映画評「裸の町」
☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1948年アメリカ映画 監督ジュールス・ダッシン
ネタバレあり
僕は、ダルデンヌ兄弟のような、ハンディ・カメラを駆使し即実的に社会を接写する映画をセミ・ドキュメンタリーと言っているが、本来の映画用語のセミ・ドキュメンタリーはこの映画のように、事件の起きた直後(間際)にその現場で撮られた際物の実話映画を指す。戦後数年間アメリカで作られた。
1か月前に観た「出獄」もこのジャンルに入る。このジャンルに入る作品は日本では “町” や “街” を邦題に使うことが多く、 同じ1948年に作られた「情無用の街」も秀作でしたね。
ニューヨーク。アパートの部屋でモデルだった女性が昏睡させられた挙句に溺死させられる。事件は、警部バリー・フィッツジェラルドの陣頭指揮の下、家政婦が見かけた男性ハワード・ダフやモデル仲間の女性ドロシー・ハート、彼女を診た医師ハウス・ジェイムスンなど身近のところから捜査を開始するちうち、ダフが盗難品を質に入れていたことが判り、そこから真犯人と殺人の真相が明らかになる。
撮影は全体的に良いが、刑事ドン・テイラーの手から逃げた殺人犯が、警察の群れから逃げる終盤に痺れる。大勢の子供たちが縄跳びをしていたり、ローラースケートをしているところを逃げるのを縦の構図で撮っているところが圧巻だ。
その後犯人がヒッチコック映画の逃走犯のように橋の塔に登り、そこで俯瞰撮影で下の官憲を捉えるだけでなく、同時にニューヨークの景観も捉えられ、恐らく映画館で観たなら圧巻であったろうと想像される。
プロデューサーのマーク・ヘリンジャ―はジャーナリズム出身だから、こうした映画の製作に乗り出したのだろう。この映画が日本で公開される時にはもう亡くなっていたらしい。その彼が時にコミカルさを加えて進行・説明役を務めているが、この時代に割合多いとは言え、余り好まない。
そのことからも解るように、セミ・ドキュメンタリーという言葉が与える印象ほどには即実的ではなく、叙情的な描写や挿話もある。
ジュールス・ダッシンの進行ぶりのスピードは凄いが、本作以上の秀作と思っている「街の野獣」(1950年)を最後に、アメリカは例の馬鹿げた赤狩りによってこの才能を国外に逃してしまった。彼がフランスやギリシャ(細君がギリシャの有名な女優で後に政治家にもなったメルナ・メルクーリ)で「日曜はダメよ」など色々な名作を作った。
ニューヨークの警官と景観! 昔の歌人が現在に生きていたら掛詞に使ったかもしれませんな。
1948年アメリカ映画 監督ジュールス・ダッシン
ネタバレあり
僕は、ダルデンヌ兄弟のような、ハンディ・カメラを駆使し即実的に社会を接写する映画をセミ・ドキュメンタリーと言っているが、本来の映画用語のセミ・ドキュメンタリーはこの映画のように、事件の起きた直後(間際)にその現場で撮られた際物の実話映画を指す。戦後数年間アメリカで作られた。
1か月前に観た「出獄」もこのジャンルに入る。このジャンルに入る作品は日本では “町” や “街” を邦題に使うことが多く、 同じ1948年に作られた「情無用の街」も秀作でしたね。
ニューヨーク。アパートの部屋でモデルだった女性が昏睡させられた挙句に溺死させられる。事件は、警部バリー・フィッツジェラルドの陣頭指揮の下、家政婦が見かけた男性ハワード・ダフやモデル仲間の女性ドロシー・ハート、彼女を診た医師ハウス・ジェイムスンなど身近のところから捜査を開始するちうち、ダフが盗難品を質に入れていたことが判り、そこから真犯人と殺人の真相が明らかになる。
撮影は全体的に良いが、刑事ドン・テイラーの手から逃げた殺人犯が、警察の群れから逃げる終盤に痺れる。大勢の子供たちが縄跳びをしていたり、ローラースケートをしているところを逃げるのを縦の構図で撮っているところが圧巻だ。
その後犯人がヒッチコック映画の逃走犯のように橋の塔に登り、そこで俯瞰撮影で下の官憲を捉えるだけでなく、同時にニューヨークの景観も捉えられ、恐らく映画館で観たなら圧巻であったろうと想像される。
プロデューサーのマーク・ヘリンジャ―はジャーナリズム出身だから、こうした映画の製作に乗り出したのだろう。この映画が日本で公開される時にはもう亡くなっていたらしい。その彼が時にコミカルさを加えて進行・説明役を務めているが、この時代に割合多いとは言え、余り好まない。
そのことからも解るように、セミ・ドキュメンタリーという言葉が与える印象ほどには即実的ではなく、叙情的な描写や挿話もある。
ジュールス・ダッシンの進行ぶりのスピードは凄いが、本作以上の秀作と思っている「街の野獣」(1950年)を最後に、アメリカは例の馬鹿げた赤狩りによってこの才能を国外に逃してしまった。彼がフランスやギリシャ(細君がギリシャの有名な女優で後に政治家にもなったメルナ・メルクーリ)で「日曜はダメよ」など色々な名作を作った。
ニューヨークの警官と景観! 昔の歌人が現在に生きていたら掛詞に使ったかもしれませんな。
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