映画評「復讐は俺に任せろ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1953年アメリカ映画 監督フリッツ・ラング
ネタバレあり
フィルム・ノワールはヌーヴェル・ヴァーグの連中が褒めてから映画マニアの間で実力より高く評価される傾向がある。まして本作はジャン=リュック・ゴダールが敬愛して「軽蔑」にまで出演させたフリッツ・ラングが監督を務めているから、世界的にも日本的にも評価が高いが、少なくともお話自体はほぼ型通りで大したことはない。
同時代の日本では、戦後のラングは “今じゃ落ち目の三度笠” という扱いを受けていて、僕なども戦前のラングの凄味のある画面を見ているので、どうにも物足りないのである。
本作で良いと思ったショットは、お話のキーとなる自殺した警官の妻ジャネット・ノーランが発砲の音に驚いて降りて来た踊り場で止まる序盤の一つくらいである。お話の構図が凡庸なこともあって、注意力が散漫になってしまい、余り印象に残っているショットを他に思い出せない。
死んだ警官の愛人から連絡を受けた巡査部長グレン・フォードが面談した後彼女が殺される。警官の自殺に裏があると捜査を開始、選挙の準備をしている実力者アレクサンダー・スコービィが線上に浮かんでくるが、上司たちは捜査の打ち切りを命じる。
やがて、フォードを狙って爆弾を仕掛けられた車のキーを回した細君ジョスリン・ブランドーが亡くなり(車の爆発で狙われた男の代りに細君が死ぬのは「ゴッドファーザー」「ビッグ・ガン」など多数あり、この映画は早いほう)、これで復讐の鬼になった彼は捜査をどうにも止めたい上司たちに逆らってバッジを返上、単独で捜査するうちにある男の名前を掴み、これを追ううちにその男リー・マーヴィンに行き着く。
この流れが面白くないマーヴィンは情報を洩らした情婦グロリア・グレアムの顔に熱湯をかける。絶望した彼女は、スコービィの弱みを掴んで脅し続けるジャネットに責任の一端があると乗り込んで射殺、そこに乗り込んできたマーヴィンに撃たれるが、フォードが駆けつける。
かくしてマーヴィンは逮捕され、ジャネットが死んだことで官憲と実力者の癒着関係が明らかになる。
ヘイズ・コードのある時代につき官憲は敬わなければならないので、ニュー・シネマ以降の悪徳刑事ものと違い、官憲の悪事を浮かび上がらせながらも、悪徳の大物二人にマーヴィンを逮捕させるという善を示させている。フォードが復職するのはともかく、現在の扱いなら失職を免れない幹部二人について何も言及されない。身分の定まらない政治家もどきは逮捕されるだろうとは思いますがね。
ほぼ絶賛の嵐の中でこの点に言及する方は僕の観渡した範囲ではいらっしゃらなかった。かかるなまなかさは映画ではなく、ヘイズ・コードのせいだが、ここに思いの至らなかった人は、40~50年代の映画における悪徳官憲の最終的な扱いを見てもらいたい。
ハードボイルドでスピーディーな進行ぶりは、長たらしい映画の多い現在の基準では、圧倒的と言うべし。
主人公が乳母車をどけて家に入るのは昨日の「裸の町」を参考にしている可能性すらあるが、大いに違うのは夫婦の愛情関係を確認するショットの直後に爆破事件の起こるところで、「裸の町」のように平和に終わるかと思っていたので、結構ショッキングだ。
プーチンは自らの罪を免責させる法を通したし、トランプは大統領に再びなることで罪がなかったことのように出来る。米議会襲撃で逮捕された連中を釈放するとも言う。大統領の越権行為でごたごたする韓国の方がアメリカよりまともですな。
1953年アメリカ映画 監督フリッツ・ラング
ネタバレあり
フィルム・ノワールはヌーヴェル・ヴァーグの連中が褒めてから映画マニアの間で実力より高く評価される傾向がある。まして本作はジャン=リュック・ゴダールが敬愛して「軽蔑」にまで出演させたフリッツ・ラングが監督を務めているから、世界的にも日本的にも評価が高いが、少なくともお話自体はほぼ型通りで大したことはない。
同時代の日本では、戦後のラングは “今じゃ落ち目の三度笠” という扱いを受けていて、僕なども戦前のラングの凄味のある画面を見ているので、どうにも物足りないのである。
本作で良いと思ったショットは、お話のキーとなる自殺した警官の妻ジャネット・ノーランが発砲の音に驚いて降りて来た踊り場で止まる序盤の一つくらいである。お話の構図が凡庸なこともあって、注意力が散漫になってしまい、余り印象に残っているショットを他に思い出せない。
死んだ警官の愛人から連絡を受けた巡査部長グレン・フォードが面談した後彼女が殺される。警官の自殺に裏があると捜査を開始、選挙の準備をしている実力者アレクサンダー・スコービィが線上に浮かんでくるが、上司たちは捜査の打ち切りを命じる。
やがて、フォードを狙って爆弾を仕掛けられた車のキーを回した細君ジョスリン・ブランドーが亡くなり(車の爆発で狙われた男の代りに細君が死ぬのは「ゴッドファーザー」「ビッグ・ガン」など多数あり、この映画は早いほう)、これで復讐の鬼になった彼は捜査をどうにも止めたい上司たちに逆らってバッジを返上、単独で捜査するうちにある男の名前を掴み、これを追ううちにその男リー・マーヴィンに行き着く。
この流れが面白くないマーヴィンは情報を洩らした情婦グロリア・グレアムの顔に熱湯をかける。絶望した彼女は、スコービィの弱みを掴んで脅し続けるジャネットに責任の一端があると乗り込んで射殺、そこに乗り込んできたマーヴィンに撃たれるが、フォードが駆けつける。
かくしてマーヴィンは逮捕され、ジャネットが死んだことで官憲と実力者の癒着関係が明らかになる。
ヘイズ・コードのある時代につき官憲は敬わなければならないので、ニュー・シネマ以降の悪徳刑事ものと違い、官憲の悪事を浮かび上がらせながらも、悪徳の大物二人にマーヴィンを逮捕させるという善を示させている。フォードが復職するのはともかく、現在の扱いなら失職を免れない幹部二人について何も言及されない。身分の定まらない政治家もどきは逮捕されるだろうとは思いますがね。
ほぼ絶賛の嵐の中でこの点に言及する方は僕の観渡した範囲ではいらっしゃらなかった。かかるなまなかさは映画ではなく、ヘイズ・コードのせいだが、ここに思いの至らなかった人は、40~50年代の映画における悪徳官憲の最終的な扱いを見てもらいたい。
ハードボイルドでスピーディーな進行ぶりは、長たらしい映画の多い現在の基準では、圧倒的と言うべし。
主人公が乳母車をどけて家に入るのは昨日の「裸の町」を参考にしている可能性すらあるが、大いに違うのは夫婦の愛情関係を確認するショットの直後に爆破事件の起こるところで、「裸の町」のように平和に終わるかと思っていたので、結構ショッキングだ。
プーチンは自らの罪を免責させる法を通したし、トランプは大統領に再びなることで罪がなかったことのように出来る。米議会襲撃で逮捕された連中を釈放するとも言う。大統領の越権行為でごたごたする韓国の方がアメリカよりまともですな。
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