映画評「アムステルダム」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年アメリカ映画 監督デーヴィッド・O・ラッセル
ネタバレあり
戦前のアメリカで実際に起きた陰謀を扱ったサスペンス映画。ミステリーと言っても間違いではない。監督は鬼才というより奇才デーヴィッド・O・ラッセル。
1933年。自分と同じ復員兵を専門に治療を行っているクリスチャン・ベールが、父親の将軍エド・ベグリー・ジュニアを毒殺で失ったと信じるその娘テイラー・スウィフトに頼まれて、親友の黒人弁護士ジョン・デーヴィッド・ワシントンの紹介者ということもあり、解剖してみるとそれらしき痕跡が出て来る。その直後彼女は何者かに押されて自動車に轢かれてしまい、二人は真犯人の訴えで犯人扱いされてしまう。
復員兵上がりの刑事に猶予を貰って、二人が被害者の最後の言葉を基に探っていくと、富豪ラミ・マレックに辿り着き、その妻アニャ・テイラー=ジョイと共に現れたのが、二人が第1次大戦中傷痍軍人として昵懇になった看護婦美術家マーゴット・ロビー。神経を病んでいると夫婦は言うが、どうも彼らが彼女を病人にしている雰囲気が漂う。
夫婦はベグリー将軍の件で何かを知っているかもしれないと、将軍ロバート・デニーロの名を出してくる。彼と会う段階に至るまでに、英米情報局から三人はベールが主催する退役軍人会でデニーロを独裁者に担ごうという動きがあると知らされる。デニーロは逆にそれを利用して陰謀を未然に防ごうと積極的に参加の意思を示す。
実話でなければ、その裏があってデニーロは自ら独裁者になる為に味方になったふりをするといった展開になるだろうが、さすがにそうはならない。フリッツ・ラング監督の反ナチス・プロパガンダ映画「死刑執行人もまた死す」をちょっと思い起こさせもするし、換骨奪胎すればヒッチコック映画のようにも仕立てられる素材だが、ラッセルはコメディー色を打ち出して諧謔風味に仕立てている。
恐らくは、第1次トランプ政権誕生以来アメリカで醸成されている差別主義の復権ムードを危ぶんでいるが為にこういう扱いにしたのではないかと思う。デニーロ将軍を挟んで対立するグループが共和党と民主党のようにも見えて来る。最近対立するグループが出て来るアメリカ映画を観ると何でもそう見えてしまうのが僕の悪い癖だが。
ヒットしなかったようだが、なかなか面白い。
トランプは死刑執行人か。関税が嫌ならアメリカで生産しろと言うが、そう簡単に生産拠点は確立できないし、労働者が給金の比較的高い非移民になると、結局米国市民は高いものを買わざるを得なくなる。どの程度の規模かスピードか分からないが、確実にインフレが進む。それでいてインフレ抑制策の利上げには大反対。パリ協定離脱は前回ほどではないだろうが、中国に資する。
2022年アメリカ映画 監督デーヴィッド・O・ラッセル
ネタバレあり
戦前のアメリカで実際に起きた陰謀を扱ったサスペンス映画。ミステリーと言っても間違いではない。監督は鬼才というより奇才デーヴィッド・O・ラッセル。
1933年。自分と同じ復員兵を専門に治療を行っているクリスチャン・ベールが、父親の将軍エド・ベグリー・ジュニアを毒殺で失ったと信じるその娘テイラー・スウィフトに頼まれて、親友の黒人弁護士ジョン・デーヴィッド・ワシントンの紹介者ということもあり、解剖してみるとそれらしき痕跡が出て来る。その直後彼女は何者かに押されて自動車に轢かれてしまい、二人は真犯人の訴えで犯人扱いされてしまう。
復員兵上がりの刑事に猶予を貰って、二人が被害者の最後の言葉を基に探っていくと、富豪ラミ・マレックに辿り着き、その妻アニャ・テイラー=ジョイと共に現れたのが、二人が第1次大戦中傷痍軍人として昵懇になった看護婦美術家マーゴット・ロビー。神経を病んでいると夫婦は言うが、どうも彼らが彼女を病人にしている雰囲気が漂う。
夫婦はベグリー将軍の件で何かを知っているかもしれないと、将軍ロバート・デニーロの名を出してくる。彼と会う段階に至るまでに、英米情報局から三人はベールが主催する退役軍人会でデニーロを独裁者に担ごうという動きがあると知らされる。デニーロは逆にそれを利用して陰謀を未然に防ごうと積極的に参加の意思を示す。
実話でなければ、その裏があってデニーロは自ら独裁者になる為に味方になったふりをするといった展開になるだろうが、さすがにそうはならない。フリッツ・ラング監督の反ナチス・プロパガンダ映画「死刑執行人もまた死す」をちょっと思い起こさせもするし、換骨奪胎すればヒッチコック映画のようにも仕立てられる素材だが、ラッセルはコメディー色を打ち出して諧謔風味に仕立てている。
恐らくは、第1次トランプ政権誕生以来アメリカで醸成されている差別主義の復権ムードを危ぶんでいるが為にこういう扱いにしたのではないかと思う。デニーロ将軍を挟んで対立するグループが共和党と民主党のようにも見えて来る。最近対立するグループが出て来るアメリカ映画を観ると何でもそう見えてしまうのが僕の悪い癖だが。
ヒットしなかったようだが、なかなか面白い。
トランプは死刑執行人か。関税が嫌ならアメリカで生産しろと言うが、そう簡単に生産拠点は確立できないし、労働者が給金の比較的高い非移民になると、結局米国市民は高いものを買わざるを得なくなる。どの程度の規模かスピードか分からないが、確実にインフレが進む。それでいてインフレ抑制策の利上げには大反対。パリ協定離脱は前回ほどではないだろうが、中国に資する。
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