映画評「うず潮」(1975年)
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1975年フランス=イタリア合作 監督ジャン=ポール・ラプノー
ネタバレあり
カトリーヌ・ドヌーヴやジャン=ポール・ベルモンドと色々縁のあるジョン=ポール・ラプノーの共同脚色・監督作品。嵌った時は「リオの男」(1964年)のように面白い話を書く人である。そう言えば、「リオの男」にはカトリーヌのお姉さんフランソワーズ・ドレルアックが出演していた。長生きすれば凄い姉妹になっていたろうに。
再鑑賞作品。
ヴェネズエラまで流れ着いたフランス人の水商売美人カトリーヌが、イタリア移民2世のルイジ・ヴァンヌッチとの結婚式直前に逃げ出し、知り合いのクラブ経営者トニー・ロバーツのロートレックを頂戴してとんずら、いずれ換金しようと考えるが、その前にホテル滞在中のイヴ・モンタンの部屋に逃げ込む。
モンタンは香水作りの名人だが、米国人の夫人ダナ・ウィンターの経営する企業に強制的に働かされるのを嫌って、彼以外に人の住まない孤島で自給自足の生活を送っている。
結局試みたフランス帰国は果たせずに孤島にまでやって来たカトリーヌは大いにじゃじゃ馬ぶりを発揮、モンタンを困らせるが、それでも美人の彼女だから、二人の間に情が生じたりするものの、ロートレックをサン・ドミンゴで売りたい彼女と意見が相違するなどして、彼女は掘っ立て小屋で独り暮らしを始める。
そこへ婚約者を取り戻したいヴァンヌッチと絵を取り戻したいロバーツがやって来てはちゃめちゃの大騒ぎになる。
モンタンは米国へ連れ戻されるが、あくまで抵抗し契約違反による刑務所生活を経て、カトリーヌに会いに行く。
というラヴ・コメディーで、少々羽目を外し過ぎたという印象のところがないではないものの、色々な変遷があるロートレックの使い方が相当うまい。特にフランス行きの飛行機に乗った筈の彼女がヴェネズエラに留まったのがロートレック持ち出しを税関が咎めたからと回想で説明する辺りは秀逸と言って良いアイデアで実に可笑しい。
ラプノーに限らず、物質生活を脱しようとする人間を描くとフランス映画は(時に狂騒的な喧騒の中にも)のんびりとして実に良い味を発揮することが多いわけで、この作品はその映画群に入れて良い。
幕切れのヒロインのシチュエーションは完全には分らないが、案外良いところのお嬢さんだったのかもしれない。大人のお伽話として楽しむべき映画である所以はこのラスト・シーンが如実に物語る。
引退状態になっていなければブリジット・バルドー辺りがやったかもしれない役だが、カトリーヌのじゃじゃ馬ぶりがとにかくお楽しみ。こういうのんきな喜劇に人間の性格を云々する人の気が知れない。
カトリーヌのドヌーヴさん、少し太めになって来たかもしれません。
1975年フランス=イタリア合作 監督ジャン=ポール・ラプノー
ネタバレあり
カトリーヌ・ドヌーヴやジャン=ポール・ベルモンドと色々縁のあるジョン=ポール・ラプノーの共同脚色・監督作品。嵌った時は「リオの男」(1964年)のように面白い話を書く人である。そう言えば、「リオの男」にはカトリーヌのお姉さんフランソワーズ・ドレルアックが出演していた。長生きすれば凄い姉妹になっていたろうに。
再鑑賞作品。
ヴェネズエラまで流れ着いたフランス人の水商売美人カトリーヌが、イタリア移民2世のルイジ・ヴァンヌッチとの結婚式直前に逃げ出し、知り合いのクラブ経営者トニー・ロバーツのロートレックを頂戴してとんずら、いずれ換金しようと考えるが、その前にホテル滞在中のイヴ・モンタンの部屋に逃げ込む。
モンタンは香水作りの名人だが、米国人の夫人ダナ・ウィンターの経営する企業に強制的に働かされるのを嫌って、彼以外に人の住まない孤島で自給自足の生活を送っている。
結局試みたフランス帰国は果たせずに孤島にまでやって来たカトリーヌは大いにじゃじゃ馬ぶりを発揮、モンタンを困らせるが、それでも美人の彼女だから、二人の間に情が生じたりするものの、ロートレックをサン・ドミンゴで売りたい彼女と意見が相違するなどして、彼女は掘っ立て小屋で独り暮らしを始める。
そこへ婚約者を取り戻したいヴァンヌッチと絵を取り戻したいロバーツがやって来てはちゃめちゃの大騒ぎになる。
モンタンは米国へ連れ戻されるが、あくまで抵抗し契約違反による刑務所生活を経て、カトリーヌに会いに行く。
というラヴ・コメディーで、少々羽目を外し過ぎたという印象のところがないではないものの、色々な変遷があるロートレックの使い方が相当うまい。特にフランス行きの飛行機に乗った筈の彼女がヴェネズエラに留まったのがロートレック持ち出しを税関が咎めたからと回想で説明する辺りは秀逸と言って良いアイデアで実に可笑しい。
ラプノーに限らず、物質生活を脱しようとする人間を描くとフランス映画は(時に狂騒的な喧騒の中にも)のんびりとして実に良い味を発揮することが多いわけで、この作品はその映画群に入れて良い。
幕切れのヒロインのシチュエーションは完全には分らないが、案外良いところのお嬢さんだったのかもしれない。大人のお伽話として楽しむべき映画である所以はこのラスト・シーンが如実に物語る。
引退状態になっていなければブリジット・バルドー辺りがやったかもしれない役だが、カトリーヌのじゃじゃ馬ぶりがとにかくお楽しみ。こういうのんきな喜劇に人間の性格を云々する人の気が知れない。
カトリーヌのドヌーヴさん、少し太めになって来たかもしれません。
この記事へのコメント
淡路島近辺のうみに特有のものではなくて世界中の海で渦潮現象は見られる、という事でしょうか?
「うず潮」は1964年4月から1年間の放映でした。あの頃の朝ドラは良かったですね。共感してくれる人がほとんどいない昔の話ですが。
本作の前に「夕なぎ」「潮騒」とイヴ•モンタン主演の映画が続いたので海辺3部作を狙ったのかもしれませんね。 昨日の「悲しき」と一緒で何とかの一つ覚えってやつですね。
>ドヌーヴがこういうコメディで活き活きしているのがとても印象に残って
多分70年代に入って「モン・パリ」などコメディーに新境地を求めた感がありますが、一番うまく行ったのが本作でしょうね。
客寄せを狙った邦題で却って失敗したかも、という例かもしれませんね。
>林芙美子の「放浪記」のドラマ化で林芙美子を林美智子が演じていました。
一字違い!
映画化もされたようです。
>あの頃の朝ドラは良かったですね。共感してくれる人がほとんどいない昔の話ですが。
朝の連続テレビ小説で一番古い記憶は「おはなはん」です。あの頃は1年つづいていましたね。民放も長いものが多かった。
>本作の前に「夕なぎ」「潮騒」とイヴ•モンタン主演の映画が続いたので海辺3部作を狙ったのかもしれませんね。
そう思います。当時まだ小僧でしたが、そう思った記憶もあります。
確かに海はでてきますが、「うず潮」という題名にする積極的な理由はなですから。