映画評「Winter boy」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年フランス映画 監督クリストフ・オノレ
ネタバレあり

クリストフ・オノレは多分2本しか観ていないが、意欲余って空転するタイプと感じている。今回は画面がなかなか良かったような気がする。
 最近は十代の少年が主人公として出て来ると大概ゲイ。少々不安だった予感は的中した。僕はどこぞの政治絡みの人と違って隣にいても構わないが、キスを含めて彼らの性行為を見るのがどうにも苦手なのだ。

学校の寄宿舎で過ごしていた17歳の少年リュカ(ポール・キルシェ)が、父親の交通事故死を受けて実家に帰されるが、どうにも耐えられない。パリに戻るアーティストの兄カンタン(ヴァンサン・ラコスト)に同行し、同じくゲイの黒人リリオ(エルヴァン・ケポア・ファレ)と知り合う。
 このパリでも彼の心は荒れて、遂には自傷行為に走り、以降口を利かなくなるが、しかし、入所した治療院から外出した際にリリオと再会、彼の自由なムードに(?)鬱屈した気分を解放し、一時はひどくバッティングした母親(ジュリエット・ビノシュ)に口を利く。
 かくして彼女も自身を取り戻し、 “貴方が息子をこの世に送り返してくれたのか” と亡夫に語り掛ける。

お話の構図としては有りがちだが、ずっとカメラが手持ちカメラで少し揺れていたのが、主人公の気持ちが安定すると、大型カメラを使って画面も安定度を増したような感じがする。映画言語的に言って、錯覚ではなく物理的に事実だろう。リリオと彼が別れて列車が通る上の道路を歩くところでぐっと安定して、やがてスローになる。こういう感覚は実に映画的で良い。

ストーリー的には、リリオに触れて突然主人公が憂鬱を解き放つところが少し解りにくい。正に母親が亡夫に問いかけるように、彼がこの世に戻した感じがする程である。何回も観れば解るかもしれないが、概ね僕は一回観て直感的に判断するというスタイルを取っている。

オノレ監督、己(おのれ)を取り戻す。

この記事へのコメント

モカ
2025年04月29日 17:42
こんにちは。

昨夜予備知識0で観ました。
それでポールキルシェ君、誰かに似ているのにそれが誰だか分からなくて彼の顔ばっかりみていました。
フランスは時々こういう子が出てくるから隅におけませんわ。可愛い…
それでWikipediaで調べてみたらやはり両親共俳優さんでした。マモンがベロニカやトリコロールの赤に出ていたイレーネジャコヴでパパは観たことあるかもレベルの方ですが、いいとこ取りの美形です。

> リリオに触れて突然主人公が憂鬱を解き放つところが少し解りにくい

  ここは私としては分かりやすかったです。違っているかもしれませんが…
  パリの兄の部屋で泊まった翌朝リリオの部屋で目覚めて一緒にパリの街を走りに行くシーン。シルヴィーバルタンの「あなたのとりこ」が軽快に流れる中、モンマルトルだかどこだか分かりませんがパリ独特の階段を駆け上がって行くあのシーンが伏線になっていると思います。“寒い冬の後には春の花が咲く” みたいな歌詞のところでリュカ君、階段を上り切って満面の笑顔を見せます。
 で、自傷行為の後に入った療養所でもしばらくしたら1人で走るようになって、
それがパリでリリオと走った時を思い出しているのかは分かりませんが、回復への一歩を走り出したととらえました。その状況の所にリリオが訪ねて来てくれて一緒に走ってくれたのですから、人との繋がりで回復して、でも依存はしないという大人への一歩を踏み出せたととらえました。

パリに着いたリュカとビノシュマモンの電話の会話が面白かったです。
パリはどう?
セーヌ川を見に行ったよ。
ポンヌフ?
橋の名前はわからないけど。

確かビノシュマモンはトリコロールの青でしたね。



オカピー
2025年04月29日 20:58
モカさん、こんにちは。

>ポールキルシェ君
>マモンがベロニカやトリコロールの赤に出ていたイレーネジャコヴ

おお、そうですか。
最近のフランスの俳優はろくに知りませんが、よく存じ上げています。
フランス人だから、イレーヌかな?

>> リリオに触れて突然主人公が憂鬱を解き放つところが少し解りにくい
>ここは私としては分かりやすかったです。
>パリ独特の階段を駆け上がって行くあのシーンが伏線になっていると思います。

ふーむ、元来映像記憶が悪い上に、近年は集中力も当てにならないので、どうもそういう連絡(関連)がつかないことが多いです。
それで合っているような気がしますなあ。
モカ
2025年04月30日 17:02
こんにちは。

誰かは忘れましたが精神科関係の先生の言葉に「昔から言われている事だが、本能を抑えきれない時に感情をコントロールする為に有効なのは走る、食べる 歌うです」というのがあったのを思い出しました。
これ、まさにリュカがやった事ですね。
私達高齢者は走れないので(走れる人もいますが) 歩くのが良いらしいです。それは
単に足腰を鍛えるという意味だけではなくて前を向いて歩くという行為が心も前向きにしてくれるようです。

イレーヌでしたね。すいません。でも実際はどうなんでしょう? 最後の音は n ですからンに近いですかね? 今度近所のフランス人に聞いてみます。
オカピー
2025年04月30日 22:17
モカさん、こんにちは。

>単に足腰を鍛えるという意味だけではなくて前を向いて歩くという行為が心も前向きにしてくれるようです。

歩かせられる生命保険に入っていまして、きちんとノルマをこなしていて、先日やってきた外交員に褒められましたよ!

>最後の音は n ですからンに近いですかね? 今度近所のフランス人に聞いてみます。

そうでしょうね。

逆に、日本語のンは色々(な発音があって)難しいと外国人は言っています。
 bやpの前のンはmで発音していますが表記はン。この辺は欧州語はしっかりしていますね。impossibleとか。接頭辞un- はum- にならないので、unbalance といった例もありますが。
 わが群馬は本当は発音に従ってGumma と書くべきですが、ローマ字式に一音ずつ当てはめているので通常Gunma。たまにGummaを見ると嬉しくなります(変態!)。