映画評「姉妹坂」
☆☆★(5点/10点満点中)
1985年日本映画 監督・大林宣彦
ネタバレあり
大山和栄なる女性漫画家のコミックを、当時人気のあったアイドル女優4人を揃えて、大林宣彦が映像に移した。映画作家としての大林監督が全面的な参加したという感じではないらしい。40年ぶりの再鑑賞。
京都で喫茶店を営む喜多沢家の四人姉妹の、ロマンスを中心とした喜怒哀楽を描く。
喜多沢家に既に両親はなく、長女彩(紺野美沙子)が喫茶店の仕事と家政をこなしている。次女茜(浅野温子)はカメラマンとバリバリにやっているというのは表向きで、それだけでは家計の足しにならないので夜はバーに勤めている。
三女杏(沢口靖子)は大学生。大学の二枚目ライバル二人即ち桜庭諒(尾美としのり)と結城冬悟(宮川一朗太)は恋の鞘当ての末に、名門の御曹司冬悟が彼女を射止める。
しかし、この結果、冬悟のフィアンセが嫉妬をし、杏の知らない四人姉妹の秘密を明かしてしまう。彼女たちは長女を除いて全員が潰れた施設から引き受けた養女であるのである。これに最もショックを受けたのは高校生の四女藍(富田靖子)で、下手したら不良にもなりかねないところを、茜と諒の二人に救われる。
その時以来諒と昵懇になった茜は判明した白血病の闘病中に男児を生むが、彼の故郷平戸(原作者の故郷)で息を引き取り、彼も車ごと飛び降り自殺をする。
入院中の茜に発破をかけられた医師(竹脇無我)は久しぶりに恋人だった彩を訪れる。結ばれた二人は茜夫婦の遺した男児を引き取っている。かくして出来上がった親子三人が、かつて両親と姉妹のように、坂を上る。
同じ京都 関西が舞台なので、 養女版「細雪」と言うべし。現代版と言いにくいのはディスコなどの場面は製作と同時代的であるのに、喫茶店の様子や男子たちのバンカラぶりにどの時代か判別しにくいものがあるからである。日活アクションが無国籍映画と言われたように、超時代的映画と言いたくなる。
バンカラは大林監督のイメージながら、今回脚本にはタッチしていないので、脚色の一人関本郁夫の趣味が反映されたものではないか。関本の他の脚本作・監督作を考えるとこの大袈裟な展開ぶりも原作を更に暴走させた可能性すら頭を過ぎるが、言い過ぎだろうか?
この2年前に市川崑が発表した「細雪」が大人向けの映画であるとすれば、こちらはやはり若い女性向きという感じだ。かの秀作の典雅と耽美性に及ぶべくもない。
かように水準的アイドル映画というレベルではあるが、自身で編集はせずとも相当残っている大林宣彦色を大人は楽しむべし。
姉妹役の4人は今でも活躍中。昨日の映画の主演者斉藤由貴も同様で、実にめでたいことです。
1985年日本映画 監督・大林宣彦
ネタバレあり
大山和栄なる女性漫画家のコミックを、当時人気のあったアイドル女優4人を揃えて、大林宣彦が映像に移した。映画作家としての大林監督が全面的な参加したという感じではないらしい。40年ぶりの再鑑賞。
京都で喫茶店を営む喜多沢家の四人姉妹の、ロマンスを中心とした喜怒哀楽を描く。
喜多沢家に既に両親はなく、長女彩(紺野美沙子)が喫茶店の仕事と家政をこなしている。次女茜(浅野温子)はカメラマンとバリバリにやっているというのは表向きで、それだけでは家計の足しにならないので夜はバーに勤めている。
三女杏(沢口靖子)は大学生。大学の二枚目ライバル二人即ち桜庭諒(尾美としのり)と結城冬悟(宮川一朗太)は恋の鞘当ての末に、名門の御曹司冬悟が彼女を射止める。
しかし、この結果、冬悟のフィアンセが嫉妬をし、杏の知らない四人姉妹の秘密を明かしてしまう。彼女たちは長女を除いて全員が潰れた施設から引き受けた養女であるのである。これに最もショックを受けたのは高校生の四女藍(富田靖子)で、下手したら不良にもなりかねないところを、茜と諒の二人に救われる。
その時以来諒と昵懇になった茜は判明した白血病の闘病中に男児を生むが、彼の故郷平戸(原作者の故郷)で息を引き取り、彼も車ごと飛び降り自殺をする。
入院中の茜に発破をかけられた医師(竹脇無我)は久しぶりに恋人だった彩を訪れる。結ばれた二人は茜夫婦の遺した男児を引き取っている。かくして出来上がった親子三人が、かつて両親と姉妹のように、坂を上る。
同じ
バンカラは大林監督のイメージながら、今回脚本にはタッチしていないので、脚色の一人関本郁夫の趣味が反映されたものではないか。関本の他の脚本作・監督作を考えるとこの大袈裟な展開ぶりも原作を更に暴走させた可能性すら頭を過ぎるが、言い過ぎだろうか?
この2年前に市川崑が発表した「細雪」が大人向けの映画であるとすれば、こちらはやはり若い女性向きという感じだ。かの秀作の典雅と耽美性に及ぶべくもない。
かように水準的アイドル映画というレベルではあるが、自身で編集はせずとも相当残っている大林宣彦色を大人は楽しむべし。
姉妹役の4人は今でも活躍中。昨日の映画の主演者斉藤由貴も同様で、実にめでたいことです。
この記事へのコメント
昭和の翻訳もので育った元文学少女としては四人姉妹なら「若草物語、三人姉妹は当然チェーホフが浮かんできます。
赤の他人の三姉妹といえばノエル・ストレートフィールドの「バレエ シューズ」というのがありますが、多分あんまり日本では知られていないでしょうね。
かく言う私も実家の片付けで古いけど可愛い本を発掘して何十年ぶりかで読み返したという骨董級のこの本ですが、「ユーガットメール」でメグライアンがトムハンクスの大型書店をこっそり偵察に行ったとき、児童書コーナーで靴の本を探している老婦人に作者とタイトルを教えてあげるシーンがあるんですよ。多分99%の人が気にも留めていないシーンだと思いますけど何だか嬉しかったですよ。
いつものように話が逸れたり重箱の隅をつついたりで申し訳ないのですが、「細雪」の舞台は京都と違うんですわ。長女は大阪船場の本家住まいで次女以下は芦屋の次女夫婦の家に居候状態?ですかね。京都には桜の時分に泊まりがけで花見にきやはるだけです。市川崑の映画の冒頭の嵐山の渡月橋の景色と豪華なお着物の印象で京都と勘違いさせてしまうのかもしれまへんなぁ。
>四人姉妹なら「若草物語、三人姉妹は当然チェーホフが浮かんできます。
三人姉妹なら僕も当然チェーホフですね。何しろ専門ですからね。
チェーホフの短編集は大学時代に買わされました。
>赤の他人の三姉妹といえばノエル・ストレートフィールドの「バレエ シューズ」というのがありますが、多分あんまり日本では知られていない
おっしゃる通り初めて聞きました。
しかし、アマゾンのコメントは割合多かったですよ。
>「細雪」の舞台は京都と違うんですわ。長女は大阪船場の本家住まいで次女以下は芦屋の次女夫婦の家に居候状態?ですかね。
ややっ、これはうっかりしました。
自分の書いた梗概でも大阪船場などと書いておりました
で、京都を棒線で消し、関西に訂正しました。
関西も大阪/兵庫と京都ではかなり違う印象がありますので、これは混同してはいかんですな。
重箱の隅ではないご指摘でしたよ。<(_ _)>