映画評「懐しのアリゾナ」
☆☆★(5点/10点満点中)
1928年アメリカ映画 監督ラオール・ウォルシュ、アーヴィング・カミングズ
ネタバレあり
本年トーキー初期の西部劇をプライムビデオで観るのは3本目である。本作は、トーキー初期というより、トーキー西部劇第1作かもしれず、ちょっと妙な演出が見える。
強盗犯シスコ・キッド(ワーナー・バクスター)は今日も駅馬車を襲って金庫を奪い、床屋で綺麗にしているところへ、その賞金を狙っている軍曹ミッキー・ダン(エドマンド・ロウ)が現れる。両人が顔を合わせるのはこれが初めてて、相手の正体も知らず意気投合して別れる。
その際に再会を約したのが悲劇の始まりで、悪漢の恋人トニア・マリア(ドロシー・バージェス)はダン軍曹に懇ろになってしまい、彼の甘言に釣られて彼を売る計画を立てる。しかし、彼女の軍曹への手紙の存在を知ったシスコ・キッドは手紙を改竄し、使いの料理女に渡す。受け取った軍曹は二人が衣装を交換しているという偽の手紙を信じて、女装の人物を撃つ。倒れたのはトニア・マリアである。
1967年に「裏切りの荒野」という「カルメン」のマカロニ・ウェスタン版が作られたが、その原形みたいな「カルメン」の西部劇ヴァリエーションである。
この作品が面白くなるのは開巻から三分の二が過ぎたあたりからで、それまでは “じっと我慢の子” を強いられる。冗長という以上に、西部劇と思って観ている多くの観客が狙いを掴めないから、煮え切れないロマンスに終始する展開に退屈してしまうという次第。
冒頭で妙な演出と述べたのは、台詞をはっきりと言おうとさせていること。シスコ・キットのポルトガル出身という設定やトニア・マリアのメキシコ系という設定もあるのだろうが、ゆっくりはっきり大きな声で台詞を喋るのはやはりトーキー初期ならではのことと僕は疑っているのである。白人役の俳優陣はそれほど極端でもないが、アメリカ映画の平均よりははっきり喋っている気がする。
数カ月前に観たトーキー初期西部劇2本より約1年早い製作で、録音におけるハンディが現在の我々の想像より大きかったのだと思う。
アカデミー賞で5部門にノミネートされているものの、作品賞・脚本賞は同時代的にも過大評価だろう。実際に受賞に至ったワーナー・バクスターの演技にもややサイレントっぽい雰囲気が残ってい、現在の目には少々オーヴァーアクトに見える。
アリゾナと言えば、アメリカの大統領選は事前の予想ほど接戦にはならず、トランプが勝利した。トランプ支持者は非インテリが多いと言われるが、僕は彼らがブレグジットに賛成した英国民と同じような後悔をするのではないかと思っている。何故なら、彼らはインフレを抑えてほしいと思っているのに、トランプの掲げる政策はインフレを促進する可能性が高いからである。
1928年アメリカ映画 監督ラオール・ウォルシュ、アーヴィング・カミングズ
ネタバレあり
本年トーキー初期の西部劇をプライムビデオで観るのは3本目である。本作は、トーキー初期というより、トーキー西部劇第1作かもしれず、ちょっと妙な演出が見える。
強盗犯シスコ・キッド(ワーナー・バクスター)は今日も駅馬車を襲って金庫を奪い、床屋で綺麗にしているところへ、その賞金を狙っている軍曹ミッキー・ダン(エドマンド・ロウ)が現れる。両人が顔を合わせるのはこれが初めてて、相手の正体も知らず意気投合して別れる。
その際に再会を約したのが悲劇の始まりで、悪漢の恋人トニア・マリア(ドロシー・バージェス)はダン軍曹に懇ろになってしまい、彼の甘言に釣られて彼を売る計画を立てる。しかし、彼女の軍曹への手紙の存在を知ったシスコ・キッドは手紙を改竄し、使いの料理女に渡す。受け取った軍曹は二人が衣装を交換しているという偽の手紙を信じて、女装の人物を撃つ。倒れたのはトニア・マリアである。
1967年に「裏切りの荒野」という「カルメン」のマカロニ・ウェスタン版が作られたが、その原形みたいな「カルメン」の西部劇ヴァリエーションである。
この作品が面白くなるのは開巻から三分の二が過ぎたあたりからで、それまでは “じっと我慢の子” を強いられる。冗長という以上に、西部劇と思って観ている多くの観客が狙いを掴めないから、煮え切れないロマンスに終始する展開に退屈してしまうという次第。
冒頭で妙な演出と述べたのは、台詞をはっきりと言おうとさせていること。シスコ・キットのポルトガル出身という設定やトニア・マリアのメキシコ系という設定もあるのだろうが、ゆっくりはっきり大きな声で台詞を喋るのはやはりトーキー初期ならではのことと僕は疑っているのである。白人役の俳優陣はそれほど極端でもないが、アメリカ映画の平均よりははっきり喋っている気がする。
数カ月前に観たトーキー初期西部劇2本より約1年早い製作で、録音におけるハンディが現在の我々の想像より大きかったのだと思う。
アカデミー賞で5部門にノミネートされているものの、作品賞・脚本賞は同時代的にも過大評価だろう。実際に受賞に至ったワーナー・バクスターの演技にもややサイレントっぽい雰囲気が残ってい、現在の目には少々オーヴァーアクトに見える。
アリゾナと言えば、アメリカの大統領選は事前の予想ほど接戦にはならず、トランプが勝利した。トランプ支持者は非インテリが多いと言われるが、僕は彼らがブレグジットに賛成した英国民と同じような後悔をするのではないかと思っている。何故なら、彼らはインフレを抑えてほしいと思っているのに、トランプの掲げる政策はインフレを促進する可能性が高いからである。
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