映画評「テノール! 人生はハーモニー」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年フランス映画 監督クロード・ジディ・ジュニオール
ネタバレあり

コメディーの監督として知られるクロード・ジディの息子の監督作品。

ライバル・グループとの争いの一環でラップ・バトルに奮闘しているアラブ系フリーターのアントワーヌ(モハメット・メルキル)が、スシを配達した音楽学校で生意気金持坊ちゃんを愚弄する為に披露した声楽を真似た美声が、そこで声楽を指導している初老の女教師マリー(ミシェル・ラロック)に注目され、スシを頼んでまで彼を教授したいと思った彼女の熱意に応えて、懸命に勉強する。

サクセス・ストーリーとして型通りで新味を大いに欠く反面、彼の立場が少々複雑で、敵対するグループとストリートファイティングやラップ・バトルをしなければらならない兄弟を含むグループとのしがらみと声楽への興味との間でもがき苦しみながら学んでいくというところに物語として面白味がある。
 ただ、女教師の “ソウルに行く” と病気の治療との関係が解りにくかったり、兄弟やグループとのしがらみ具合がピンと来なかったりするのは、作劇的に弱い。

ストリートファイトで服役することになった長男(?)が、母親に服役していることを知られてはなるまいと、日本に出張中と偽装する為に個室に富士山や金閣寺のポスターを張ってその前でTV電話をするとのは、父親譲りのお笑いと言うべし。

パリ五輪の新たに採用された競技ブレイキンはラップ・バトルのダンス版みたいな感じ。しかし、大体において採点競技は余り好きではない。ブレイキンの決勝を見てみたが、どっちが優っているのかとんと解らず、初心者には面白味が感じられなかった。東京五輪から採用されたスポーツ・クライミングが思った以上に面白い。複合しかないので小柄な森選手はメダルを逃したが、単独でリードなる種目があれば、金メダル間違いなしなのだった。

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