映画評「ゴールデンカムイ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・久保茂明
ネタバレあり
野田サトルなる漫画家の同名コミックの映画化。大ベストセラーらしく、既にTVアニメ版が作られている。 Wikipedia によれば第一部の第4巻くらいまでのお話で、以降はWOWOWにより何シリーズかとして随時放映されていくらしい。そちらはとても観ている暇はなさそうだ。
わが曾祖父も参加した日露戦争中に“不死身の杉元”と呼ばれた元兵卒(山崎賢人)が、戦争が終結した後渡った北海道山中で知り合った男に、アイヌの黄金を略奪した後網走監獄に収監された囚人が24人の仲間の体にアイヌの黄金の在り処を刺青の形で記して脱走させた件を教えられ、語り手自身がその一人であると知ると、彼がクマに襲われて死ぬやその皮を剝ぐ。
山をうろうろするうちにアイヌの少女アシリバ(山田杏奈)と知り合い、サバイバルの知恵を持っている彼女と協力して、クマや同じように囚人を探している軍人たちから身を護っていく。
友人の未亡人(高畑充希)の目を治す資金の為に黄金を得たい杉元は、黄金を得ることが囚人に殺された父の仇となる(父殺しの囚人は黄金の在り処が解った途端に監獄で殺される運命)と彼女を諭すうち、脱獄王と称する仲間の一人白石由竹(矢本悠馬)を捕まえ、情報を得る。
彼は本格的捜査の前に一旦彼女のコタン(村)に寄った後、彼女に黙って一人小樽で捜査を続けるうちに、北海道征服という大きな野望を持ち黄金を探している第七師団鶴見中尉(玉木宏)の配下の双子に捕えられ、拷問に遭う。アシリパが白石を脅迫して彼を営舎から逃がす算段を取る。
お話は日本版ウエスタンの趣きで、黄金(の在り処を記す人皮)争奪という荒唐無稽な部分はどちらかと言えばマカロニ・ウェスタン風だが、アイヌの村における描写はアメリカの「折れた矢」(1950年)を思い出させたりもする。
前半は雪の山中のサバイバル、後半は小樽での格闘系アクション、といった具合にアクションが多彩なのは良い。
同じく山崎賢人が主演する「キングダム」シリーズとアクションの捉え方に似た感じがあり、スローや細切れでの誤魔化し的なショットはやはり気に入らないし、CGやワイヤーアクションに頼った部分があるとは言え、一通り楽しめる。本作は「るろうに剣心」には及ばないものの、邦画のアクション描写はあの映画以降俄然上手になった。
ワグマや白狼(アシリパの守護)の質感も相当リアル。アニマトロニクスかと思ったくらい。
若い人にはこういう振幅が受けるのだろうが、コミカルさはいかにも過剰。ユーモアとギャグの違いが分からない人が増えて来たことの弊害である。昔の韓国映画みたいに前半と後半がまるで違って二つの作品を観ているようというわけでもないので、大きな難点とは言えないながら品がない。
40年前に挫折した蝦夷共和国再建を目指し、実は死んでいなかった(という設定の)土方歳三(舘ひろし)が出て来るも、大きく絡む前に終わってしまう。続きはTVでねということで、面白くなっていきそうだが、ちょっと時間が許さない。
WOWOWはこのシリーズで契約者が結構増えるかもしれない。僕にはWOWOWは年々魅力的でなくなっているのだが。3つのチャンネルがあるのだから、オールド・ファンの為に昔の映画に特化する場所があっても良いではないか。1990年代など昔のうちに入らないからね。
2024年日本映画 監督・久保茂明
ネタバレあり
野田サトルなる漫画家の同名コミックの映画化。大ベストセラーらしく、既にTVアニメ版が作られている。 Wikipedia によれば第一部の第4巻くらいまでのお話で、以降はWOWOWにより何シリーズかとして随時放映されていくらしい。そちらはとても観ている暇はなさそうだ。
わが曾祖父も参加した日露戦争中に“不死身の杉元”と呼ばれた元兵卒(山崎賢人)が、戦争が終結した後渡った北海道山中で知り合った男に、アイヌの黄金を略奪した後網走監獄に収監された囚人が24人の仲間の体にアイヌの黄金の在り処を刺青の形で記して脱走させた件を教えられ、語り手自身がその一人であると知ると、彼がクマに襲われて死ぬやその皮を剝ぐ。
山をうろうろするうちにアイヌの少女アシリバ(山田杏奈)と知り合い、サバイバルの知恵を持っている彼女と協力して、クマや同じように囚人を探している軍人たちから身を護っていく。
友人の未亡人(高畑充希)の目を治す資金の為に黄金を得たい杉元は、黄金を得ることが囚人に殺された父の仇となる(父殺しの囚人は黄金の在り処が解った途端に監獄で殺される運命)と彼女を諭すうち、脱獄王と称する仲間の一人白石由竹(矢本悠馬)を捕まえ、情報を得る。
彼は本格的捜査の前に一旦彼女のコタン(村)に寄った後、彼女に黙って一人小樽で捜査を続けるうちに、北海道征服という大きな野望を持ち黄金を探している第七師団鶴見中尉(玉木宏)の配下の双子に捕えられ、拷問に遭う。アシリパが白石を脅迫して彼を営舎から逃がす算段を取る。
お話は日本版ウエスタンの趣きで、黄金(の在り処を記す人皮)争奪という荒唐無稽な部分はどちらかと言えばマカロニ・ウェスタン風だが、アイヌの村における描写はアメリカの「折れた矢」(1950年)を思い出させたりもする。
前半は雪の山中のサバイバル、後半は小樽での格闘系アクション、といった具合にアクションが多彩なのは良い。
同じく山崎賢人が主演する「キングダム」シリーズとアクションの捉え方に似た感じがあり、スローや細切れでの誤魔化し的なショットはやはり気に入らないし、CGやワイヤーアクションに頼った部分があるとは言え、一通り楽しめる。本作は「るろうに剣心」には及ばないものの、邦画のアクション描写はあの映画以降俄然上手になった。
ワグマや白狼(アシリパの守護)の質感も相当リアル。アニマトロニクスかと思ったくらい。
若い人にはこういう振幅が受けるのだろうが、コミカルさはいかにも過剰。ユーモアとギャグの違いが分からない人が増えて来たことの弊害である。昔の韓国映画みたいに前半と後半がまるで違って二つの作品を観ているようというわけでもないので、大きな難点とは言えないながら品がない。
40年前に挫折した蝦夷共和国再建を目指し、実は死んでいなかった(という設定の)土方歳三(舘ひろし)が出て来るも、大きく絡む前に終わってしまう。続きはTVでねということで、面白くなっていきそうだが、ちょっと時間が許さない。
WOWOWはこのシリーズで契約者が結構増えるかもしれない。僕にはWOWOWは年々魅力的でなくなっているのだが。3つのチャンネルがあるのだから、オールド・ファンの為に昔の映画に特化する場所があっても良いではないか。1990年代など昔のうちに入らないからね。
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