映画評「スギメ(3万年前の航海 徹底再現プロジェクト)」
☆☆★(5点/10点満点中)
2020年日本映画 監督・門田修
ネタバレあり
観たい映画がなかなか出てこず、かと言って古い映画ばかりや再鑑賞映画ばかりでは何であり、かつ短い作品を探していたら、プライムビデオでこんなドキュメンタリーに出くわした。元来文化人類学的なものには興味があるので、余り躊躇なく観ることにした。
何年か前に石器時代の舟で航海するも失敗という話を報道番組だかで聞いた記憶があるが、多分この企画の途中での話だった模様。
海部陽介という学者指導による国立科学博物館の企画で、沖縄各地で人骨が発見されている3万年前のホモ・サピエンスがいかに台湾から琉球の島々へ渡ったかを調べるのである。現代人が失敗することは当時の人間も失敗した筈で、従って本作に出て来る数々の失敗は非常に意義のある失敗であるということが理解できると思う。
当時の技術では海流(黒潮)の関係で九州から南下というルートは考えにくいらしく、台湾から与那国島に行くルートで検証するのである。この企画で一番肝要なのはどんな舟で向かったかということである。
最初は草船で、水分を吸って長い航海に堪えないことがすぐに判る。続く竹筏でもスピードが出ず黒潮を超えることが難しい。そこで浮上するのが杉による丸木船。
当時の石器で太い杉を切ることすら既に驚異で、作った丸木舟も試行錯誤の末に安定したものができる。後は乗員5人の操縦技術と知見が見せ場となる。
この作品で一番面白いのは、一時期舟が逆走し始めることについて海部教授が彼らが方向に迷った結果としたのに対し、ナヴィゲーターも兼ねる最後尾の女性が “与那国島が発見できないかと意図的に方向を変えた” と告白するところ。何が面白いかと言えば、時空的に異なるスピーチを繋げて見せる映像作品ならではの効果が見られるからである。
それ以外映画的に面白いところはないが、5人は二日近くかけて与那国島へ辿り着くわけで、それは映画的にどうのこうの以前の感動性がある。
当時は陸続きだったのではないか、海流の関係で偶然に琉球の島々に辿り着いたのではないか、という疑問は映画の中で明確に否定されている。
五輪開幕。五輪と言えば、僕がすぐに思い出すのが何故かボートとカヌーだ。子供の頃に五輪でボートとカヌーなる競技を見たことが結婚印象深かったからかもしれない。それ以来普段見られない競技が見られるのが五輪の最大の意義と考えている。この企画にもカヌー関係者が参加していたと思う。
2020年日本映画 監督・門田修
ネタバレあり
観たい映画がなかなか出てこず、かと言って古い映画ばかりや再鑑賞映画ばかりでは何であり、かつ短い作品を探していたら、プライムビデオでこんなドキュメンタリーに出くわした。元来文化人類学的なものには興味があるので、余り躊躇なく観ることにした。
何年か前に石器時代の舟で航海するも失敗という話を報道番組だかで聞いた記憶があるが、多分この企画の途中での話だった模様。
海部陽介という学者指導による国立科学博物館の企画で、沖縄各地で人骨が発見されている3万年前のホモ・サピエンスがいかに台湾から琉球の島々へ渡ったかを調べるのである。現代人が失敗することは当時の人間も失敗した筈で、従って本作に出て来る数々の失敗は非常に意義のある失敗であるということが理解できると思う。
当時の技術では海流(黒潮)の関係で九州から南下というルートは考えにくいらしく、台湾から与那国島に行くルートで検証するのである。この企画で一番肝要なのはどんな舟で向かったかということである。
最初は草船で、水分を吸って長い航海に堪えないことがすぐに判る。続く竹筏でもスピードが出ず黒潮を超えることが難しい。そこで浮上するのが杉による丸木船。
当時の石器で太い杉を切ることすら既に驚異で、作った丸木舟も試行錯誤の末に安定したものができる。後は乗員5人の操縦技術と知見が見せ場となる。
この作品で一番面白いのは、一時期舟が逆走し始めることについて海部教授が彼らが方向に迷った結果としたのに対し、ナヴィゲーターも兼ねる最後尾の女性が “与那国島が発見できないかと意図的に方向を変えた” と告白するところ。何が面白いかと言えば、時空的に異なるスピーチを繋げて見せる映像作品ならではの効果が見られるからである。
それ以外映画的に面白いところはないが、5人は二日近くかけて与那国島へ辿り着くわけで、それは映画的にどうのこうの以前の感動性がある。
当時は陸続きだったのではないか、海流の関係で偶然に琉球の島々に辿り着いたのではないか、という疑問は映画の中で明確に否定されている。
五輪開幕。五輪と言えば、僕がすぐに思い出すのが何故かボートとカヌーだ。子供の頃に五輪でボートとカヌーなる競技を見たことが結婚印象深かったからかもしれない。それ以来普段見られない競技が見られるのが五輪の最大の意義と考えている。この企画にもカヌー関係者が参加していたと思う。
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