映画評「冒険者カミカゼ」

☆☆★(5点/10点満点中)
1981年日本映画 監督・鷹森立一
ネタバレあり

医大関係者の千葉真一が不祥事で大学を首になり、食い詰めた後輩尾藤イサオ、内妻?あべ静江と組んで、入学金として入金される現金を輸送車から強奪する計画を実行に移す。同大学の金持ち学生真田広之は冒険がしたいと、バンドの仲間である連中と同じく強盗を企てる。
 結果的に、バッティングする代わりに千葉側に奏功するが、あべ静江が余計なことを借金のあるヤクザ岡田英次に告げたことから、急性アルコール中毒で死んだように眠っていた千葉以外が一味に射殺され、大金を奪われてしまう。
 分け前に預かろうと真田と、千葉とも訳ありの関係がある妙齢美人秋吉久美子が現れ、誤解を解いた後、ヤクザから現金を奪い返す作戦を敢行する。

最初から美人を挟む二男性という関係だが、それが若い二人に変わるや否や、文字通りアラン・ドロン主演の傑作「冒険者たち」(1967年)のムードが濃厚に漂って来る。
 何度かの奪還の往復の後、ヒロインが撃たれた後そうとも知らずに、彼女がどちらに靡くかと二男性が楽しそうに話し合っているところからいよいよ「冒険者たち」ぶりが本格化。彼女が死んだ後カメラが上昇して少し回転するのは同作幕切れの拝借ながら、作者たちは大分遠慮したようで半分くらい回ったところで違うショットに移る。
 金持ちのお嬢さんと偽っていた彼女が沖縄の離島生まれの貧乏人と判るのは、同作の廃墟での銃撃戦を模そうとした為の設定。ロケは軍艦島らしい。このシークェンスはちょいと長すぎてもたれるが、意気込みや良しと言いたい。
 その他、現金を海底に沈めたのを回収する場面や、セスナと車の並走などが、「冒険者たち」を意識しているショットだ。

お話は間抜けなところが多く、どちら側も簡単に奪還され過ぎるのは首を傾げさせ、とりわけ負傷したヒロインの運転する車を暴力団側が追いかけずに、後日にわざわざ二人を探して沖縄辺りまで繰り出すという辺り奇妙すぎる。少なくとも車を追いかけるショットくらいは用意しないといけませんぜ。

「冒険者たち」をこよなく愛する双葉十三郎師匠が、先生に私淑する脚本家桂千穂が絡んでいる本作をどう思ったか知りたいものです。僕はこの映画がきっかけでお二人が仲良くなったのではないかと推測している。

「冒険者たち」に出来栄えは遠く及ばずも、映画ファンの心をくすぐるものは十分にある。

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