズが解明する倒叙形式になっていて、謎解き以上にサスペンスが眼目という具合に換骨奪胎されている。

短編ミステリーというのはどうしても “奇妙な味” に寄りがちであるから、ある程度の上映時間の映画にする時はこの手のアイデアが必要になることが多い。犯人側にホラー映画的な人物がいて殺人が3件もあるのも視覚を意識してのことで、69分という長さを飽きさせないように作られている。暗さを生かした終盤の場面など画面も「殺しのドレス」より見応えあり。

この度ホームズは小説も全て読みましたです。

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