映画評「出獄」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1948年アメリカ映画 監督ヘンリー・ハサウェイ
ネタバレあり

40歳前までなら観た映画の採点まで全て記憶できていたものだが、最近はわが脳もとんと衰えたもので、採点どころか観たかどうかも覚束ない。この間常連の方とそんな話をしたばかりと言うのに、観ていない筈と思った本作は観ておりました。IMDbに行ったら採点してあったということ。
 1990年代後半に初めてのパソコンを買い、 IMDb へ行きノートに記録されている作品を一挙に全て採点していったのだが、当時は日本映画などまだ載っていない作品も多く、かの「飢餓海峡」すらなかった。
 さて、本作はいつ頃観たものやら。これは何冊もあるノートを見れば解るが、余り意味がないので、省略。

終戦直後から暫く、事件やトピックがあってからさほど日を待たずに作られ(いわゆる際物ですな)、その現場などでロケした作品がセミ・ドキュメンタリーと称された。1948年に作られた本作もそれに入るらしい。

まず1932年シカゴで、初老の警官がポーランド人街の店で二人組の男に殺される。これで逮捕されたうちの一人が終始無実を訴えるリチャード・コンテで、最高裁まで争って結局99年の懲役刑が確定する。
 およそ11年後(1944年)、デスクのリー・ J ・コッブに命じられて、敏腕記者ジェームズ・スチュワートが冤罪を証明する証言をする人に5000ドルの懸賞金を出そうというコンテの母親に会うことになる。
 この時点で記者は冤罪説に懐疑的だが、コンテ本人に会い、その愚直な人柄を見、嘘発見器を受けても有罪を示す証拠を出さなかったことから、目撃者の女店主ベティ・ガードが偽証しているに違いないと推測、逮捕の直後に行われるはずの調書(厳密には弁解録取書だろう)が翌日になっていることから警察で色々調べ上げ、事件直後の写真に当たって、その偽証を証明しようとする。

現在の調査ものに近い作りで、主人公の記者が誰かに襲われるといったサスペンスはなく非常に地味な内容だが、48年製作として嘘発見器や今言うファックス(1944年ですぞ)が詳細に紹介されているのが実に興味深く見られる要因である。

ジミーが天才型ではない刑事のように地道に調査する様子も好もしい。最初は露骨に売名・売上優先タイプに見えるも、最後の演説など「スミス都へ行く」の主人公と重なって来てぐっと彼らしくなる。

当時のシカゴの様子もフォトジェニックに捉えられていてなかなか見事。

ヘイズ・コード最盛期の作品だから、冤罪を引き起こした官憲を悪く言い放しではない。

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