映画評「美しき争ひ」
☆☆★(5点/10点満点中)
1938年フランス映画 監督レオニード・モギー
ネタバレあり
日本でも大評判を呼んだ「格子なき牢獄」(1937年)のレオニード・モギー監督が、同作に主演したコリンヌ・リュシェールとアニー・デュコーを起用して作り上げたメロドラマ。
姉カトリーヌ(アニー)が、その夫の働く博物館に駆けつけた妹クレール(コリンヌ)を撃って負傷させるという事件が起きる。それは何故か、という序盤のミステリー的な見せ方はなかなか興味をそそる。
事件を受けて捜査を始めた予審判事に対して加害者も被害者も真実らしきことを何も語らないので、彼は大弱り。
そこへ、新聞で記事を読んで事件を知った、二人の知人であるアルプス山麓の旅館の女将(マルゲリート・ピエリ―)が現れ、カトリーヌが異様な反応をしたことから、予審判事が女将から事情を聞き出し、それを知ったクレールが姉の夫(レイモン・ルーロー)を交えて真相を語り始める。
ここからこの映画は所謂母もののヴァリエーションになり、それなりに胸を打つものがあるが、同時代的には母ものが相当作られていたので、前出「格子なき牢獄」で青少年のアイドルになったコリンヌのファンや映画批評家はかなりがっかりしたことだろう。僕はかかる人情ものは必ずしも嫌いではないので、そこそこ楽しんだが、一般論として余りお薦めは致しかねる。
クレールの悲劇は、最初に恋に落ちた相手ジェラール(クロード・ドーファン)がジゴロであったということ。結局妊娠した彼の子供を、子供の出来ない姉の為に生んでその息子ということにして全員が幸福に満たされるが、再び現れたジェラールの為に再び暗転するという次第。
そして、ヒロインが姉一家の幸福と母性本能の狭間で苦しむのは正に母ものの王道的な流れ。主題ではないが、厳しく男性が批判される映画である。
コリンヌ・リュシェールご本人も悲劇的な人生を歩む。不倫だの離婚だのを経、終戦後対独協力者として逮捕され、釈放された後結核で29才の生涯を閉じる。
1938年フランス映画 監督レオニード・モギー
ネタバレあり
日本でも大評判を呼んだ「格子なき牢獄」(1937年)のレオニード・モギー監督が、同作に主演したコリンヌ・リュシェールとアニー・デュコーを起用して作り上げたメロドラマ。
姉カトリーヌ(アニー)が、その夫の働く博物館に駆けつけた妹クレール(コリンヌ)を撃って負傷させるという事件が起きる。それは何故か、という序盤のミステリー的な見せ方はなかなか興味をそそる。
事件を受けて捜査を始めた予審判事に対して加害者も被害者も真実らしきことを何も語らないので、彼は大弱り。
そこへ、新聞で記事を読んで事件を知った、二人の知人であるアルプス山麓の旅館の女将(マルゲリート・ピエリ―)が現れ、カトリーヌが異様な反応をしたことから、予審判事が女将から事情を聞き出し、それを知ったクレールが姉の夫(レイモン・ルーロー)を交えて真相を語り始める。
ここからこの映画は所謂母もののヴァリエーションになり、それなりに胸を打つものがあるが、同時代的には母ものが相当作られていたので、前出「格子なき牢獄」で青少年のアイドルになったコリンヌのファンや映画批評家はかなりがっかりしたことだろう。僕はかかる人情ものは必ずしも嫌いではないので、そこそこ楽しんだが、一般論として余りお薦めは致しかねる。
クレールの悲劇は、最初に恋に落ちた相手ジェラール(クロード・ドーファン)がジゴロであったということ。結局妊娠した彼の子供を、子供の出来ない姉の為に生んでその息子ということにして全員が幸福に満たされるが、再び現れたジェラールの為に再び暗転するという次第。
そして、ヒロインが姉一家の幸福と母性本能の狭間で苦しむのは正に母ものの王道的な流れ。主題ではないが、厳しく男性が批判される映画である。
コリンヌ・リュシェールご本人も悲劇的な人生を歩む。不倫だの離婚だのを経、終戦後対独協力者として逮捕され、釈放された後結核で29才の生涯を閉じる。
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