映画評「サントメール ある被告」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年フランス映画 監督アリス・ディオップ
ネタバレあり

セネガル系フランス女性監督アリス・ディオップが作った長編劇映画第1作とのこと。

若い女性作家カイジ・カガメが、15か月の娘を殺した罪で訴えられたセネガル出身の女性グスラジ・マランダの審議の傍聴人となる。夫への怒りの余り息子二人を殺したギリシャの王女メディアと絡めて作品(小説かノンフィクションか不明)を書くつもりである。
 カイジは現在妊娠4ヶ月で、狂気に苛まれた老母がいる。グスラジもどうも娘殺しをした時は孤独により狂気を帯びていたようである。

というお話で、シーンやシークエンスの前後の脈絡が解りにくくて困った(次のシークエンスを見るうち前のシークエンスが解るということ多し)が、作者の言いたいことは最後の弁護士オドリア・プティに言葉から明らかに解る。母親への讃歌である。

5名の母親が出て来る。メディアを含めて(終盤パゾリーニの映画「王女メディア」が出てくる。ここ以降映画は解りやすくなった気がする)狂気に陥った母親が3名、そうでない母が2名(グスラジの母親と妊娠中のヒロイン)。
 ヒロインは自分の母親の狂気とグスラジの狂気を重ねて恐れるのだが、母親を讃える弁護士の言葉が彼女を救うであろう。そして、必要なのはパートナーの支援である。

長回しの固定ショットが多くて冗長感が強く、シークエンスの繋ぎに一人合点なところがあるが、凡作ではない。以上2点を改善すれば、この監督は傑作を作るのではないか。

女系天皇否定派は男系によってのみ遺伝が続くと考えているようだが、インチキである。実はミトコンドリアDNAは女性のみに伝わる。安保でもそうだが、天皇問題でも保守とされる人は保守ではないよなあ。女性天皇もしくは女系天皇を認めるくらいなら天皇制はなくなったほうが良いとさえ言う人がいる。本末天皇もとい本末転倒ではないの?

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