映画評「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・古賀豪
ネタバレあり

小学生の時にTVアニメ「ゲゲゲの鬼太郎」を観ながら、目玉おやじの息子・鬼太郎はどうして目玉人間ではないのか疑問に思ったものである。その謎も解る鬼太郎誕生に至るまでの怪談。

横溝正史の金田一耕助シリーズにも似たおどろおどろしい龍賀一族が支配する村に、原作者水木しげるを投影した血液銀行の水木社員(声:木内秀信)がやって来る。龍賀製薬社長・克典と昵懇であり、その義父であり当主の時貞(声:白鳥哲)が亡くなりその葬儀に参加する為で、克典がトップに上り詰めれば場合によってはこの会社の重役にもなれるかもしれないという野心あってのことである。
 しかし、遺言が開示された結果、克典はトップにはなれず当てが外れ、当主に選ばれた長男・時麿が殺されたことから、村に迷い込んできた犯人と思しき謎の人物(声:関俊彦)を監視する羽目になる。
 水木にゲゲ郎と名付けられるこの男は幽霊族であり、同じく幽霊族の妻を探しにやって来たのであるが、次第に、妖気漂うこの村は幽霊族と深い縁があり、また彼らの作る血液製剤がそれに関係があることが判って来る。
 水木は克典の娘・沙代(声:種崎敦美)との間でロマンスを演ずるが、一族の野望はそれを許さない。

オカルト的な部分を敢えて書かなければこんな感じの梗概であり、上述したように金田一耕助もの、中でも「犬神家の一族」や「獄門島」を彷彿とする。
 勿論、中盤以降オカルト要素が豊富に入り込んでくるのだが、それでも、一連の殺人事件や龍賀一族の謎に関するミステリー的解決があって、「ゲゲゲの鬼太郎」ファンでないミステリー・ファンにも一定以上楽しめるような気がする。

先月末に京極夏彦の「狂骨の夢」を読んで “狂骨” なる言葉が強く印象付けられたばかりで、その狂骨という言葉が頻繁に出て来るのにニヤッとさせられた。京極夏彦と水木しげるに交流があったのを知っているからである。しかるに、京極堂シリーズはオカルティックな事象も全て科学的に説明されるが、こちらのオカルトは当然オカルトである。

実写のホラー映画が疑問百出となることが多いのに対し、このアニメ映画の展開は実に整合性が取れてい、感心させられる。本作に似て「犬神家の一族」風の場面が出て来る実写映画「映画版 変な家」と比べれば歴然だ。

ゲゲッ、という表現はいつ生まれたのだろうか?

この記事へのコメント

かずき
2025年03月21日 12:01
オカピーさん、こんにちは。

これは面白かったですよね。
個人的にも10点満点中7点で、同じ点数なのでニヤリとしました。
まさに「犬神家の一族」をアニメ化したらこんな雰囲気なんだろうなと思わせる作品でした。
「ゲゲゲの鬼太郎」ファンも、そうでない人も楽しめるでしょうね。

水木しげるも京極夏彦も妖怪マニア。
“狂骨”というワードが頻出したので、タイミング的にさぞニヤリとしたことでしょう(笑)
オカピー
2025年03月21日 21:50
かずきさん、こんにちは。

>これは面白かったですよね。

アニメは本当に侮れない。
中途半端な実写映画では太刀打ちできない感じですね。

>“狂骨”というワードが頻出したので、タイミング的にさぞニヤリとしたことでしょう(笑)

正に。
こういう奇遇というか、何と言うか、は、個人的に本当に好物です^^
2025年03月22日 18:09
これはおもしろかったです。
おっしゃっているように、横溝正史のミステリーみたいな仕立てになっているのがよかった。そして、戦後の日本のようすを伝えてくれていましたね。
オカピー
2025年03月22日 21:50
nesskoさん、こんにちは。

>戦後の日本のようす

これが大事ですね。

偶然にも今日アップした「殺したのは誰だ」という映画が本作の背景である昭和31年に作られたもので、同時代の社会風俗がたっぷり描かれて興味深かったですよ。