映画評「十角館の殺人」

☆☆★(5点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・内片輝
ネタバレあり

日本のミステリー小説の中で非常に評判が良い綾辻行人のデビュー作「十角館の殺人」は昨年12月に読んだばかり。
 その時ネットに当たるうちに日本テレビが年末年始に実写ドラマ化(ミニ・シリーズ)版を放映すると聞いたので忘れないように頭に叩き込んだ。

失敗したのは録画ではなく配信で観たこと。連続的にやってくれると思ったら、最初の2話以外は1週間に1度更新される番組編成で、おかげで3週間もかかってしまい、気が短い年寄はイライラしたデス。まして知っている話だけに早く見終えられたほうが良かったわけで、印象としてマイナスになりましたかな。

原作では、同一人物のモノローグが前後で矛盾している点が気になった。結果から言うと最初は嘘を言っているように見える。モノローグに嘘はあってはならないわけで、若き綾辻先生のミスでありましょう。意図的だったならば悪質なミスリードだ。世評ほど感心できなかった理由の一つであるが、ドラマ版にその問題はない。

エラリー、ルルウ、アガサ、カー、オルツィ、ポウ、ヴァンという有名推理小説家の名前で呼ばれている大学のミステリー研究会のメンバーが、半年前に惨事のありヴァンの伯父が買った孤島に興味津々に出かける。
 彼らは先の事件を調べようとするが、調べるどころか、彼ら自身がその事件の見立て殺人の犠牲者になっていく。

アガサ・クリスティー「そして誰もいなくなった」に似たクローズド・サークルもので、それに同「アクロイド殺人事件」のような叙述トリックを絡めたもの。クリスティーの中でも人気の二作を交えたら面白い作品が出来るだろうという発想だったにちがいない。島に出かけた大学生が仇名で呼ばれるのもその趣向の一環。

他方、本土では、二通の手紙に導かれて、島で起きた先の事件についてミステリー研究会の元メンバー江南(奥智哉)と守須(小林大斗)と、推理好きの趣味人島田潔(青木崇高)が調べる羽目になる。

原作同様、島と本土のお話がカットバックで進行するのだが、この本土の部分は相当水増し気味で、江南と島田の凸凹コンビが原作にないことをやらかす。先の事件で行方不明になった庭師の妻に二回会っているし、島の持ち主であった建築家の兄=島田の先輩=の家を探検する場面などが加わっている。後者は似た場面があったかもしれない(図書館から借りたのでチェックできない)が、記憶に残っていないのだからそう本格的ではなかったはずだ。この凸凹コンビをコメディリリーフに仕立てているのもTV版らしい。
 最後の最後の浜辺の場面も原作に比べ随分長々しく、僕の印象ではかなりもたついている。本編は計算上249分だが、3時間くらいにできたらぐっと面白くなっただろう。

別のシリーズ作もドラマ化されるらしいから今度は原作を読まずに見てみよう。

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