映画評「ベッスリアの女王」
☆☆☆(6点/10点満点中)
1914年アメリカ映画 監督D・W・グリフィス
ネタバレあり
D・W・グリフィスが旧約聖書外典を基にユダヤの女丈夫ユディットを主人公に作り上げた長編第1作。
長編と言っても現在なら中編に当たる50分(IMDbのデータでは61分だが、これは公開当時のものだろう。サイレント映画の公開当時のデータは現在のものより概ね2割くらい上映時間が長い)だが、殆ど1巻(およそ10分)の短編が普通だった当時、アメリカ映画でも最初の長編映画に当たるのではないか? 中編ではなく真の最初の長編映画は同じくグリフィスの「国民の創生」(1915年)と言われている。
この映画自体は初鑑賞(プライムビデオにて)だが、お話は実は知っていた。10年ほど前にフリードリッヒ・ヘッベルの5幕戯曲「ユーディット」を読んでいるからで、梗概は大体同じ。
アッシリアの国王ネブガドネツァル(実際には新バビロニアの王)が自分に非協力的なユダヤ諸民族に司令官ホロフェルネス(ヘンリー・B・ウォルソール)を派遣する。その街の一つベトリア(英語発音でベッスリア)は軍隊に包囲され、中にいた人々は渇水の状態に陥る。
指導者は降伏を考えるが、未亡人ユディット(ブランチ・スウィート)はそれを良しとせず、神に祈ってホロフェルネスの陣中に赴くという作戦を立てる。そこで彼女が行ったのは、ワインで彼を眠らせ、文字通り寝首を搔くことである。
しかし、そんな彼女も彼の人格にほだされるところがあり、思いに揺れるのである。
カラヴァッジョもクラナハも絵画にしている程西洋人には有名な物語だが、登場人物の国が史実と違っていたり、恐らく想像による説話と思われる。
同じ史劇でも、同じ年に作られたイタリアの超大作「カビリア」やそれに影響された「イントレランス」のような壮大なセットはなく、編集も素朴でカットバックもまだ考案されていないが、戦闘模様など人海戦術的なところに華美さを発揮しているのは、同時代的には相当なスペクタクルと言って良い。
脇役で、メエ・マーシュ、リリアン・ギッシュ、ドロシー・ギッシュといったグリフィス映画でお馴染みの女優が出演。サイレント映画の女優がお好きな方は見逃す手はないですぞ。
これだけ長いことブログをやりながら、映画史を語る時欠かせない「イントレランス」をまだ出していない。観るなら完全に近いものをと考えているうちに時間が経ってしまった。済みません。
1914年アメリカ映画 監督D・W・グリフィス
ネタバレあり
D・W・グリフィスが旧約聖書外典を基にユダヤの女丈夫ユディットを主人公に作り上げた長編第1作。
長編と言っても現在なら中編に当たる50分(IMDbのデータでは61分だが、これは公開当時のものだろう。サイレント映画の公開当時のデータは現在のものより概ね2割くらい上映時間が長い)だが、殆ど1巻(およそ10分)の短編が普通だった当時、アメリカ映画でも最初の長編映画に当たるのではないか? 中編ではなく真の最初の長編映画は同じくグリフィスの「国民の創生」(1915年)と言われている。
この映画自体は初鑑賞(プライムビデオにて)だが、お話は実は知っていた。10年ほど前にフリードリッヒ・ヘッベルの5幕戯曲「ユーディット」を読んでいるからで、梗概は大体同じ。
アッシリアの国王ネブガドネツァル(実際には新バビロニアの王)が自分に非協力的なユダヤ諸民族に司令官ホロフェルネス(ヘンリー・B・ウォルソール)を派遣する。その街の一つベトリア(英語発音でベッスリア)は軍隊に包囲され、中にいた人々は渇水の状態に陥る。
指導者は降伏を考えるが、未亡人ユディット(ブランチ・スウィート)はそれを良しとせず、神に祈ってホロフェルネスの陣中に赴くという作戦を立てる。そこで彼女が行ったのは、ワインで彼を眠らせ、文字通り寝首を搔くことである。
しかし、そんな彼女も彼の人格にほだされるところがあり、思いに揺れるのである。
カラヴァッジョもクラナハも絵画にしている程西洋人には有名な物語だが、登場人物の国が史実と違っていたり、恐らく想像による説話と思われる。
同じ史劇でも、同じ年に作られたイタリアの超大作「カビリア」やそれに影響された「イントレランス」のような壮大なセットはなく、編集も素朴でカットバックもまだ考案されていないが、戦闘模様など人海戦術的なところに華美さを発揮しているのは、同時代的には相当なスペクタクルと言って良い。
脇役で、メエ・マーシュ、リリアン・ギッシュ、ドロシー・ギッシュといったグリフィス映画でお馴染みの女優が出演。サイレント映画の女優がお好きな方は見逃す手はないですぞ。
これだけ長いことブログをやりながら、映画史を語る時欠かせない「イントレランス」をまだ出していない。観るなら完全に近いものをと考えているうちに時間が経ってしまった。済みません。
この記事へのコメント