映画評「最後まで行く」(2023年日本版)
☆☆★(5点/10点満点中)
2023年日本映画 監督・藤井道人
ネタバレあり
日中韓映画界は互いに良いと思ったアイデアを積極的に取り込んでリメイクをしている。三か国すべてで映画化されたケースもある。何処の国も良い脚本家が少ないということの証左であるが、面白い映画が増えるなら、映画ファンは歓迎すべきなのであろう。
本作は同名邦題で公開された韓国映画の日本版リメイク。
実母の臨終そして死去の報に道を急ぐ刑事・岡田准一は、ヤクザ柄本明からの賄賂(劇中では裏金と言っている)に絡んで監査が入ると連絡が入り、慌てる。署全体が絡んでいるが、彼が矢面に立ちそうなのだ。
雨中の道に飛び出して来た一人の若者・磯村勇斗を轢き殺し、慌てて車の後ろに詰めるが、直後に検問に引っ掛かる。刑事の身分を明かしても妙に怪しむ交通係がいるが、そこへ監察の刑事・綾野剛が声を掛けたことで危機を回避、彼に対しても母の死を告げて時間を延ばして貰い、何とか病院に到着する。
署に戻る前に死体を処理したい彼は母の棺に死体を入れ、様々の危機を回避する。トランクに証拠が残っていると気付くや、わざと道に停車中のパトカーにぶつかって車を修理工場へ移動させ、別の車で戻る。
やがて判ることに、死んだ若者は、義父になったばかりの本部長から命じられて綾野が行方を追っている男で、政治家の邪なお金を収めている寺の保管室から金を盗んでいる。政治家とつるんでいる当局としてもその悪事がばれることは大スキャンダルなので何とか事前に彼を捕まえ、鍵を取り返して処分しないといけない。それに運悪く絡んだのが岡田という次第。
義父の追及に激昂した綾野は彼を撲殺?して、保管室を開ける為に必要な磯村の死体を持って来いと、斎場から誘拐した娘を使って岡田を脅迫する。
随所に韓国映画由来らしさを感じるが、アイデアは良いと言うべきなのか?
この日本版は展開が雑もしくは大袈裟すぎると思う。大袈裟なのはオリジナル由来であろうが、その大袈裟ぶりが雑さに結び付き、お話が進むに連れて興醒め感が募る。
まず、岡田が死体を病院の屋根裏にいつどう隠したのか。果たしてそんな時間はあったろうか? という疑問が湧く。
亡母の棺の中に死体を入れて焼くというアイデアはかなり早めに予想できてしまえるので大したことはないが、主人公がピンチに対して大いに困惑しながら適宜に処理していく様は一定の面白さがある。
綾野がもう一人の主役のような形で絡んで来た後、彼が同僚の刑事・駿河太郎と一緒に若者のアジトに行った時に綾野が車めがけて巨大な石材を落とすのも考えられない。丁度そこへ車を止める可能性はどの程度のものだろうか。車を止めた場所に石材を持ってきたとしても、図ったようにクレーンや石材があるのも甚だ考えにくい。
ブラック・ユーモアを随時繰り出す映画とは言え、シュールさで勝負しているわけではない以上、ここで僕は大いに失望し、以降は惰性で観続けるしかなくなった。
綾野の不死身ぶりにも唖然だが、既に本部長殺しをした為にとぼけて刑事を続けることは出来ないだろうから、岡田を執拗に追い詰める意味も解りにくい。あれだけの大金があるのであれは二人で着服するといった考えになる方が人間的である。一般的な行動原理からは不可解に過ぎる。敢えて言えば、自暴自棄となった綾野にとって岡田を倒すこと自体が目的化してしまったという解釈を取る。
あれだけの札束の量なら、千億円以上(1㎥で百億円弱のはず)ありそうだ。日本の政財界幾何かの人数の裏金にしてはありすぎのような気もするが。
映画もさることながら、韓国の唐突な戒厳令にはビックリした。韓国は正に国家レベルで映画的だ。予想できなかった出来事としてはシリアの政権崩壊の報もそう。ロシアがバックアップして万全と思っていたが。
2023年日本映画 監督・藤井道人
ネタバレあり
日中韓映画界は互いに良いと思ったアイデアを積極的に取り込んでリメイクをしている。三か国すべてで映画化されたケースもある。何処の国も良い脚本家が少ないということの証左であるが、面白い映画が増えるなら、映画ファンは歓迎すべきなのであろう。
本作は同名邦題で公開された韓国映画の日本版リメイク。
実母の臨終そして死去の報に道を急ぐ刑事・岡田准一は、ヤクザ柄本明からの賄賂(劇中では裏金と言っている)に絡んで監査が入ると連絡が入り、慌てる。署全体が絡んでいるが、彼が矢面に立ちそうなのだ。
雨中の道に飛び出して来た一人の若者・磯村勇斗を轢き殺し、慌てて車の後ろに詰めるが、直後に検問に引っ掛かる。刑事の身分を明かしても妙に怪しむ交通係がいるが、そこへ監察の刑事・綾野剛が声を掛けたことで危機を回避、彼に対しても母の死を告げて時間を延ばして貰い、何とか病院に到着する。
署に戻る前に死体を処理したい彼は母の棺に死体を入れ、様々の危機を回避する。トランクに証拠が残っていると気付くや、わざと道に停車中のパトカーにぶつかって車を修理工場へ移動させ、別の車で戻る。
やがて判ることに、死んだ若者は、義父になったばかりの本部長から命じられて綾野が行方を追っている男で、政治家の邪なお金を収めている寺の保管室から金を盗んでいる。政治家とつるんでいる当局としてもその悪事がばれることは大スキャンダルなので何とか事前に彼を捕まえ、鍵を取り返して処分しないといけない。それに運悪く絡んだのが岡田という次第。
義父の追及に激昂した綾野は彼を撲殺?して、保管室を開ける為に必要な磯村の死体を持って来いと、斎場から誘拐した娘を使って岡田を脅迫する。
随所に韓国映画由来らしさを感じるが、アイデアは良いと言うべきなのか?
この日本版は展開が雑もしくは大袈裟すぎると思う。大袈裟なのはオリジナル由来であろうが、その大袈裟ぶりが雑さに結び付き、お話が進むに連れて興醒め感が募る。
まず、岡田が死体を病院の屋根裏にいつどう隠したのか。果たしてそんな時間はあったろうか? という疑問が湧く。
亡母の棺の中に死体を入れて焼くというアイデアはかなり早めに予想できてしまえるので大したことはないが、主人公がピンチに対して大いに困惑しながら適宜に処理していく様は一定の面白さがある。
綾野がもう一人の主役のような形で絡んで来た後、彼が同僚の刑事・駿河太郎と一緒に若者のアジトに行った時に綾野が車めがけて巨大な石材を落とすのも考えられない。丁度そこへ車を止める可能性はどの程度のものだろうか。車を止めた場所に石材を持ってきたとしても、図ったようにクレーンや石材があるのも甚だ考えにくい。
ブラック・ユーモアを随時繰り出す映画とは言え、シュールさで勝負しているわけではない以上、ここで僕は大いに失望し、以降は惰性で観続けるしかなくなった。
綾野の不死身ぶりにも唖然だが、既に本部長殺しをした為にとぼけて刑事を続けることは出来ないだろうから、岡田を執拗に追い詰める意味も解りにくい。あれだけの大金があるのであれは二人で着服するといった考えになる方が人間的である。一般的な行動原理からは不可解に過ぎる。敢えて言えば、自暴自棄となった綾野にとって岡田を倒すこと自体が目的化してしまったという解釈を取る。
あれだけの札束の量なら、千億円以上(1㎥で百億円弱のはず)ありそうだ。日本の政財界幾何かの人数の裏金にしてはありすぎのような気もするが。
映画もさることながら、韓国の唐突な戒厳令にはビックリした。韓国は正に国家レベルで映画的だ。予想できなかった出来事としてはシリアの政権崩壊の報もそう。ロシアがバックアップして万全と思っていたが。
この記事へのコメント