映画評「笑いのカイブツ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・滝本憲吾
ネタバレあり

40年以上TVはスポーツ中継とニュースとクイズ番組くらいしか観ない。昔と違ってクイズ番組は芸能人が大勢参加し、少なからぬお笑い芸人の名前を知っているが、彼ら本来の芸は殆ど知らない。クイズ番組の中で見たくもない芸を無理矢理見せられるのでクイズ番組に出る芸人の芸は少し知っているが、コントはまず知らないと言って間違いない。映画以外のお笑いには興味がないのである。

本作はお笑いの構成作家ツチヤタカユキの自伝の映画化。ここに出て来るような番組があった(ある?)ことなど全く知らない。

TV番組の大喜利のネタなどを投稿するうちに名を上げた大阪の若者ツチヤタカユキ(岡山天音)が、上京してオードリーの若林正恭(映画ではベーコンズの西寺=仲野太賀)などのコントを創作するが、スタッフ連中には受けが悪い。人間嫌いでコミュニケーション能力を欠く為に大いに損をしているところもある。
 かくして失意のうちに大阪に戻ると、悪友ピンク(菅田将暉)や何故か自分を尊敬する女友達ミカコ(松本穂香)の、東京での実際を知らない上での発言が彼を追い詰める。

大体こんなお話で、彼の現実を告白、心情を吐露する場面では胸が苦しくなり、彼に対する元服役囚ピンクの言葉が胸を打つ。劇としてここがクライマックスであろう。

純文学作家が苦悩するのは通常のことのように思うのに対し、笑いを生むのに苦悩することに職業の皮肉を感じるのが、我々凡人の性だ。
 人間嫌いだったりコミュニケーション能力に難のある人間には、とかくこの世は住みにくい。彼ほど極端ではないにしても、僕もどちらかと言えば彼に近く、このドラマにある程度の普遍性を感じる。
 僕個人について言えばこの映画を観てお笑いが好きになることはないし、お笑いに興味があればもっと楽しめたかもしれない。趣味(好み)の如何を問わず、時間のある方におかれては観て損はないと思う。

コントは純粋に演者が作るものと思っていたが、そうではないケースもあるということが勉強になった。

純粋にクイズを楽しみたいムキには一番楽しい「東大王」が終わってしまった。自分の知識量を知り、頭を鍛えるには非常に良い番組だった。その代わり一時期低調だった「Qさま!!」の放映頻度が増えたのは歓迎している。 他のクイズ番組にさほど興味はなく、たまに見る程度。中高の同級生T君が一時編成局長をしていたフジテレビのクイズ番組は昔からできないことをこき下ろすのをお楽しみにする傾向があるので良くない。

この記事へのコメント

2024年11月04日 10:59
あのマンザイブーム(フジテレビ発)で、テレビで観られる笑いがダメになりましたね。リアルタイムではおもしろがって観ていたのですが、子供のころから好きだった大正テレビ寄席みたいな番組は消えて行って、あとはひなだんに若い芸人が並んでるようなものが多くなりました。
 テレビほとんど見なくなって時間が経つので、昔の記憶でしか書けないのですが。
オカピー
2024年11月04日 18:02
nesskoさん、こんにちは。

>あとはひなだんに若い芸人が並んでるようなものが多くなりました。

クイズ番組が典型ですね。
僕は、志村けんで出る前に「8時だヨ全員集合」を卒業した人間で、本当にお笑いには疎いのですが、未だに、この形式には何だかなあという気はしますね。