映画評「ボディガード牙 必殺三角飛び」

☆☆(4点/10点満点中)
1973年日本映画 監督・鷹森立一
ネタバレあり

千葉真一演ずる空手達人・牙直人がボディガード(本作では用心棒といったほうがふさわしい)となるシリーズ第2弾。

牙は徹心会の師匠(大山倍達)の言うことを聞かずに、ライバルの空手グループとの他流試合に臨み、一通り倒すものの妹(志穂美悦子)の目を負傷させるという代償を被る。
 映画サイトによっては失明とあるが、最終的には復活し、彼女が入院中に得た技を兄が利用するという伏線回収もある。

牙は真面目に自首をして服役中に、沖縄空手をする囚人・南条(渡瀬恒彦)と親しくなる。出所後暴力団を率いる赤松(深江章喜)の用心棒になるが、その前にぼったくりバーに入って沖縄出身の女給兼歌手の新垣麻里(水原麻記)に助けて貰う。
 赤松は、数年前に米軍御用金強奪で協力してボスに成り上がった他の二人(実はプラス二名、その一人が渡瀬)と縁を切ろうとしているが、それに気付いた二人に脅迫されて、無敵の用心棒を抱えているのに態度を変える。
 彼らは出所するや否やお金か刑務所行きかと脅迫する南条が疎ましくなって部下に殺させる。これに腹を立てた牙は、用心棒の役目何するものぞと赤松を含めて対峙する。

所謂ラスボスは前作同様、宍戸錠の弟でちあきなおみの旦那さん郷鍈治。彼を仕留める時に使う空中技がタイトルの “三角飛び” らしいのだが、あれで仕留められるのでは余りにも弱すぎる。
 但し、前作の素手VS飛び道具より、今回の素手VS鎌の対決のほうが絵的に面白くはある。

前作と同じくアクションを収めるショットでは現在の映画に似てカメラが揺れるところが多い(但しロング=引き=では揺れないので、さほど意図的ではない印象)一方、セルジュ・コルブッチのような妙なズームは全くない。監督が鷹森立一のまま撮影監督が山沢義一に代わっている。つまり、あの妙な高速ズームは、前回の撮影監督・中島義男の趣味と判明した。

マイノリティー(本土復帰前後の琉球人や在日韓国人)の立場に立ち、情愛場面を加えてエログロが隆盛したこの時代らしく必要もないヌードも出すサーヴィスなど、色々と欲をかいた作劇は、純然たるアクション・ファンには長たらしく感じられかねないが、ただ闘っているだけでも知恵がない。個人的には、この程度のバランスで良いと思う。

マイノリティーと言えば現在のアメリカ。急激に社会を変えようとすると大きな反動が起きてトランプのような人物が台頭する。僕は、公約を完全に守るとインフレが避けられず支持率が落ちるのが必定のトランプの後に類似の人物が出るかどうか早くも気になっている。同じく極右のイーロン・マスクがその後釜を狙っているかもね。次は99%民主党政権だが、その後どうなるか?

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