映画評「犯人は21番に住む」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1943年フランス映画 監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾー
重要なネタバレあり。未鑑賞の方は要注意。

アンリ=ジョルジュ・クルーゾーのデビュー作はサスペンスという以上に本格推理ものである。ブログを始める3,4年前に観たから20年は経っているので、そろそろ再鑑賞しても良い頃合い。

何度も述べて来たのでご存知の方も多い筈だが、パリ五輪開催時の2週間強は殆ど映画を観る態勢が維持できず記事作成が覚束なくなるので、今は再鑑賞でも初めてでも上映時間の短い作品を観て貯金をしている。80分以下なら1日2本も可能だ。本作は83分。

パリで連続殺人事件が起きる。殺し方は刺殺、絞殺と色々だが、必ずデュランという名を記した名刺が置かれている。警察の威信をかけて捜査を命じられたのがウェンス警視(ピエール・フレネー)。
 デュランなる人物は調子に乗ってモンパルトル21番地に死体があると警察に電話してくる。 そこは “ミモザ館” なる下宿屋で、 実際に住民の女性作家の死体が発見される。
 警視の細君ミラ(シュジー・ドレール)は歌手としての出番を増やす名声を得ようと、 夫君が神父に扮装して既に潜入している “ミモザ館” を訪れ、 夫君と別別に犯人を上げようとする。
 捜査の結果一人の下宿人が逮捕されるが、その拘留中に別のデュラン事件が起きた為釈放し、怪しい他の下宿人を拘留するが、それでも事件が続くので、下宿屋の外に犯人がいるということになりかかる。
 かくして下宿人が揃って出る寄席の場で警視は犯人とそのトリックに思い当たる。

思うに、これは夫婦探偵もののヴァリエーションだ。片や公的探偵で片や文字通り素人探偵(探偵が官憲を指した戦前、私立探偵も素人探偵と言われたが、現在は公的探偵=警察官でも私立探偵でもない本当の素人を指す)という凸凹コンビの面白さがあり、アメリカの「影なき男」シリーズを思い浮かべれば近いが、テイスト的にはウッディー・アレンの「マンハッタン殺人ミステリー」や「タロットカード殺人事件」を想像すれば、当たらずと雖も遠からずてなところだ。

ミステリーとしては、犯人が言わばデモンストレーション型で、犯人に近づくほど遠くなるというトリックを使う為に自ら警察に接近するという面白味が断然優れている。これはクルーゾーではなく、原作者(共同脚色も)スタニスラス=アンドレ・ステーマンの殊勲である。捜査心理の盲点を突いたところに上手さがあるわけで、うぶなミステリー・ファンなら今でも通用するのではないか。

デュラン・デュランというロック・バンドが40年程前に、ニュー・ロマンティックと言われて、人気を博しましたな。

この記事へのコメント

2024年06月30日 13:59
クルー「ゾー」の示した意外な犯人「ゾー」(像に)「ゾー」っとした、というより、おお、なるほど!と、2回目観賞にもかかわらず、驚いたという、安直な観客です。
タイトルも、かっこいいですよねえ。
オカピー
2024年06月30日 22:38
ボーさん、こんにちは。

昔から客が来るぞーと言われていたクルーゾー監督。
それに対して来ないと言われたのが、市川崑(来ん)。