映画評「アクアマン／失われた王国」

☆☆★（５点／１０点満点中）
２０２３年アメリカ映画　監督ジェームズ・ワン
ネタバレあり

正編（２０１８年）もアーサー王伝説のアトランティス版でロートルには大して面白くなかったが、続編はさらに大味で、日本の諸映画サイトでの平均点より、IMDbの５.６という評価（最高点１０と最低点１のほぼ中間点）のほうがぐっと実力に相応している。
　先日のマーヴェル映画「マダム・ウェブ」は設定上の理由もあってつまらなかったが、やはりＤＣエンタテインメントで面白い作品に出会うことは少ない。西洋人は概して日本人に比べて前作や権威に引きずられないように思う。言葉を変えれば、冷淡ということだ。

悪い要素のある異父弟オーム（パトリック・ウィルスン）を退けてアトランティスの王に就いたアーサー＝人間とのハーフ＝（ジェースン・モモア）が、海底世界の王国群がかつて閉じ込めた悪霊の力を利用してアトランティスを破壊しようとする人間ブラックマンタ（ヤーヤ・アブドゥル＝マティーン２世）の攻撃に対処しようと、自ら閉じ込めたオームを脱獄させて協力させるという無理筋の計画を実行する。

という冒険アクションで、ＣＧを最大限に利用して見せようという作品は、今更ながら、観ているうちに萎えて来る。

序盤ブラックマンタたちが海中で色々準備を進める部分は大昔の東宝特撮映画のようなムードがあってニヤニヤさせられるが、かたき同士であるはずの兄弟が手を組む辺りからどうも兄弟愛・家族愛の内容に傾いていく気配が濃厚に現れ、さらに萎える。ジャンル映画において、この手の要素はテンポを停滞させがちだからである。賑やかさでうまく誤魔化していて停滞感を余り感じさせないからまだ良いものの、年寄りには見え透いた作劇にすぎて感心できない。

観終えて空しくなってきた気分をエンディングで流れるお馴染み「ワイルドで行こう」（オリジナルを利用したサンプリングではありますが）で吹き払った。

監督はワン（勝った）という名前なのに余り成功した記憶がない。勝ったと言えば、逆転はしなかったものの昨日の総選挙で立憲民主党が久々に勝ったと言える状態ですかな。小選挙区制は極端な結果になりやすいし、（大政党では）党幹部に対するイエスマンを増やしがちなので早く止めるべきだが、今回の数字は丁度良い。日本はこれで面白くなってきた。問題はアメリカの選挙だ。世界の秩序を考えるとトランプが勝つと困る。日本にとってもマイナス材料ばかりだ。トランプと勝負できる政治家が日本にいるとも思えない。