映画評「プロヴァンスの休日」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2014年フランス映画 監督ローズ・ボッシュ
ネタバレあり

ブルゴーニュはワイン造りが盛んなようで「ブルゴーニュで会いましょう」「おかえり、ブルゴーニュへ」というフランス映画が日本に輸入されているが、そのブルゴーニュよりさらに南でマルセイユのあるプロヴァンス地方はオリーヴ作りが盛んなのか? 

日本でも人気のあるジャン・レノが主演しているものの、僕の定義では日本劇場未公開作となる。最近は余り意味がないわけだが、例えば、映画雑誌でベスト10選出などする時には結構重要だったりする。

夏。主人公の60代オリーヴ農家ジャン・レノは、細君アンナ・ガリエナが三人も孫を連れて来たのにびっくり。今時の若者風情ぷんぷんの孫たちが気に入らないが、末っ子のルーカス・ペリシエがまだ思春期前かつ難聴者でそうした風俗に毒されていないので可愛がる。
 上の孫ユゴー・デシューのSNS登録の結果、半世紀前からの悪友たちが「イージー・ライダー」よろしくやって来る。中にはウッドストックに出かけた者もい、全員が麻薬体験をしていたと昔話を語る。
 折しも開催中の祭に出かけた孫娘クロエ・ジュアネは、ピザ屋をやりかつ土地特有の闘牛の参加者でもある二枚目トム・リーブと昵懇になるが、スマホ嫌いで保守的なレノ爺が彼女の刺激的な衣装や軽率な行動に腹を立てると、彼女は村を飛び出す。

観客として娘の気持ちも解らないではないが、結果的にじいじの心配が正解と判明する。
 バイク仲間たちの情報により相手の男が麻薬密売をしていることを知り、スマホで(!)デシューが突き止めた二人の居場所へバイクを飛ばす。
 かくして、殆どデウス・エクス・マキナ的に祖父は孫娘の仲良くなり、休みが終わって子供を空港に迎えに来た娘との確執も解くのである。

この類のフランス映画は、日本のご当地映画に近いところがあるのかもしれないが、地方色を打ち出しつつ、宣伝めいたムードがないところに好感を覚える。

お話全体かなり型通りであるのに加え、105分という比較的短めの尺が災いしたか、終盤の展開ぶりは些か雑にすぎ余り褒められないが、都会を舞台にした面倒臭い系のドラマを観るよりはずっと良い。

ジャン・レノの立場から語られた物語である。
 それはウッドストックのあった1969年を中心にした音楽の選曲から伺われる。「サウンド・オブ・サイレンス」「輝く星座」「ハイウェイ・スター」等、半世紀前のフランス人はこんなに英語圏の音楽に傾倒していたかと思われるほどだ。最後に21世紀のオルタナティヴ・ロックの人気者コールドプレイがかかるのも却ってそれを強調するような気もする。

丁度音楽ブログ【オカピーの採点表】で5回に渡ってサイモン&ガーファンクルを取り上げている最中。開巻直後「サウンド・オブ・サイレンス」が出て来て、こういうこともあるかと思いましたな。

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