映画評「アナログ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2023年日本映画 監督タカハタ秀太
ネタバレあり

ビートたけしが原作とは俄かに信じられないようなすれ違い恋愛映画。

“ピアノ” という喫茶店で、その店を設計した若い会社員設計士・二宮和也と訳あり美人・波留が、互いの独自の審美眼に意気投合し、毎週木曜日に会い続け、次第に外へと行動範囲を広げる。
 彼がプロポーズしようと決めた約束の日に彼女は現れず。それがずっと続いて一年後にある事実が発覚する。彼女は喫茶店に行くために乗ったタクシーで交通事故に遭ったのである。

ベテラン洋画ファンなら “な~んだ、「めぐり逢い」(1957年)じゃないか” と思うはずだが、現在の、それも日本の植物系男女のロマンスと来れば、違った捻りがある。捻りと言えば、現在なのに女性がスマホを使わない(それには一応理由がある)。アナログと言っても通信手段だけである。
 即ち、彼女は命を長らえるが、意思疎通ができないほどの脳障害を負い、下半身も不随である。彼は、彼女の姉・板谷由夏に見せて貰った日記を読んで彼女の思いを知ると、会社を辞めると彼女の家に日参する。毎日近くの浜辺に連れ出すうちに彼女は手を握り返し、声を発する。

すれ違いものに難病(病気ではないけれど)ものの要素を交えた展開で、ビートたけしらしい毒は全くないが、考えてみれば北野武監督として彼がかつて「あの夏、いちばん静かな海。」という聴覚障碍者のロマンスを作っていることを考えると、彼にはこういうロマンティックな面もあるということが解る。浜辺が好きなことも解る。

二宮君には桐谷健太と浜野謙太の悪友がい、三人での漫才のようなやり取りにビートたけしらしさが僅かにあり、二人の狂言回しとしての活躍がYA向けのロマンスとは一味違う味を出していると言えば言える。ただ、この二人が放つ毒を控え目にした為に類型を大きく出ないお涙頂戴ものに落とし込まれてしまったのは惜しい。
 尤も、評判は悪くないようだから、そんなことは大衆映画ファンには知ったことではないかもしれない。

しかし、良い映画が良い映画好きを増やし、良い映画好きが良い映画を増やす好循環を期待する僕ら映画ファンのレビュワーは言わなければならない。映画は1割の人の為に作られるわけではない(本当は1割以下の人の為に作られているのだが)などと程度の低いことをのたまう輩(知恵の足りない方の甥ですな=日本のアニメと「ワイルド・スピード」しか観ない男)はそんな僕らの真摯な思いなど金輪際解らないのだ。

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