映画評「永遠に君を愛す」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年日本映画 監督・濱口竜介
ネタバレあり

濱口竜介監督の第2作は59分の中編。

普段の濱口監督は、エリック・ロメールを少し重くしたようなタッチであるが、この映画にはどこかアメリカ映画的なムードがある。脚本を自分で書いてないからそういう差が生れる。

結婚式の当日、新婦河合青葉が新郎杉山彦々に、自分の浮気を告白する手紙を書いている。
 彼女の浮気相手というか元の彼氏・岡部尚はヌードモデルをしているが、彼を見初めてしまった小悪魔的な女子学生・菅野莉央につきまとわれるうちに、彼女の結婚連絡を受けて涙に暮れ、結局結婚式場へ行く。「卒業」(1967年)のような展開は望んでいないようだ。
 式場では、予行演習の際に新郎が新婦の浮気を知っていると告げる。複雑怪奇なのは人間の心理で、自分で浮気告白の手紙を書きながら、相手にそれを知っていると言われると “言って欲しくなかった、結婚式はしない” となる。しかし、新郎の新たな決意表明により思いを新たにした新婦は結婚式も入籍もすると宣言する。

一応のハッピー・エンド(映画はNot the endと出す)だから、見せ方のいかんに関係なくコメディーと言って間違いないわけであるが、菅野莉央の小悪魔ちゃんがコミカルに出没するのがアメリカ映画のようで楽しい。岡部君が気づかないうちに彼女がこっそり結婚式場に入ってしまうのを見せるタッチの軽さは、いくら他人の脚本とは言え、濱口作品とは思えず愉快。
 最後に岡部君は路上で追いかけて来た彼女をおんぶして去る。それと気づかないほどの速さで為されるそれを室内から見せる。映画的には主役のカップルよりこちらのカップルの珍妙さが気に入った。

ヒロインの名前が永遠の永子であり通奏低音を成す。菅野莉央のエリナはその小悪魔=天使的なイメージのように、ヒロインの気分を落ち着かせ、あるいはその進展に一役買ったか。

エリナが最初から両方に絡んでいると、完全な狂言回しになり、ぐっと僕好みになったはず。

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