映画評「ゴールド・ボーイ」
☆☆☆★(7点/10点満点中)
2024年日本映画 監督・金子修介
ネタバレあり
近年金子修介監督は僕の目には余りパッとしなかったが、これはなかなか楽しめる。
楽しめるのは、監督より原作(中国の紫金陳。中国で映像化されていて、本作はリメイクに当たる)とそれをうまく脚色した港岳彦によるところが大きいように思われるが、監督がダメにする例も少なからずあるので、その成果を寿いでおきたい。
岡田将生の娘婿が、ホテル経営を頂点とするコングロマリットの会長夫婦(義父母)を崖から突き落として殺す。
それを偶然、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志の中学生三人が動画に収めてしまう。頭の良い羽村君はこれを材料に岡田から大金を奪おうと接近する。
ある程度交渉がまとまった後に、今度は彼の細君松井玲奈が交通事故死を遂げる。
羽村君は、これも要素に加えて、母親・黒木華と別れた父親・北村一輝の再婚相手が娘の死を彼のせいにして困っているとして父とその相手を殺す件をもちかけ、流れで殺害の実行をあんなちゃんと前出君の血の繋がらない兄妹がこなし、後片付けを岡田が担うことになる。
何故か程なく事件が露見するが、解決には至りそうもなく、羽村君は施設入りを決めた訳あり兄妹と一緒に証拠の動画を岡田に引き渡すべく彼のマンションに赴く。
この後波乱があるが、まだ新作の部類である本作においてそこまで言及するのはまずそうなので、説明は控えざるを得ない。
サイコパス同士が頭脳合戦を見せるというお話である。
とりわけ羽村君のサイコパスぶりは想像を絶するもので、他人に対する共感力はおろか、貧しさからの脱却を行動原理とする血の繋がらない兄妹のような必死さもない。自分の頭の良さを示すのが目的のような感さえある。恐るべき怪物である。
コングロマリットの一族の末席に県警の刑事である江口洋介がいて、彼は従妹の松井玲奈から自分が事故死したら犯人は岡田であると告げられているし、兄妹の父親(兄の実父)から羽村君の怖さも聞かされている。その流れの中で刑事のなまなかな行動は観客に歯がゆさをもたらすが、そのじりじり感もサイコパス・サスペンスでは効果の一つと言って良いのだろう。
怪物君の行動にちょっと首を傾げさせるところがある。最後まで梗概を書ければもう少し具体的に問題点に言及できるのだが、仕方がない。
以上、多少問題がなくはないものの、日本映画らしい描写の洗練のうちに馬力を発揮できている佳作と言って良いと思う。
子供の残酷さを目にするのは、サイコパスものの枠とは言え、後味が悪い。
2024年日本映画 監督・金子修介
ネタバレあり
近年金子修介監督は僕の目には余りパッとしなかったが、これはなかなか楽しめる。
楽しめるのは、監督より原作(中国の紫金陳。中国で映像化されていて、本作はリメイクに当たる)とそれをうまく脚色した港岳彦によるところが大きいように思われるが、監督がダメにする例も少なからずあるので、その成果を寿いでおきたい。
岡田将生の娘婿が、ホテル経営を頂点とするコングロマリットの会長夫婦(義父母)を崖から突き落として殺す。
それを偶然、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志の中学生三人が動画に収めてしまう。頭の良い羽村君はこれを材料に岡田から大金を奪おうと接近する。
ある程度交渉がまとまった後に、今度は彼の細君松井玲奈が交通事故死を遂げる。
羽村君は、これも要素に加えて、母親・黒木華と別れた父親・北村一輝の再婚相手が娘の死を彼のせいにして困っているとして父とその相手を殺す件をもちかけ、流れで殺害の実行をあんなちゃんと前出君の血の繋がらない兄妹がこなし、後片付けを岡田が担うことになる。
何故か程なく事件が露見するが、解決には至りそうもなく、羽村君は施設入りを決めた訳あり兄妹と一緒に証拠の動画を岡田に引き渡すべく彼のマンションに赴く。
この後波乱があるが、まだ新作の部類である本作においてそこまで言及するのはまずそうなので、説明は控えざるを得ない。
サイコパス同士が頭脳合戦を見せるというお話である。
とりわけ羽村君のサイコパスぶりは想像を絶するもので、他人に対する共感力はおろか、貧しさからの脱却を行動原理とする血の繋がらない兄妹のような必死さもない。自分の頭の良さを示すのが目的のような感さえある。恐るべき怪物である。
コングロマリットの一族の末席に県警の刑事である江口洋介がいて、彼は従妹の松井玲奈から自分が事故死したら犯人は岡田であると告げられているし、兄妹の父親(兄の実父)から羽村君の怖さも聞かされている。その流れの中で刑事のなまなかな行動は観客に歯がゆさをもたらすが、そのじりじり感もサイコパス・サスペンスでは効果の一つと言って良いのだろう。
怪物君の行動にちょっと首を傾げさせるところがある。最後まで梗概を書ければもう少し具体的に問題点に言及できるのだが、仕方がない。
以上、多少問題がなくはないものの、日本映画らしい描写の洗練のうちに馬力を発揮できている佳作と言って良いと思う。
子供の残酷さを目にするのは、サイコパスものの枠とは言え、後味が悪い。
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