映画評「ダンサー イン Paris」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年フランス=ベルギー=オランダ合作映画 監督セドリック・クラピッシュ
ネタバレあり

デジタル時代のフランソワ・トリュフォー(アントワーヌ・ドワネルものの若い時代のものを考えて)という綽名を付けたセドリック・クラピッシュの青春映画である。

パリ・オペラ座でエトワール(最高位)を目指すバレリーナのエリーズ(マリオン・バルボー)が足首を捻挫する。医師に暫く無理は禁物と言われてもう踊れなくなるかもしれないと落ち込む中、先にバレエを辞めたサブリナ(スエイラ・ラクーブ)に誘われ、彼女の恋人(ビル・マルマイ)のブルターニュでの出張料理に付き合う。
 そこの民宿へホフェッシュ・フェクター(本人)率いるコンテンポラリー・ダンス(モダン・ダンスの発展形)のグループが訪れ、彼らと溶け合ううちにクラシック・バレエほど足首への負担が重くないその世界に身を投じることを決めていく。

ヒロインが老若男女に色々と影響され、心身ともに再生していく様子を描くお話で、その中には民宿経営の老婦人(ミュリエル・ロバン)や、母の病死以後自分を愛してくれないと不満をぶつける当の父親(ドニ・ポダリダス)も含まれる。この父親は日本の親父のようなタイプで、口数が少ない。そんな彼が娘のことを真に思い、娘のバレエへの傾倒を理解する気持ちをおぼろげに示すうちにエリーズ自身もどんどん前向きになっていくのである。世代的にこの不器用そうな父親に非常に近い僕はこの部分に結構ジーンとしたデス。

将来への希望を失いかけた若者が再起・再生するお話としては相当型通り。

その代わり、クラシック・バレエとコンテンポラリー・ダンスの見せ方が非常に良い。序盤にクラシック・バレエを置き、最後にコンテンポラリー・ダンスを対置する。そのどちらもすこぶる美しくダイナミックなスペクタクル。
 対置と言えば、エンド・ロールで前半にクラシック音楽を、後半に現在的な音楽を流し、バレリーナがコンテンポラリー・ダンスを踊るというハイブリッドぶりも楽しい。

五輪の最中、合間を縫って気分的にぴったりの本作を観た。文字通り五輪三昧だったので、なかなか大変でしたよ。さて、3年前はパラリンピックも結構観たが、恐らく今年は放送が限られダイジェストになると予想されるので、観るも観ないもないのではないか。

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