映画評「イノセンツ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2021年ノルウェー=スウェーデン=デンマーク=フィンランド=フランス=イギリス合作映画 監督エスキル・フォクト
ネタバレあり
WOWOWにて鑑賞。
北欧サスペンス/スリラーでも、ホラー特集にある場合は無視するが、【W座からの招待状】や【ワールドシネマセレクション】で出て来るのであれば観る。こちらは後者の枠で放映されたもので、個人的には同じ北欧ホラー(スリラー)でも「ミッドサマー」のようなねちっこいものより趣味に合う。
不勉強で知らなかったが、大友克洋のコミック「童夢」が原案らしい。オマージュというよりは影響もしくは参考だろう。
ノルウェーの団地群。8歳くらいの少女イーダ(ラーケル・レノーラ・フレッツム)は、依怙贔屓されていると思って自閉症の姉アナ(アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ)の靴にガラスを入れて怪我をさせる。その時団地の黒人少女アイシャ(ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム)も何故か足を負傷する。アイシャはテレパシーがあり、アナのように通じる者に対しては念力のような力を発揮することがあるらしい。
イーダは一つ二つ年上と見られるアラブ系少年ベン(サム・アシュラフ)と仲良くなる。強い念力を持つ彼は邪悪な精神の持ち主でもあり、慕って来る猫を階段から落とし弱っているところを踏みつけて殺す。
イーダに連れられて彼女の友だち二人と会ったアナは元々アイシャと感応し合っていたテレパシー能力に加えて、ベンによって念力も引き出される。一切言葉を発しなかった彼女はアイシャに導かれて話し出す。
ベンが怒って母親を殺すという事件を起こす。次第に彼の残虐性に恐れをなしたイーダとアイシャが距離を置き出すと、少年は益々荒れ狂って人を使って殺人を犯す。アイシャとアナが協力するとさすがに立ち向かえない為母親を使ってアイシャを殺す。
続いてアナを仕留めようとするが、その時イーダも不思議な力を得てアナと協力してベンに立ち向かう。
昔から子供の邪悪を描いたホラーは結構あって、特に僕が映画を本格的に見始めた1970年前後に目立った気がする。
最後にイーダが特殊能力を得たように見えるが、僕はそう見ない。恐らくアナあるいはアナの恐怖心あるいは何かの思いがイーダを含めて近くにいた子供たちの幾たりかに影響を与え、彼らが一致協力して邪悪な魂の撲滅に動くのである。団地から外に出た子供たちがことが終わると部屋に戻っていくのを見るとそう思わざるを得ないではないか。
猫殺しの場面を見て最低とする意見が一部にあるが、そういう見方は狭量でつまらない。
この映画にメッセージと言える程のものはないにして、かかる残忍ぶりを披露するベンを反面教師にしてイーダは善を意識し始め、やがて姉に寄り添う人間的成長を見せるわけだから。
悪人とは言え、人の形をしたものを殺すのは良くないように見えるが、彼は一致協力して倒さなければならないドラキュラのような悪魔だったのである。そう割り切れば決して悪い後味の映画ではない。
翻って、映画を見てメッセージあるいは何か教訓的なものを得ないといけないような思い込みが一部にあるが、恐怖映画は怖くて何ぼである。メッセージがあるから良い映画、ないからダメな映画と思うのは強迫観念にすぎない。アルフレッド・ヒッチコックやキャロル・リードのように面白くて絵(映画)的に美しい作品を僕は一番愛する。
ロック・ファンの僕には、「童夢」と言えば、ムーディー・ブルースのアルバムだ。
2021年ノルウェー=スウェーデン=デンマーク=フィンランド=フランス=イギリス合作映画 監督エスキル・フォクト
ネタバレあり
WOWOWにて鑑賞。
北欧サスペンス/スリラーでも、ホラー特集にある場合は無視するが、【W座からの招待状】や【ワールドシネマセレクション】で出て来るのであれば観る。こちらは後者の枠で放映されたもので、個人的には同じ北欧ホラー(スリラー)でも「ミッドサマー」のようなねちっこいものより趣味に合う。
不勉強で知らなかったが、大友克洋のコミック「童夢」が原案らしい。オマージュというよりは影響もしくは参考だろう。
ノルウェーの団地群。8歳くらいの少女イーダ(ラーケル・レノーラ・フレッツム)は、依怙贔屓されていると思って自閉症の姉アナ(アルヴァ・ブリンスモ・ラームスタ)の靴にガラスを入れて怪我をさせる。その時団地の黒人少女アイシャ(ミナ・ヤスミン・ブレムセット・アシェイム)も何故か足を負傷する。アイシャはテレパシーがあり、アナのように通じる者に対しては念力のような力を発揮することがあるらしい。
イーダは一つ二つ年上と見られるアラブ系少年ベン(サム・アシュラフ)と仲良くなる。強い念力を持つ彼は邪悪な精神の持ち主でもあり、慕って来る猫を階段から落とし弱っているところを踏みつけて殺す。
イーダに連れられて彼女の友だち二人と会ったアナは元々アイシャと感応し合っていたテレパシー能力に加えて、ベンによって念力も引き出される。一切言葉を発しなかった彼女はアイシャに導かれて話し出す。
ベンが怒って母親を殺すという事件を起こす。次第に彼の残虐性に恐れをなしたイーダとアイシャが距離を置き出すと、少年は益々荒れ狂って人を使って殺人を犯す。アイシャとアナが協力するとさすがに立ち向かえない為母親を使ってアイシャを殺す。
続いてアナを仕留めようとするが、その時イーダも不思議な力を得てアナと協力してベンに立ち向かう。
昔から子供の邪悪を描いたホラーは結構あって、特に僕が映画を本格的に見始めた1970年前後に目立った気がする。
最後にイーダが特殊能力を得たように見えるが、僕はそう見ない。恐らくアナあるいはアナの恐怖心あるいは何かの思いがイーダを含めて近くにいた子供たちの幾たりかに影響を与え、彼らが一致協力して邪悪な魂の撲滅に動くのである。団地から外に出た子供たちがことが終わると部屋に戻っていくのを見るとそう思わざるを得ないではないか。
猫殺しの場面を見て最低とする意見が一部にあるが、そういう見方は狭量でつまらない。
この映画にメッセージと言える程のものはないにして、かかる残忍ぶりを披露するベンを反面教師にしてイーダは善を意識し始め、やがて姉に寄り添う人間的成長を見せるわけだから。
悪人とは言え、人の形をしたものを殺すのは良くないように見えるが、彼は一致協力して倒さなければならないドラキュラのような悪魔だったのである。そう割り切れば決して悪い後味の映画ではない。
翻って、映画を見てメッセージあるいは何か教訓的なものを得ないといけないような思い込みが一部にあるが、恐怖映画は怖くて何ぼである。メッセージがあるから良い映画、ないからダメな映画と思うのは強迫観念にすぎない。アルフレッド・ヒッチコックやキャロル・リードのように面白くて絵(映画)的に美しい作品を僕は一番愛する。
ロック・ファンの僕には、「童夢」と言えば、ムーディー・ブルースのアルバムだ。
この記事へのコメント
大友違いでは? コミックなら克洋さんじゃないでしょか?
>大友違いでは? コミックなら克洋さんじゃないでしょか?
そうだす。
パソコンが悪いのだす。
大友と打ったら最初に【良英】が出たのに気付かなかったという次第。
(既に訂正して、痕跡も残っていませんが、悪しからず)
モカさんは、僕の編集員と言いましょうか、校正担当と言いましょうか、きちんと読まれて、非常に助かっております。
今後ともよろしくお願いいたします<(_ _)>
今回はたまたま気づいただけです。私は重箱の隅をほじくる怖い婆さんじゃありませんからね^_^
それにしても普通「大友」の後に続くのは「康平」と違いますか? 次点が「克洋」かな…
ロックファンのオカピー先生にお薦めです。
アマプラで「ブリティッシュ・ロック誕生の地下室」が観られます。
この地下室というのはウェストロンドンのイーリングクラブっていうんですがご存知でしたか? ストーンズやフーの誕生の店がイーリングだったようです。
インタビュー映像が多いのでちょっともたつくかもしれませんが未見なら是非どうぞ!
私です。すいません。
>普通「大友」の後に続くのは「康平」と違いますか? 次点が「克洋」かな…
事情がありましてね^^
映画評の粗稿はエクセルに書いていまして、そこに主なスタッフとキャストも書くのですが、エクセルは検索などとまた違った表示をして、前に打ったスタッフなどが優先的に出るのですよ。大友良英は映画音楽を多数書いているので、きっと原作欄にこれが出てそのまま記録したのだと思います。
で、粗稿を書く時にそれを見て(コミックに詳しくないこともあり)そのまま書いてしまったのでしょう。
>アマプラで「ブリティッシュ・ロック誕生の地下室」が観られます。
確かにありました。近いうちに観ます。
>この地下室というのはウェストロンドンのイーリングクラブっていうんですがご存知でしたか?
日本のロック・ファンの例に洩れず、ブリティッシュ・ロックは色々と聴きますが、ビートルズ以外は専ら聴くのみという感じですので、知らなかったですね。勉強させてもらいます^^