映画評「天国はまだ遠い」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年日本映画 監督・濱口竜介
ネタバレあり
他の作品と比べれば、ぐっと大きな大衆的興味を持って観ることが出来る濱口竜介監督による38分の短編映画である。
アダルトビデオの修正をする34歳男性・岡部尚が、28歳女子大生・玄理の修了作品となるドキュメンタリーへの出演を請われる。二人が会話をする続けるうちに、彼女が17年前に17歳で殺された女子高生・小川あんの妹で、男性が高校時代に被害者と通学路が同じだったという関係であることが判ってくる。
それだけで出演を請われるのは妙。しかし、妹は、男性が姉の名前である男性にラブレター(メール)を送ったことを知っている。そんな気持ち悪いことを何故したか? 観客はその答えを半ば知っている。男性が語るように、霊視者である彼は17年間少女にまとわりつかれてい、彼女が男性の身体を使ってメールを送った次第。凡人である妹はそれが信じられない。
そこで男性は姉妹でしか知り得ない話を語り始める。妹の感動も束の間、男性はあんちゃんが応えたのではないことを告白してしまう。厳密には途中までは本人だったかもしれないが、途中からは男性の演技である。「偶然と想像」でもあった劇中演技である。と言うのも、あんちゃんの霊体はその時ぐっすり眠り込んでいたから。
しかし、彼があんに成りすまして言ったことに嘘はない。彼女は、妹に会えたことに一定の満足を覚えても、まだ天国に行くことができない。
多くの方が興味の持てるファンタジー仕様だが、濱口作品の例に洩れず、会話という方法により、他者を意識することで自己を確立していく様子を見せていく一種の哲学映画という立場でもある。
そして、その狭間に我々観客は、彼女がまだ天国へ行けない理由を見出していくべきであろう。
僕の亡母は遠く離れた叔父(僕にとっては大叔父)の死んだ時間に霊体を見たり、人の死を良く当てた。ちょっとした霊能者だったのかもしれない。
2015年日本映画 監督・濱口竜介
ネタバレあり
他の作品と比べれば、ぐっと大きな大衆的興味を持って観ることが出来る濱口竜介監督による38分の短編映画である。
アダルトビデオの修正をする34歳男性・岡部尚が、28歳女子大生・玄理の修了作品となるドキュメンタリーへの出演を請われる。二人が会話をする続けるうちに、彼女が17年前に17歳で殺された女子高生・小川あんの妹で、男性が高校時代に被害者と通学路が同じだったという関係であることが判ってくる。
それだけで出演を請われるのは妙。しかし、妹は、男性が姉の名前である男性にラブレター(メール)を送ったことを知っている。そんな気持ち悪いことを何故したか? 観客はその答えを半ば知っている。男性が語るように、霊視者である彼は17年間少女にまとわりつかれてい、彼女が男性の身体を使ってメールを送った次第。凡人である妹はそれが信じられない。
そこで男性は姉妹でしか知り得ない話を語り始める。妹の感動も束の間、男性はあんちゃんが応えたのではないことを告白してしまう。厳密には途中までは本人だったかもしれないが、途中からは男性の演技である。「偶然と想像」でもあった劇中演技である。と言うのも、あんちゃんの霊体はその時ぐっすり眠り込んでいたから。
しかし、彼があんに成りすまして言ったことに嘘はない。彼女は、妹に会えたことに一定の満足を覚えても、まだ天国に行くことができない。
多くの方が興味の持てるファンタジー仕様だが、濱口作品の例に洩れず、会話という方法により、他者を意識することで自己を確立していく様子を見せていく一種の哲学映画という立場でもある。
そして、その狭間に我々観客は、彼女がまだ天国へ行けない理由を見出していくべきであろう。
僕の亡母は遠く離れた叔父(僕にとっては大叔父)の死んだ時間に霊体を見たり、人の死を良く当てた。ちょっとした霊能者だったのかもしれない。
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