映画評「ゴッドランド/GODLAND」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2022年デンマーク=アイスランド=フランス=スウェーデン合作映画 監督フリーヌル・パルマソン
ネタバレあり
フランスとスウェーデンが製作国に加わっているが、実質的にはデンマークとアイルランド二国の映画と言うべし。一国に絞るのであれば、脚本を書き、監督も担当したフリーヌル・パルマソンがアイスランド人なので、アイスランド映画と言って良い。
19世紀後半、デンマークの牧師ルーカス(エリオット・クロセット・ホーヴ)が布教と教会の設立を命じられて植民地のアイスランドに向かう。彼の変わっているところは本格的に商品化されて程ないカメラを持参した趣味人であること。
船旅の後、布教地から離れた浜辺から目的地に辿る旅程は苛酷で、通訳を水難で失ってしまう。気難しいガイドのラグナル(イングヴァール・シーグルソン)と共に歩を進める彼自身も瀕死の重症に陥るが、カール(ヤコブ・ローマン)の一家に救助され、長女アンナ(ヴィクトリア・カルメン・ソンネ)と次女イーダ(イーダ・メッキン・フリンスドッティル)と親しくなる。教会の建設を見守りつつ、カメラをいじるのが人と交わるより楽しそうな牧師はそれでも人々の写真を撮る。
が、彼は彼の馬を殺したと話したラグナルと取っ組み合いの大喧嘩となり、恐らく結果的に相手は死んでしまう。遂に完成した教会で訓話を始めた牧師は、邪魔をするかのように吠える犬を排除しようと外に出、滑って泥だらけになり、教会を後にする。カールは彼を追跡し、刺殺する。
というお話は、活火山や冷たそうな河や雪景色の荒野などアイスランドらしい厳しい風景に似つかわしく厳しいが、終幕の展開は論理的に見ると変な具合に解りにくい。
一家の父親カールが、次女が姉との結婚を妙に期待する牧師に好意を持っていないのは理解できるが、同地を後にした牧師を殺す理由が解らない。アンナの馬を取り返すなら下ろすだけで済む。ラグナル殺しを知っていたとしても。そこまでするかどうか? 牧師は過失致死を悔悟し、吠える犬や滑って泥だらけになった自らの姿に罪を糾弾する神の責めを感じ、去って行ったと理解したくなる中、どうにも腑に落ちない。
カールは神だったのだろうか?
が、お話を追って迷子になるくらいなら、アイスランドの厳しい風景と、北欧らしい神話的な野趣を観るべき作品なのではある。
それを、僕を陶酔させた「プッチーニの愛人」と同じように四隅を面取りした4:3の画面で見せる。面取りした画面はサイレント中期までよく見られたもので、そういうクラシックさを狙ったのかどうか知らないが、19世紀半ばのムードの再現に貢献しているような感じがする。
今デンマークと言えば想起するのは、グリーンランドとトランプ大統領。トランプもさすがにアイスランドは要らないらしい。
2022年デンマーク=アイスランド=フランス=スウェーデン合作映画 監督フリーヌル・パルマソン
ネタバレあり
フランスとスウェーデンが製作国に加わっているが、実質的にはデンマークとアイルランド二国の映画と言うべし。一国に絞るのであれば、脚本を書き、監督も担当したフリーヌル・パルマソンがアイスランド人なので、アイスランド映画と言って良い。
19世紀後半、デンマークの牧師ルーカス(エリオット・クロセット・ホーヴ)が布教と教会の設立を命じられて植民地のアイスランドに向かう。彼の変わっているところは本格的に商品化されて程ないカメラを持参した趣味人であること。
船旅の後、布教地から離れた浜辺から目的地に辿る旅程は苛酷で、通訳を水難で失ってしまう。気難しいガイドのラグナル(イングヴァール・シーグルソン)と共に歩を進める彼自身も瀕死の重症に陥るが、カール(ヤコブ・ローマン)の一家に救助され、長女アンナ(ヴィクトリア・カルメン・ソンネ)と次女イーダ(イーダ・メッキン・フリンスドッティル)と親しくなる。教会の建設を見守りつつ、カメラをいじるのが人と交わるより楽しそうな牧師はそれでも人々の写真を撮る。
が、彼は彼の馬を殺したと話したラグナルと取っ組み合いの大喧嘩となり、恐らく結果的に相手は死んでしまう。遂に完成した教会で訓話を始めた牧師は、邪魔をするかのように吠える犬を排除しようと外に出、滑って泥だらけになり、教会を後にする。カールは彼を追跡し、刺殺する。
というお話は、活火山や冷たそうな河や雪景色の荒野などアイスランドらしい厳しい風景に似つかわしく厳しいが、終幕の展開は論理的に見ると変な具合に解りにくい。
一家の父親カールが、次女が姉との結婚を妙に期待する牧師に好意を持っていないのは理解できるが、同地を後にした牧師を殺す理由が解らない。アンナの馬を取り返すなら下ろすだけで済む。ラグナル殺しを知っていたとしても。そこまでするかどうか? 牧師は過失致死を悔悟し、吠える犬や滑って泥だらけになった自らの姿に罪を糾弾する神の責めを感じ、去って行ったと理解したくなる中、どうにも腑に落ちない。
カールは神だったのだろうか?
が、お話を追って迷子になるくらいなら、アイスランドの厳しい風景と、北欧らしい神話的な野趣を観るべき作品なのではある。
それを、僕を陶酔させた「プッチーニの愛人」と同じように四隅を面取りした4:3の画面で見せる。面取りした画面はサイレント中期までよく見られたもので、そういうクラシックさを狙ったのかどうか知らないが、19世紀半ばのムードの再現に貢献しているような感じがする。
今デンマークと言えば想起するのは、グリーンランドとトランプ大統領。トランプもさすがにアイスランドは要らないらしい。
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