映画評「マンティコア 怪物」
☆☆☆(6点/10点満点中)
2022年スペイン=エストニア合作映画 監督カルロス・ベルムト
ネタバレあり
スペインのカルロス・ベルムト監督を観るのは二作品目。製作にエストニアが絡んでいるのが珍しい。
コンピューター・ゲーム・デザイナーのフリアン(ナチョ・サンチェス)がゲームに使うモンスターの造形を考えているある日、同じアパートの隣室の火事に遭遇し、小学下級生くらいの少年クリスチャン(アルバロ・サンス・ロドリゲス)を救出するが、その日以降正体不明のパニック障害に悩まされることになる。
それと並行して、同世代のボーイッシュな美人ディアナ(ソエ・ステイン)と知り合い、なかなか良い関係を築く。
が、怪物創作と少年への関心が結び付いていることを知った会社から干され、ディアナからも関係を拒否される。彼は母親のいない時にクリスチャンを訪れ、疚しい気を起こすも、結局は睡眠薬で眠らせたまま何もせず、ビルから飛び降りる。
思うに、この作品の肝はこの後にあり、障碍者となったフリアンをディアナが介護するところで終わる。
何故この幕切れが肝かと言えば、フリアンは怪物創作が高じて小児性愛趣味を自らの中に生み出してしまうのに対し、それに批判的なディアナは長く父親の介護をしてきた経験のあることと併せて考えると障碍者フェチなのではないか、と匂わす終わり方がなかなかブラックだからである。
ちょっとピンと来ない人もいるだろうが、大変面白い切り口と思う。障碍者フェチというのが実際にあっても、小児性愛とは比較にならないと思いますがね。
背景音楽がなかったように思う。背景音楽のない画面は、あるのに慣れている観客に作用して、不穏な空気を印象付けることを容易ならしめるのではないか。本作の場合、主人公が一人でいる、背景音楽なしの場面を見るだけで、観客は落ち着かない気持ちになって来る。
ベルムト監督としては、以前観た「マジカル・ガール」よりアイデアを上手く具体化できているような気がする。
高校の音楽の授業で、映画の背景音楽の効果について一席ぶったことがある。逆の手もあったかと、こういう映画を観るのも勉強になる。
2022年スペイン=エストニア合作映画 監督カルロス・ベルムト
ネタバレあり
スペインのカルロス・ベルムト監督を観るのは二作品目。製作にエストニアが絡んでいるのが珍しい。
コンピューター・ゲーム・デザイナーのフリアン(ナチョ・サンチェス)がゲームに使うモンスターの造形を考えているある日、同じアパートの隣室の火事に遭遇し、小学下級生くらいの少年クリスチャン(アルバロ・サンス・ロドリゲス)を救出するが、その日以降正体不明のパニック障害に悩まされることになる。
それと並行して、同世代のボーイッシュな美人ディアナ(ソエ・ステイン)と知り合い、なかなか良い関係を築く。
が、怪物創作と少年への関心が結び付いていることを知った会社から干され、ディアナからも関係を拒否される。彼は母親のいない時にクリスチャンを訪れ、疚しい気を起こすも、結局は睡眠薬で眠らせたまま何もせず、ビルから飛び降りる。
思うに、この作品の肝はこの後にあり、障碍者となったフリアンをディアナが介護するところで終わる。
何故この幕切れが肝かと言えば、フリアンは怪物創作が高じて小児性愛趣味を自らの中に生み出してしまうのに対し、それに批判的なディアナは長く父親の介護をしてきた経験のあることと併せて考えると障碍者フェチなのではないか、と匂わす終わり方がなかなかブラックだからである。
ちょっとピンと来ない人もいるだろうが、大変面白い切り口と思う。障碍者フェチというのが実際にあっても、小児性愛とは比較にならないと思いますがね。
背景音楽がなかったように思う。背景音楽のない画面は、あるのに慣れている観客に作用して、不穏な空気を印象付けることを容易ならしめるのではないか。本作の場合、主人公が一人でいる、背景音楽なしの場面を見るだけで、観客は落ち着かない気持ちになって来る。
ベルムト監督としては、以前観た「マジカル・ガール」よりアイデアを上手く具体化できているような気がする。
高校の音楽の授業で、映画の背景音楽の効果について一席ぶったことがある。逆の手もあったかと、こういう映画を観るのも勉強になる。
この記事へのコメント
これをご覧になっていらっしゃる方が近くに殆どいなかったので、ついついコメントさせていただきました。ご無沙汰をしております。
不思議な作品でした。「性癖」というのはいかんともしがたい…と思わされました。
書かれていらっしゃる音楽の効果(音楽が無いという効果)については、なるほどね…と感じました。
>「性癖」というのはいかんともしがたい…と思わされました。
小児性愛者を蛇蝎のごとく嫌う人が多いですが、これは性癖ですよねえ。
この前日観た「コンセント/同意」も、同じころ読んでいたミステリー「鉄鼠の檻」にも小児性愛者が出てきて、結構な割合でいるのかもしれませんね。
>書かれていらっしゃる音楽の効果(音楽が無いという効果)については、なるほどね…と感じました。
有難うございます。
この映画の不気味さの理由を考えていた時、急にこの考えが下りてきましたね。