映画評「サタデー・フィクション」
☆☆★(5点/10点満点中)
2019年中国映画 監督ロウ・イエ
ネタバレあり
日中の戦争とスパイものが絡む中国映画なら、7か月前に観たチャン・イーモウ監督「崖上のスパイ」のほうをお薦めする。やはりこの手のメジャーっぽい内容は、ロウ・イエのようなインディ的な監督よりチャン・イーモウのような正統派のほうが良い。
1941年12月1日から始まる。英仏の租界がある上海で上演される新作舞台「サタデー・フィクション」(工員のストをめぐる闘争を描いたものらしい)出演の為に大物女優コン・リーがやって来る。実はそれは名目で、本当はフランス当局の為に、日本軍の中尉オダギリジョーから日本の次の侵攻を事前に掴むのが目的である。
英仏や重慶・南京(日本の傀儡政権)のスパイやらが暗躍してごった煮的な状況らしいが、映画が直接扱っているのはフランスのスパイ団の活躍とそれを阻止する日本軍との対決だけでそれほど複雑なわけではないものの、特に前半コン・リーや主催者にして共演者マーク・チャオの台詞と実際の会話が重層的に解りにくくなるように配置されているので相当難儀させられる。
和訳の字幕ではクォーテーション・マークが付くので解りやすいが、字幕に頼らない中国の客はもっと大変だろう。
日本の次の侵攻が真珠湾攻撃であることは言うまでもない。
画面をモノクロにしてクラシックなムードを出している一方、手持ちカメラを基本にしショットを余り切らずにカメラを振ったりするインディ的な見せ方はそれとは正反対。
一般論としてカメラを振るという些か煩わしい見せ方よりショットを切って切り返しなどするほうが好きだということもあり、まして正攻法にスパイと官憲の闘いを扱う本作においてはかなり抵抗がある。カット割りの工夫(本作にそれが全くないわけではない)で構築的にサスペンス醸成に努めてくれた方が有難かったのである。
原作の一つに昔読んだ横光利一「上海」があったのにはびっくりした。
姻族が重慶市出身。現在の重慶市の中には県がある。大都市と県の関係が日本とは逆なのだ。
2019年中国映画 監督ロウ・イエ
ネタバレあり
日中の戦争とスパイものが絡む中国映画なら、7か月前に観たチャン・イーモウ監督「崖上のスパイ」のほうをお薦めする。やはりこの手のメジャーっぽい内容は、ロウ・イエのようなインディ的な監督よりチャン・イーモウのような正統派のほうが良い。
1941年12月1日から始まる。英仏の租界がある上海で上演される新作舞台「サタデー・フィクション」(工員のストをめぐる闘争を描いたものらしい)出演の為に大物女優コン・リーがやって来る。実はそれは名目で、本当はフランス当局の為に、日本軍の中尉オダギリジョーから日本の次の侵攻を事前に掴むのが目的である。
英仏や重慶・南京(日本の傀儡政権)のスパイやらが暗躍してごった煮的な状況らしいが、映画が直接扱っているのはフランスのスパイ団の活躍とそれを阻止する日本軍との対決だけでそれほど複雑なわけではないものの、特に前半コン・リーや主催者にして共演者マーク・チャオの台詞と実際の会話が重層的に解りにくくなるように配置されているので相当難儀させられる。
和訳の字幕ではクォーテーション・マークが付くので解りやすいが、字幕に頼らない中国の客はもっと大変だろう。
日本の次の侵攻が真珠湾攻撃であることは言うまでもない。
画面をモノクロにしてクラシックなムードを出している一方、手持ちカメラを基本にしショットを余り切らずにカメラを振ったりするインディ的な見せ方はそれとは正反対。
一般論としてカメラを振るという些か煩わしい見せ方よりショットを切って切り返しなどするほうが好きだということもあり、まして正攻法にスパイと官憲の闘いを扱う本作においてはかなり抵抗がある。カット割りの工夫(本作にそれが全くないわけではない)で構築的にサスペンス醸成に努めてくれた方が有難かったのである。
原作の一つに昔読んだ横光利一「上海」があったのにはびっくりした。
姻族が重慶市出身。現在の重慶市の中には県がある。大都市と県の関係が日本とは逆なのだ。
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