映画評「サイレントラブ」
☆☆(4点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・内田英治
ネタバレあり
内田英治という監督は極めて大衆的な映画の作り手で、幅はそれなりにあるが、余り感心したことがない。
横浜音楽大学で清掃などをしている青年作業員・山田涼介が、屋上から飛び降りようとするピアノ科の女学生・浜辺美波を助ける。彼女は交通事故で目と手を負傷した直後である。目はいずれ治ると見込まれる状態で、手には大きな問題はなさそうである。
十代の時の喧嘩で喉を刺されて発声できない山田君は、離れの音楽室を開いてやって美波ちゃんがピアノを弾くのを手伝ってやる。ピアノ科の学生と勘違いされた彼は、時に失意に沈む彼女を励ますつもりで、ピアノ科の坊ちゃん学生野村周平に頼んで代わりにピアノを弾かせる。ギャンブルで借金のある野村は1回5万円で引き受け、金が必要となった山田君は懸命に夜勤にまで手を出す。
ところが、野村が強請っていると勘違いした親友・吉村界人は、チンピラを雇って彼を襲わせるが、チンピラ一味が美波ちゃんまで拉致し、それを山田君がおいかける。
かくして一同が会したその結果、彼女が懸命に振った白杖が野村君を誤って重態に追い込み、前科のある山田君がその責任を負う。かくして彼は服役し、やがて目を回復させた彼女は野村君の支援で演奏会を開けるまでになる。野村は2年前から知っていた山田君の出所後の居場所を彼女に教え、遂に彼女は初めて恩人である彼を初めて目にする。
邦画ではアニメに比べて実写の青春映画はいけない、という現在僕の周辺にある定評を確認する結果となった。
どこから手を付けて良いか解らない程疑問が多いが、少なくとも映画的な嘘がうまく付けていない感が強く、いつでも彼女を警備しているように見える彼は一体いつ仕事をしているのかという点にまず首を傾げたくなる。
彼が山の喫茶店で野村が美波ちゃんにキスしようとしてるのを見てショックを受けるという流れもドラマツルギー的に変である。山田君は美波ちゃんに持っていたのは彼の言を信ずれば恋愛感情ではなかったはず。仮に恋愛感情も持っていたのであれば、前後でそれらしい様子を見せるべきで、それがない為に非常にぎこちない筋運びになっている。
ピアニストたるヒロインが労務者の手とピアニストの手を区別できないのも変だ。終盤 “いつからかそんな気がしていた” という趣旨の言葉を吐くも、それは手と関係のない空気感から覚えたものであろうし、ちょっとあり得ない。その意味で、その可能性をまるで考えなかったらしい主人公も主人公だ。
また、通奏低音である経済格差を示す要素として出してきたのは理解できるが、清掃員たちが盗撮カメラ設置の汚名を着せられてドタバタするエピソードは不要に近い。不要でないとしても、その後の展開を考えると、扱いが極めてまずい。
といった具合に、作り過ぎて瀬々敬久監督ご本人がやり過ぎたと認める「感染列島」(2009年)並みの粗い作劇ではないか。
主人公が喋らないロマンスでは、北野武監督「あの夏、いちばん静かな海」が第一の秀作。
辛島美登里の名曲「サイレント・イヴ」に似ている題名に騙されて観てしまいました。
2024年日本映画 監督・内田英治
ネタバレあり
内田英治という監督は極めて大衆的な映画の作り手で、幅はそれなりにあるが、余り感心したことがない。
横浜音楽大学で清掃などをしている青年作業員・山田涼介が、屋上から飛び降りようとするピアノ科の女学生・浜辺美波を助ける。彼女は交通事故で目と手を負傷した直後である。目はいずれ治ると見込まれる状態で、手には大きな問題はなさそうである。
十代の時の喧嘩で喉を刺されて発声できない山田君は、離れの音楽室を開いてやって美波ちゃんがピアノを弾くのを手伝ってやる。ピアノ科の学生と勘違いされた彼は、時に失意に沈む彼女を励ますつもりで、ピアノ科の坊ちゃん学生野村周平に頼んで代わりにピアノを弾かせる。ギャンブルで借金のある野村は1回5万円で引き受け、金が必要となった山田君は懸命に夜勤にまで手を出す。
ところが、野村が強請っていると勘違いした親友・吉村界人は、チンピラを雇って彼を襲わせるが、チンピラ一味が美波ちゃんまで拉致し、それを山田君がおいかける。
かくして一同が会したその結果、彼女が懸命に振った白杖が野村君を誤って重態に追い込み、前科のある山田君がその責任を負う。かくして彼は服役し、やがて目を回復させた彼女は野村君の支援で演奏会を開けるまでになる。野村は2年前から知っていた山田君の出所後の居場所を彼女に教え、遂に彼女は初めて恩人である彼を初めて目にする。
邦画ではアニメに比べて実写の青春映画はいけない、という現在僕の周辺にある定評を確認する結果となった。
どこから手を付けて良いか解らない程疑問が多いが、少なくとも映画的な嘘がうまく付けていない感が強く、いつでも彼女を警備しているように見える彼は一体いつ仕事をしているのかという点にまず首を傾げたくなる。
彼が山の喫茶店で野村が美波ちゃんにキスしようとしてるのを見てショックを受けるという流れもドラマツルギー的に変である。山田君は美波ちゃんに持っていたのは彼の言を信ずれば恋愛感情ではなかったはず。仮に恋愛感情も持っていたのであれば、前後でそれらしい様子を見せるべきで、それがない為に非常にぎこちない筋運びになっている。
ピアニストたるヒロインが労務者の手とピアニストの手を区別できないのも変だ。終盤 “いつからかそんな気がしていた” という趣旨の言葉を吐くも、それは手と関係のない空気感から覚えたものであろうし、ちょっとあり得ない。その意味で、その可能性をまるで考えなかったらしい主人公も主人公だ。
また、通奏低音である経済格差を示す要素として出してきたのは理解できるが、清掃員たちが盗撮カメラ設置の汚名を着せられてドタバタするエピソードは不要に近い。不要でないとしても、その後の展開を考えると、扱いが極めてまずい。
といった具合に、作り過ぎて瀬々敬久監督ご本人がやり過ぎたと認める「感染列島」(2009年)並みの粗い作劇ではないか。
主人公が喋らないロマンスでは、北野武監督「あの夏、いちばん静かな海」が第一の秀作。
辛島美登里の名曲「サイレント・イヴ」に似ている題名に騙されて観てしまいました。
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