映画評「ロスト・フライト」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2023年イギリス=アメリカ合作映画 監督ジャン=フランソワ・リシェ
ネタバレあり

恐らく最初の紹介が変だったものだから、世間ではジェラド・バトラーで定着したが、元の綴り Gerard を考えて、 僕はずっとジェラドと言っている。 配給会社が欧米にある Gerald と間違えて "l" のように書いてしまったのだろう。ラテン系やスラブ系なら今のままで良いが、彼はアングロサクソン系である。

そのバトラーが機長を務めるLCCの飛行機が12人の乗客を乗せてシンガポールから東京に向けて、燃料を節約したい上司の指令により、悪天候の中を飛び立つ。案の定飛行機は落雷に遭って電気電子系統が全滅、フィリピンの小島に不時着する。

ここまで航空パニックだが、バトラーが余りに有能なので鑑賞者としては大したスリルを感じる間もなく次のシークエンスに移る。

飛行機には護送中の殺人犯マイク・コルターが乗っているが、乱気流の衝撃で刑事が死亡する。着陸後バトラーはこの殺人犯を連れて連絡手段を求めて島の探索に出る。その最中に機長は殺人犯が帰還兵であることを知る。
 ここで観客も、コルターがサスペンス要員ではなく、味方として活躍すると確信する。

この島は過激な反政府ゲリラが占拠してい乗客を拉致、それを知ったバトラーとコルターのコンビが、乗客奪還に奮闘する。
 そして、LCCが急遽集めた緊急救援部隊の活躍もあり、乗客共々戻った機長は電気系統を回復させていた飛行機を飛び立たせるが、当然機体がまともな状態であるわけもなく墜落のピンチを迎え、再び航空パニックになる。

という三部構成のアクション映画で、悪く言えば淡白、良く言えば簡潔でスピーディー。登場人物の性格描写や背景を最小限に留めているのである。
 ジャンルを問わず人間模様や人となりを求める人には不評だろうが、性格描写は展開を遅くするのは間違いないので、ジャンル映画においては適当な量であれば歓迎すべきである。 

実際、元軍人の殺人犯の殺人については全く不明のままであり、戦闘中にゲリラの車からちゃっかり大金を戴いて逃走しながら応戦した彼のその後が全く解らないという処理もある意味アンチ大衆的であり、面白いではないか。

どうしても観なければならないという程ではないが、時間つぶし以上にはなる。

邦題における “ロスト” も小ブームなのかな?

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