映画評「怪物の木こり」

☆☆★(5点/10点満点中)
2023年日本映画 監督・三池崇志
ネタバレあり

韓国映画が得意とするタイプのサイコ・スリラー。結論から言うと、【このミステリーがすごい!】大賞を受賞した倉井眉介の原作は面白そうだ。

事件の発端は半年前に観た韓国スリラー「The Witch 魔女」にかなり似ている。 あちらの超能力者をサイコパスに変えると大体同じである。

あちらは施術(能力開発)をされた子供が一人逃げ出し、ある期間が経過した後に事が動き出す。こちらは警察が発見したのが一人であって、実際には複数のサイコパス予備軍が逃げている。
 その一人・二宮彰(亀梨和也)は優秀な弁護士になっている。サイコパスと思われる人間が三人続けて殺され脳みそを抜かれるという事件を捜査中の警察、中でも優秀な美人プロファイラー戸城嵐子(菜々緒)は彼もそうした対象ではないかと睨み、不正な方法でカルテを調べて脳チップの存在に気付いて確証を得る。二宮は相当残忍な性向を示している。
 以前殺人事件を起こして見逃されたサイコパスの男・剣持(中村獅童)も被害者になりかねないと警備を固めるが、以前彼を上げた乾刑事(渋川清彦)と共に姿を消し、嵐子はこの流れに騙される。
 剣持は二宮弁護士の婚約者・荷見映美(吉岡里帆)を誘拐、弁護士をある廃墟に呼び寄せる。

余り詳細は言わない方が良いだろうが、終盤はかなり人情噺っぽい流れで推移する。僕は心優しい人間だから、こういう方が後味が良いと思う一方、スリラーとしてはなまなかになったという印象を受ける。

「The Witch 魔女」がダーク・サイエンス・ファンタジー的であったのに対し、 こちらはSF要素は殆どなく、捜査ものとしても一応格好がついている。が、品が良すぎて馬力が足りない。監督がヴァイオレンスがお得意の三池崇志だから、脚本と配役によってはもっと馬力のある作品にもできたかもしれないが、やはりメジャー級の役者を揃えると日本映画はこうなってしまう。

笑いのカイブツのきこり。怪物が続いてしまったよ。怪物と言えば、松坂世代の最後のプロ野球現役選手となっていた和田毅投手が引退しましたね。

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