映画評「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年ドイツ=スペイン合作映画 監督アンドレアス・ドレーゼン
ネタバレあり
2021年米英合作で作られた「モーリタニアン 黒塗りの記録」と類似する社会派実話ものである。
誠にがっちり構成されて終始硬い表現を崩さなかったあの秀作と違って、独仏合作の本作は硬軟織り交ぜて作られ、映画としては大分落ちるものの、弁護士側ではなく母親を主人公にして社会派というより家族愛映画に傾く作りをしたところを買っておきたい。
2001年の9・11の直後、ドイツの在留許可を持っているトルコ人一家クルナス家の長男ムラートが親に黙って宗教の勉強に行ったパキスタンでテロリストの容疑で逮捕され、悪名高いグアンタナモ基地に収容される。
事件にあたふたする母親ラビエ(メルタン・カプタン)は、電話帳で発見した人権弁護士ベルンハルト・ドッケ(アレクサンダー・シェーア)を拝み倒す。なかなか有能な弁護士で、ワシントンまで二人で出かけて米国人にもそれなりの影響を与え、アメリカ人ではない故に弁護できないので米国内の沙汰については弁護士に対応して貰い、不当に収容を続ける合衆国即ちタイトルのジョージ・W・ブッシュ大統領に対して勝訴を勝ち取る。
が、「モーリタニアン」同様そう簡単に釈放されるわけではなく、その間に出国したまま帰らず更新を申請しないムラートに関してドイツで在留許可問題が出て来る。
どこの国でも“移民はつらいよ”である。
不可抗力としてこれに勝訴してムラートはおよそ1500日(4年強)後に帰国する。「モーリタニアン」の青年の14年に比べれば短いとは言え、本人の苦痛もさることながら、家族の思いにも胸を痛めざるを得ない。現にトルコにいる新婚妻は帰国前に離婚する。
本作はヒロインをいつまでも泣いているようにせず、いつもパワフルというわけでもなく、時にコミカルに見せるところも挿入しているが、愛する人を永遠に失ってしまったようなケースと違い、こういう事件では案外、終始悲嘆に暮れるより一喜一憂するこういう家族ぶりが本当らしいのではないか。
弁護士を主人公にしたらもっとしかつめらしい作りになったであろうし、こういうアプローチも悪くないと思う。
トランプに比べればブッシュはまだ常識人でしたな。トランプがあれほどロシア寄りの発言をすると、アメリカはかつてブッシュが北朝鮮・イラン・イラクを指して言った “ならず者国家” に落ちた感すらある。 しかし、 富豪以外のアメリカ国民の大半が期待するインフレ対策はうまく行かないどころか強化されるのが目に見えているので、多分年内に支持率が30%台に落ち、中間選挙で共和党は負けるであろう。日本の自動車会社はアメリカに生産基地を移さず中間選挙のある2026年まで我慢して様子を見た方が良い。甥は某自動車メーカーCFOの秘書の一人だから、この問題は他人事(ひとごと)ではないのだ。
2022年ドイツ=スペイン合作映画 監督アンドレアス・ドレーゼン
ネタバレあり
2021年米英合作で作られた「モーリタニアン 黒塗りの記録」と類似する社会派実話ものである。
誠にがっちり構成されて終始硬い表現を崩さなかったあの秀作と違って、独仏合作の本作は硬軟織り交ぜて作られ、映画としては大分落ちるものの、弁護士側ではなく母親を主人公にして社会派というより家族愛映画に傾く作りをしたところを買っておきたい。
2001年の9・11の直後、ドイツの在留許可を持っているトルコ人一家クルナス家の長男ムラートが親に黙って宗教の勉強に行ったパキスタンでテロリストの容疑で逮捕され、悪名高いグアンタナモ基地に収容される。
事件にあたふたする母親ラビエ(メルタン・カプタン)は、電話帳で発見した人権弁護士ベルンハルト・ドッケ(アレクサンダー・シェーア)を拝み倒す。なかなか有能な弁護士で、ワシントンまで二人で出かけて米国人にもそれなりの影響を与え、アメリカ人ではない故に弁護できないので米国内の沙汰については弁護士に対応して貰い、不当に収容を続ける合衆国即ちタイトルのジョージ・W・ブッシュ大統領に対して勝訴を勝ち取る。
が、「モーリタニアン」同様そう簡単に釈放されるわけではなく、その間に出国したまま帰らず更新を申請しないムラートに関してドイツで在留許可問題が出て来る。
どこの国でも“移民はつらいよ”である。
不可抗力としてこれに勝訴してムラートはおよそ1500日(4年強)後に帰国する。「モーリタニアン」の青年の14年に比べれば短いとは言え、本人の苦痛もさることながら、家族の思いにも胸を痛めざるを得ない。現にトルコにいる新婚妻は帰国前に離婚する。
本作はヒロインをいつまでも泣いているようにせず、いつもパワフルというわけでもなく、時にコミカルに見せるところも挿入しているが、愛する人を永遠に失ってしまったようなケースと違い、こういう事件では案外、終始悲嘆に暮れるより一喜一憂するこういう家族ぶりが本当らしいのではないか。
弁護士を主人公にしたらもっとしかつめらしい作りになったであろうし、こういうアプローチも悪くないと思う。
トランプに比べればブッシュはまだ常識人でしたな。トランプがあれほどロシア寄りの発言をすると、アメリカはかつてブッシュが北朝鮮・イラン・イラクを指して言った “ならず者国家” に落ちた感すらある。 しかし、 富豪以外のアメリカ国民の大半が期待するインフレ対策はうまく行かないどころか強化されるのが目に見えているので、多分年内に支持率が30%台に落ち、中間選挙で共和党は負けるであろう。日本の自動車会社はアメリカに生産基地を移さず中間選挙のある2026年まで我慢して様子を見た方が良い。甥は某自動車メーカーCFOの秘書の一人だから、この問題は他人事(ひとごと)ではないのだ。
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