映画評「リュミエール!」
☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
2016年フランス映画 監督ティエリー・フレモー
ネタバレあり
映画館で公開できるタイプの映画シネマトグラフを発明したオーギュストとルイのリュミエール兄弟の作品が108編も(全編50秒なのでノーカットで)観られる貴重な作品である。「映画はアリスから始まった」と共に保存版を作らねばなるまい。
アリス・ギイは彼女がドキュメンタリーではない劇映画を初めて作ったと主張するが、この映画を観るとそれは必ずしも正確ではないという気がする。
この映画によれば、ドキュメンタリーと思われたリュミエールの作品にもそれなりの演出があり、 世界初の映画とされる「工場の出口」(1895年)も “スタート” の声を共に門が開けられ、リュミエール工場の従業員が出てくる。 “スタート” は門を開ける合図で、 従業員はいつも通り帰宅の為に外に出ただけかもしれないが、一種の演出が入っている。
有名な「ラ・シオタ駅への列車の到着」に写る人々の中に兄弟の家族が参加していると本作編集者ティエリー・フレモーは述べている。ドラマではないにしても純粋な記録でもない。
これも有名な「水をかけられた散水夫」(1895年)はプロットの明確なコメディーで、これが最初の劇映画というのが定説らしい。
前進撮影、横移動撮影、バルーンを使った俯瞰撮影なども早々に試みているが、エッフェル塔のエレベーターでの固定カメラも一種の移動撮影だと思わされた。
しかるに、そうした技術以上に、フレモーが時々言及するように、リュミエール兄弟やアレクサンドル・プロミオら撮影者の構図への意識の高さが印象に残る。先行芸術である絵画や写真を意識しないわけには行かなったのだ。
☆☆☆☆★は勿論リュミエールへの賞賛です。
2016年フランス映画 監督ティエリー・フレモー
ネタバレあり
映画館で公開できるタイプの映画シネマトグラフを発明したオーギュストとルイのリュミエール兄弟の作品が108編も(全編50秒なのでノーカットで)観られる貴重な作品である。「映画はアリスから始まった」と共に保存版を作らねばなるまい。
アリス・ギイは彼女がドキュメンタリーではない劇映画を初めて作ったと主張するが、この映画を観るとそれは必ずしも正確ではないという気がする。
この映画によれば、ドキュメンタリーと思われたリュミエールの作品にもそれなりの演出があり、 世界初の映画とされる「工場の出口」(1895年)も “スタート” の声を共に門が開けられ、リュミエール工場の従業員が出てくる。 “スタート” は門を開ける合図で、 従業員はいつも通り帰宅の為に外に出ただけかもしれないが、一種の演出が入っている。
有名な「ラ・シオタ駅への列車の到着」に写る人々の中に兄弟の家族が参加していると本作編集者ティエリー・フレモーは述べている。ドラマではないにしても純粋な記録でもない。
これも有名な「水をかけられた散水夫」(1895年)はプロットの明確なコメディーで、これが最初の劇映画というのが定説らしい。
前進撮影、横移動撮影、バルーンを使った俯瞰撮影なども早々に試みているが、エッフェル塔のエレベーターでの固定カメラも一種の移動撮影だと思わされた。
しかるに、そうした技術以上に、フレモーが時々言及するように、リュミエール兄弟やアレクサンドル・プロミオら撮影者の構図への意識の高さが印象に残る。先行芸術である絵画や写真を意識しないわけには行かなったのだ。
☆☆☆☆★は勿論リュミエールへの賞賛です。
この記事へのコメント
コメディを狙ったヤラセではないんでしょうが、「アルペン狩猟隊」?
アルペン猟兵? とバレリーナの踊りが面白かったです。
先日アリス・ギリのDVDをGETしてきましたので視聴後ご報告しますね。
有名な「列車の到着」で画面奥から迫ってくる列車に当時の観客が逃げ出したというエピソードも面白かったです。
「映画はアリスから始まった」も面白そうなので今度観てみます。
私はまだまだ映画修業中で、オカピーさんや双葉十三郎先生を参考にしながら、いろいろ観ています。
今の目標は双葉先生の採点☆☆☆☆(80点)以上の作品を全部観ることですが、現在の達成率は七割くらいです。
戦前の映画は現在では観られない作品も多いので全制覇は無理ですが、現状観られるものだけでも全部観たいです。
ここ最近のPrime Videoは、古い映画が充実していて、私にとってなかなか宝の山になりつつあります。
最近観たお気に入りは「カビリア」(1914)、「ヴァージニアン」(1929)、「砂漠の生霊」(1930)。
特に「カビリア」は、D・W・グリフィス監督「イントレランス」に影響を与えたと言われる大作ローマ史劇で、見応え十分でした。
(現在観られる修復版は二時間ちょっとですが、元々は五時間の超大作だったようです。)
>「アルペン狩猟隊」?
>アルペン猟兵? とバレリーナの踊りが面白かったです。
アルプス猟歩隊が正しいようですよ。変な練習模様ですよね^^
「バレリーナ」は、コメントも面白かったです。
>先日アリス・ギリのDVDをGETしてきましたので視聴後ご報告しますね。
よろしくどうぞ^^
初めまして、だったでしょうか?
>古い映画に関心のある私には非常に興味深い作品でした
いやあ、頼もしい方がいらっしゃいました!
>オカピーさんや双葉十三郎先生を参考にしながら、いろいろ観ています。
双葉先生と並べられては、恐れ多いです。
しかし、有難うございます。
>今の目標は双葉先生の採点☆☆☆☆(80点)以上の作品を全部観ることですが、現在の達成率は七割くらいです。
>戦前の映画は現在では観られない作品も多いので全制覇は無理ですが、現状観られるものだけでも全部観たいです。
戦後の☆☆☆☆以上は大体観ましたが、仰るように戦前のものは難しい。
全く見られる可能性のないものも多いですので、個人的にも楽しみは減っていたところですが・・・
>ここ最近のPrime Videoは、古い映画が充実していて
そういう感じになってきましたね!
>最近観たお気に入りは「カビリア」(1914)、「ヴァージニアン」(1929)、「砂漠の生霊」(1930)。
おおっ!
「カビリア」は前世紀NHK-BSが頑張っていた頃に観ました。当然現在残るバージョンでしたが、見事なスペクタクルでしたねえ。
「ヴァージニアン」「砂漠の生霊」は未鑑賞。これがあるのは凄い。驚きましたねえ。今かなりバタバタしているので、1カ月以内のうちに観ましょう。
僕も古い映画を取り上げますので、是非またコメントをお願い致します。
はじめましてと見せかけて、実は7月の読書録でちょっとだけコメントしたので、今回が二度目ですね。
あらためまして、今後ともよろしくお願いします!
私は未鑑賞ですが、Prime Videoでこれから観る予定の戦前の映画としては、これらも見つかりました。
「南風」
「モヒカン族の最後」
「失はれた地平線」
「素晴らしき休日」
バタバタしている中、追い打ちをかけるようで申し訳ない(笑)ですけど、情報共有したほうがいいと思ったので載せておきます。
>実は7月の読書録でちょっとだけコメントしたので、今回が二度目ですね。
印象深いコメントでしたので、それ自体はよく憶えていますが、ハンドルネームは失念しておりました。どうもすみません。
>「南風」
>「モヒカン族の最後」
>「失はれた地平線」
>「素晴らしき休日」
後半の二つは鑑賞済みですが、前の二つは未見。「モヒカン族の最後」は伝説的なサイレント映画ですよねえ。これもあるとは!
益々忙しくなりそうです^^
情報、有難うございました。
今朝調べたところ、Prime Videoにある「モヒカン族の最後」は1936年版ですね。これはこれで価値があるかもしれませんが残念。
DVDが出ているので、いずれ出て来るかもしれません。出てこないようであればDVDを買っても良いですね。
ありゃ、そうでしたか!
それは私のとんだ早とちりでした。
同じタイトルでも、双葉先生の評価の高いほうの作品は現在では観られない、というパターンが今まで何回かありました。
「罪と罰」とか「ボー・ジェスト」とか。
「モヒカン族の最後」の場合、DVDがあるならば買ってでも観たいですね。
教えてくださり、どうもありがとうございます。
>双葉先生の評価の高いほうの作品は現在では観られない、というパターンが今まで何回かありました。
>「罪と罰」とか「ボー・ジェスト」とか。
僕もこの二作は探しましたよ。
映像源がないわけはないと思うのですがねえ。
やっとアリス・ギイのDVDをみました。こちらはおもちゃ映画ミュージアムさんが独自にピアノ伴奏と活弁をつけておられました。
youtubeでも10作品近くアップされていますが、全く音のないものもありますね。やはりサイレントは活弁と伴奏があったほうが楽しいですね。
>アリス・ギイは彼女がドキュメンタリーではない劇映画を初めて作ったと主張するが、この映画を観るとそれは必ずしも正確ではないという気がする。
アリス・ギイが初めてストーリーのあるものを作ったかどうかは私はまったく素人なので分かりませんが、この映画のリュミエールの映像に比べたら違いは明らかでした。
昭和の吉本新喜劇レベルの起草転結のあるストーリー性はありましたよ。 リュミエールは屋外で色んな面白いものを構図なんかも近代絵画を参考にしたような遠近感をだしていて、今に通じるものがあるのに比べるとアリスのはほとんどが室内撮影なので画面が平面的で絵面は昔風かもしれません。
でもアリスさんは発想がなかなか面白いです。
youtubeで見られる 「フェミニズムの結果? 成果?」は解説なしでも十分面白さが伝わりましたよ。
>やはりサイレントは活弁と伴奏があったほうが楽しいですね。
そう思いますね。
僕のようにイマジネーションの乏しい人間には余計です。
>アリス・ギイが初めてストーリーのあるものを作ったかどうかは私はまったく素人なので分かりませんが、
リュミエール兄弟の方は、演出のあるドキュメンタリーの発展形という印象が強いです。彼らの作品は50秒しかないので、起承転結まで持って行くことが出来なかったんですね。
アリス・ギイのデビュー作「キャベツ畑の妖精」も50秒なので起承転結はないですが、ファンタジーで、定義にもよりますが、“劇映画”という感じがします。
>youtubeで見られる 「フェミニズムの結果? 成果?」は解説なしでも十分面白さが伝わりましたよ。
僕が見たのがそれなのか解りませんが、50秒時代のものと違って、結構長かったですね。所謂劇映画らしくなっていました。