映画評「アガサとイシュタルの呪い」
☆☆(4点/10点満点中)
2019年イギリス映画 監督サム・イェーツ
ネタバレあり
五か月前に観たTV映画「アガサと殺人の真相」はアガサ・クリスティの有名な失踪事件をもじって作られた作品であったが、こちらはクリスティ氏との離婚により傷心のアガサ女史が中近東に出かけた史実をヒントに生み出された【アガサ素人探偵になる】シリーズ第2弾である。
1928年。アガサ(リンジー・マーシャル)はミステリーを離れて恋愛小説を書いて心機一転しようとするが、出版社が煮え切らないので、イラク王国で発掘中のウル遺跡を見ようと英国を飛び出る。
現場で負傷した若い男性マックス・マローワン(ジョナ・ハウアー=キング)を見出し助けた後、彼が一緒に働いていた男性の死、マックスその人の負傷、彼の師匠ウーリー博士の夫人が可愛がっていた猿の毒殺事件、在イラクの英国大使(スタンリー・タウンゼンド)の浮気性の妻(ブロナー・ウォー)の殺人と続く一連の事件を、半ばマックスを助手のようにして、解明していく。
というお話で、本作は1928年としているが、実際にアガサがメソポタミアに出たのは1930年であって史実と少し違う。そこでマローワンと出会って結婚したのは史実通り。僕がアメリカ出張の際に成田空港で買った「メソポタミヤの殺人」(1936年)はこの時の体験をヒントにしたものだろう。
TV映画だから余り豪華さは求められないものの、「アガサと殺人の真相」同様カメラは日本のTVミステリーよりぐっと映画的で、悪くない。
お話も序盤のうちは英国らしいユーモアセンスに横溢して快調だが、お話が本格化する中盤以降、日本人には無名なTV俳優ばかりということもあって少なからず出て来る人物の関係が、こちら(何度も言うように、僕の映像記憶はかなり心許ない)の頭の中で整理しきれない。
ややネタバレ気味に述べると、連続する事件は二人の人物と二つの利権が絡み合って起きたものということらしいが、ミステリーとしては甚だ腰が弱い。原油利権という当時の英国=イラクの力関係をそこはかとなく示しているところが、寧ろ面白かった。
英国に多い印パ系の俳優が出て来る。現地人の役だから問題がないように思う人が大半だろうが、イラクの現地人ならやはりアラビア系を使うべきで、左脳人間の僕はどうもこういういい加減さに我慢が出来ない。民族の違いには拘る必要はないが、人種には拘る必要があると思う。
ミステリーとロマンスというアガサの作家活動を一つの作品の中で地で行かせるというアイデアはまあ良いと思う。残念ながら、「メソポタミヤの殺人」を参考にしたらしい盗品事件などミステリー部分の捻りが足りないのだ。
日中韓やモンゴルの人々が互いの民族を演じても外見的に大して問題はないものの、さすがに白人役は演じられない。こういう場合ハーフ俳優を使うことが多いですかな。
2019年イギリス映画 監督サム・イェーツ
ネタバレあり
五か月前に観たTV映画「アガサと殺人の真相」はアガサ・クリスティの有名な失踪事件をもじって作られた作品であったが、こちらはクリスティ氏との離婚により傷心のアガサ女史が中近東に出かけた史実をヒントに生み出された【アガサ素人探偵になる】シリーズ第2弾である。
1928年。アガサ(リンジー・マーシャル)はミステリーを離れて恋愛小説を書いて心機一転しようとするが、出版社が煮え切らないので、イラク王国で発掘中のウル遺跡を見ようと英国を飛び出る。
現場で負傷した若い男性マックス・マローワン(ジョナ・ハウアー=キング)を見出し助けた後、彼が一緒に働いていた男性の死、マックスその人の負傷、彼の師匠ウーリー博士の夫人が可愛がっていた猿の毒殺事件、在イラクの英国大使(スタンリー・タウンゼンド)の浮気性の妻(ブロナー・ウォー)の殺人と続く一連の事件を、半ばマックスを助手のようにして、解明していく。
というお話で、本作は1928年としているが、実際にアガサがメソポタミアに出たのは1930年であって史実と少し違う。そこでマローワンと出会って結婚したのは史実通り。僕がアメリカ出張の際に成田空港で買った「メソポタミヤの殺人」(1936年)はこの時の体験をヒントにしたものだろう。
TV映画だから余り豪華さは求められないものの、「アガサと殺人の真相」同様カメラは日本のTVミステリーよりぐっと映画的で、悪くない。
お話も序盤のうちは英国らしいユーモアセンスに横溢して快調だが、お話が本格化する中盤以降、日本人には無名なTV俳優ばかりということもあって少なからず出て来る人物の関係が、こちら(何度も言うように、僕の映像記憶はかなり心許ない)の頭の中で整理しきれない。
ややネタバレ気味に述べると、連続する事件は二人の人物と二つの利権が絡み合って起きたものということらしいが、ミステリーとしては甚だ腰が弱い。原油利権という当時の英国=イラクの力関係をそこはかとなく示しているところが、寧ろ面白かった。
英国に多い印パ系の俳優が出て来る。現地人の役だから問題がないように思う人が大半だろうが、イラクの現地人ならやはりアラビア系を使うべきで、左脳人間の僕はどうもこういういい加減さに我慢が出来ない。民族の違いには拘る必要はないが、人種には拘る必要があると思う。
ミステリーとロマンスというアガサの作家活動を一つの作品の中で地で行かせるというアイデアはまあ良いと思う。残念ながら、「メソポタミヤの殺人」を参考にしたらしい盗品事件などミステリー部分の捻りが足りないのだ。
日中韓やモンゴルの人々が互いの民族を演じても外見的に大して問題はないものの、さすがに白人役は演じられない。こういう場合ハーフ俳優を使うことが多いですかな。
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