映画評「プリシラ」

☆☆★(5点/10点満点中)
2023年アメリカ=イギリス=イタリア合作映画 監督ソフィア・コッポラ
ネタバレあり

チャイコフスキーの妻」ならで「プレスリーの妻」である。

離婚後大分経ってから映画出演もあるが、プリシラ・プレスリーは基本的には一般人。
 1959年兵役に就いてドイツにいたエルヴィス(ジェイコブ・エロルディ)と在独軍人の娘として知り合った時プリシラ(ケイリー・スピーニー)は僅か14歳。翌年にプレスリーは、彼女の両親の意思をほぼ無視して帰国させ、やがて同棲生活に入っていく。が、キリスト教的な精神からであろうか、成人するまで関係を持たなかったように見える。
 1968年5月に結婚、翌年2月に娘リサを生むが、丁度5年後の73年2月ツアーで忙しい彼との生活に見切りをつけ家を出る(正式の離婚は10月)。

チャイコフスキーと妻との同居は短かったので妻を主体にした場合にチャイコフスキーの音楽が背景に留まるのは解るが、本作の場合は主人公のカップルに期間としては10年を優に超える関係がありプレスリーの出てくる場面が多いのだから、プレスリーの公式曲が1曲 (有名なTV特別番組で披露された「ギターマン」Guitar Man) のみというのにはさすがにがっかり。エロルディのプレスリーが自宅で歌う「火の玉ロック」Whole Lotta Shakin' Going On はジェリー・リー・ルイスのヒット曲だ。

その代わり背景音楽的にほぼ同時代のヒット曲が多数かかる。
 一番良いのはプリシラがプレスリーの家を出る幕切れで流れるドリー・パートンの名曲 I Will Always Love You(日本ではホイットニー・ヒューストンで知る人が多いが、元来彼女が自分で作って歌ったカントリーの大ヒット曲)。時も正に1973年のヒット曲だ。題名・歌詞内容が場面に重なるだけにぐっと来るという次第。

ソフィア・コッポラが場面群を固定カメラで撮り、シーンの切り替えをブラックアウトで行うというクラシックぶりで好ましいものの、お話としては何と言うこともない。
 プレスリーのマザ・コンぶりや特定の映画(映画内で解るのは「悪魔をやっつけろ」「波止場」)に対する偏愛ぶり、ピストル・マニアぶり、あるいは短気な性格など彼女を描くうちに必然的に出て来る部分もある程度知っていた。TVも多数持っていたと聞く。

中学の時に always, usually, sometimes など頻度を表す副詞の位置は、will など助動詞の場合は前、be 動詞の場合は後が原則と習いましたがね。

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