映画評「わが父わが子」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1940年フランス映画 監督ジュリアン・デュヴィヴィエ
ネタバレあり

モンマルトルの丘に暮らすぶどう農家フロマン家の70年に及ぶクロニクルである。ジュリアン・デュヴィヴィエの作品だが、これは観たことがなかった。

1871年普仏戦争に出征して結局帰らなかった当主ピエール(ルイ・ジューヴェ)の長女エステル(成人後シュジー・プリム)は両親を早く失った結果弟たちの為に母親代わりをして生涯独身を通し、第1次大戦までの看護婦としての活躍が認められてレジオンドヌール勲章を授与される。長男フェリックス(ジューヴェ二役)も軍人としての貢献が認められてモニュメントまで作られる。でも式典が嫌いな彼は出席しない。
 姉と並んで主人公と言って良い次男ベルナールは教師となって結婚、二卵性の双子を儲ける。その息子アランは1918年マルヌの戦いでの偵察の際に戦死する。娘マリー(ミシェル・モルガン)は画家と結婚して、設けた息子が出征しようとしている。

偶然だろうが、木下恵介「陸軍」(1944年)に似ている。あの映画も1860年代から1930年代(日中戦争)までの70年渡る高木家のクロニクルで、やはり三代(こちらは四代)に渡って戦争に巻き込まれている。
 製作年から言えば木下がこの映画を参考にしていても不思議ではないが、木下はこの映画の実物を観ているわけがない。1940年にはドイツ以外の外国映画は観られなかったし、この映画自体がドイツにより没収されてい、最後に残ったフィルム一つを持ってデュヴィヴィエが渡米してアメリカで再編集されたという経緯がある。日本では戦後それが公開された。

それにしても設定が似ている。対照的なのは、「陸軍」が国策映画でありながら厭戦映画と捉えられても仕方がないような作り方をし、こちらは逆に内容的に反戦映画と見られても仕方がないにしても立派な国策(反ドイツ)映画になっていること。 まともに観られれていれば、 これ一本で “ナチスをやっつけろ” という気分が国民の間で盛り上がったはずである。

戦争の問題を別にして、家族のクロニクルとして一通り楽しめるようになっている。三代目辺りになると誰が誰だか解らなくなるが、要は三兄弟と投資に生きて遂には破産するジュール叔父さん(レイミュ)さえ区別できれば本作の理解において支障はない。僕は映像記憶が悪いから、言うのですがね(笑)。

世界各国で極右(テロリストの意味ではない)が勢力を伸ばしている。フランスもその一つだが、次の選挙で一時懸念されていた極右の過半数超えはなさそうである。ドイツと違って首相より大統領の権限が強い国とは言え、そうなったら大統領は死に体になってしまう。

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