映画評「ガンガ・ディン」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
1939年アメリカ映画 監督ジョージ・スティーヴンズ
ネタバレあり
「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」を観た時「ガンガ・ディン」を思い出した。
というのは嘘で、観た順番が逆。かのスティーヴン・スピルバーグ作品を観た数年後に「ガンガ・ディン」を観て、スピルバーグはこの作品を取り込んだのだと膝を打ったのだ。それから40年後久しぶりの再鑑賞。
英米人がお好きな「ボー・ジェスト」や「四枚の羽根」に似た蛮地冒険映画である。
原案が意外にも都会派風刺喜劇のイメージが強いベン・ヘクトとチャールズ・マッカーサーの脚本コンビで、実際に脚本を書いたのはジョエル・セイアーとフレッド・ギオル。お話はおよそ他愛なく、ヘクトとマッカーサーらしさが余り見られないので、大きく脚色したかもしれない。
19世紀英国植民地時代のインド、ケイリー・グラント、ヴィクター・マクラグレン、ダグラス・フェアバンクス・ジュニアの三馬鹿軍曹が、ジョーン・フォンテインと結婚するフェアバンクスの除隊に絡む一連の騒動と、サム・ジャフィー扮する現地運搬人ガンガ・ディンを挟んだ珍騒動とを繰り広げた後、いよいよ冒険劇が始まる。
営倉に押し込められたグラントが彼らの重用している牝像を使って脱獄し、ガンガ・ディンの言う黄金宮に行ってみると、そこはカーリ神を信仰し暗殺を教義とする暗殺組織ザック団の拠点で、あえなくグラントは捕えられる。
何とか抜け出したディンの話を聞いた二人は現場に急行するも、たった二人では劇的に状況を変えるのは難しいので、教団の指導者エドアルド・チャネリを捕えて何とか均衡を保って時間稼ぎをするうち、援護の味方が大挙押し寄せる。
ゲイリー・クーパー主演の「ベンガルの槍騎兵」(1935年)と類似する部分多し。喜劇色がぐっと強いのは原案のヘクト=マッカーサーのコンビ故かもしれず、とりわけ彼ららしさは白人をお馬鹿に設定した諧謔性に出ていようか。
威厳があるのはザック団の指導者であるし、真に英雄的活躍をするのはディンである。しかし、インドの運搬人を始めインド人を持ち上げているように見える一方で、考えてみれば白人を助ける為に運搬人が犠牲になるというストーリーは白人の優位性を示してもいてそう単純に割り切れない。少なくともポリ・コレ人種はこの類を是としないのではないか。
それはともかく、終盤の攻防戦のスペクタクルは戦前のものとしては見応えがある。尤も、気の短い人はそこまで行くのにイライラし、耐えられないかもしれない。
トランプのDEI排除は行きすぎだが、英米映画の有色人俳優の白人役起用(今のところ歴史劇に限られる。と言うより歴史劇以外にはあっても気づきようがない)も行きすぎ。舞台と決定的に違う映画の本質を崩すような配役をするくらいなら、有色人役をどんどん作れば良いのである。
1939年アメリカ映画 監督ジョージ・スティーヴンズ
ネタバレあり
「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」を観た時「ガンガ・ディン」を思い出した。
というのは嘘で、観た順番が逆。かのスティーヴン・スピルバーグ作品を観た数年後に「ガンガ・ディン」を観て、スピルバーグはこの作品を取り込んだのだと膝を打ったのだ。それから40年後久しぶりの再鑑賞。
英米人がお好きな「ボー・ジェスト」や「四枚の羽根」に似た蛮地冒険映画である。
原案が意外にも都会派風刺喜劇のイメージが強いベン・ヘクトとチャールズ・マッカーサーの脚本コンビで、実際に脚本を書いたのはジョエル・セイアーとフレッド・ギオル。お話はおよそ他愛なく、ヘクトとマッカーサーらしさが余り見られないので、大きく脚色したかもしれない。
19世紀英国植民地時代のインド、ケイリー・グラント、ヴィクター・マクラグレン、ダグラス・フェアバンクス・ジュニアの三馬鹿軍曹が、ジョーン・フォンテインと結婚するフェアバンクスの除隊に絡む一連の騒動と、サム・ジャフィー扮する現地運搬人ガンガ・ディンを挟んだ珍騒動とを繰り広げた後、いよいよ冒険劇が始まる。
営倉に押し込められたグラントが彼らの重用している牝像を使って脱獄し、ガンガ・ディンの言う黄金宮に行ってみると、そこはカーリ神を信仰し暗殺を教義とする暗殺組織ザック団の拠点で、あえなくグラントは捕えられる。
何とか抜け出したディンの話を聞いた二人は現場に急行するも、たった二人では劇的に状況を変えるのは難しいので、教団の指導者エドアルド・チャネリを捕えて何とか均衡を保って時間稼ぎをするうち、援護の味方が大挙押し寄せる。
ゲイリー・クーパー主演の「ベンガルの槍騎兵」(1935年)と類似する部分多し。喜劇色がぐっと強いのは原案のヘクト=マッカーサーのコンビ故かもしれず、とりわけ彼ららしさは白人をお馬鹿に設定した諧謔性に出ていようか。
威厳があるのはザック団の指導者であるし、真に英雄的活躍をするのはディンである。しかし、インドの運搬人を始めインド人を持ち上げているように見える一方で、考えてみれば白人を助ける為に運搬人が犠牲になるというストーリーは白人の優位性を示してもいてそう単純に割り切れない。少なくともポリ・コレ人種はこの類を是としないのではないか。
それはともかく、終盤の攻防戦のスペクタクルは戦前のものとしては見応えがある。尤も、気の短い人はそこまで行くのにイライラし、耐えられないかもしれない。
トランプのDEI排除は行きすぎだが、英米映画の有色人俳優の白人役起用(今のところ歴史劇に限られる。と言うより歴史劇以外にはあっても気づきようがない)も行きすぎ。舞台と決定的に違う映画の本質を崩すような配役をするくらいなら、有色人役をどんどん作れば良いのである。
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